綾女くんのことと投げ銭制導入のこと

以前、朝日出版社の有名編集者、綾女欣伸さんのことをこんな文章にしました。

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綾女くんがbar bossaに初めて来たのは、まだ東大の学生でモーテルブルーというインディーズレーベルで働いている時でした。

綾女くんは育ちの良さからくる独特の人懐っこさがあって、やがてbar bossaのカウンター席の常連になりました。

東大を卒業しようとしているのに、全然就職活動のようなものをしていないなあと眺めていたら、案の定、卒業後そのままモーテルブルーに在籍することになりました。当時、僕は「1人の若者の未来が…」と気にはしてたのですが、何故か、綾女くんならなんとかなるだろうと思ったのも確かでした。

結局、綾女くんはその後モーテルブルーを辞めて、朝日出版社というところに就職しました。想像するに綾女くんの大学の友人はほとんどが学者や官僚、一流企業のはずなのに、途中からの再スタートって悔しい思いをたくさんしたはずです。

しかし綾女くんはそこから大反撃を繰り返しました。アイデア・インクというシリーズはご存知でしょうか? 今、本屋に行けば一番目立つところに展開されている、とてもユニークな新書シリーズです。そう、もちろん綾女くんの仕事です。

綾女くんがこのシリーズを「ただの新書じゃなくてA&MとかVerveのようなレーベルのつもりでやってるんです」と言ったとき、ああ、回り道は正しかったんだなと思いました。

綾女くん、いつか天下をとるとは思ってるのですが、ちょっと心配なのは、途中で明智光秀に刺されるかもということです。まあ友達がいっぱいいる綾女くんなので、誰かが守ってくれるとは思うのですが。

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その後の綾女くんは武田砂鉄さんのドゥマゴ文学賞をとった『紋切型社会』も編集して、ますます活躍しています。

ところで、その綾女くんが以前、提案してくれたことが3つありまして、たぶん本人はどれも覚えていないかもなのですが、こんな3つでした。

1.僕がバーについて書く本の企画 →これは実現しませんでしたが、数年後、僕はDU BOOKSから『バーのマスターはなぜネクタイをしているのか?』 http://goo.gl/rz791t という本を出しました。

2.「最近、飲み屋に色んなお客さんが来て、そこで起こった物語をマンガにして、それを映像化するの流行ってるじゃないですか。あれのバーの話を林さん、書いたらどうですか?」 →これは今、僕は金曜日にこちらのnoteでそれを意識して書いています。https://note.mu/bar_bossa/m/m96b8b982d965

3.「林さん、今、毎日書いているコラム、あれ無料にしないで、noteで売ればいいのに」

この「3」について、たまに他の人にも提案されるんです。

僕としては昨日の記事 https://note.mu/bar_bossa/n/na2b52092246e でも書いたように「インターネットのコンテンツは有料にすべきでは」といつも思っていまして、それが良いのかなあと悩みました。

難しいですよね。「出来る限りたくさんの人に読んでもらうためには無料がいい」というのはわかっているし、でも、「コンテンツは有料にした方が良い」という流れも理解できます。

それで、こんな折衷案にたどり着きました。「投げ銭制」です。

実はbar bossaでライブをやっていたことがありまして、僕、どうもライブの「チャージ制」が好きじゃないんですね。というのは「ライブが目的じゃない人」がバーに飲みに来て、たまたまライブをやってて「今日はライブ・チャージが2000円なんです」って言われたら、「え!」ってなりますよね。それでチャージ制はやらなかったんです。

でも、演奏家にはもちろんお金が必要だし、どうしようと思って「投げ銭制」にしたんです。そしたら、意外と「ライブ目的じゃなかったお客さま」でも「いやあ、すごく良かったです」とか言って、投げ銭をしてくれる方もいらっしゃったし、「応援」の気持ちで、かなり大きい金額を入れてくれる人もいました。

ああ、昔から大道芸人たちが道の真ん中でやっていた「投げ銭制度」って合理的なんだなあって感じた瞬間でした。

それで、僕も今日からこのnoteの記事、「投げ銭制」に変更します。さすがに100円をクリックして、その後の記事がないとちょっと「損した感じ」もあるかもなので、100字くらい、僕のどうでも良い話を書くことにしました。「最近買った本」とか「食べた料理」とか「街の写真」とかをあげます。

ええと、もちろん、そんな無理して買わなくて良いですよ。僕としましては「なるほど投げ銭制っていうの面白いな」ってみんなが感じてくれて、「じゃあ、自分のnoteのコンテンツも投げ銭制にしようかな」って感じで、流行ったり、「コンテンツにお金を払うのに抵抗がなくなってくれればいいな」と考えているだけですので。

ちなみに、以前300円で買っていただいた方には申し訳ないのですが、このnoteを運営する加藤貞顕さんのインタビューhttps://note.mu/bar_bossa/n/n37ddafe1741d も無料にしました。このインタビューで「インターネットのコンテンツを有料にすべきだ」という加藤さんの気持ちが伝わればと思います。

というわけで、今後ともご贔屓によろしくお願いいたします。

#コラム

※僕のcakesの連載をまとめた恋愛本でてます。「ワイングラスのむこう側」http://goo.gl/P2k1VA

この記事は投げ銭制です。一応、短い「僕のどうでもいい話」があります。

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