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BAR IAPONIAにて、『歴史』と『旅』でジョジョ愛を語るゥウ!(2024年2月21日)

※2024年2月21日に開催したイベントのレポートです。

数多の名作を輩出したジャンプ漫画の中で、唯一無二の存在感を放つ『ジョジョの奇妙な冒険』。

1986年に連載がスタートし、単行本の全世界累計発行部数が1億2000万部を超える大人気タイトルです。

アニメをはじめメディアミックスも幅広く展開、2024年2月には初のミュージカル化が実現。

独特な台詞回しやキャラがとるポージングは、作品自体を手に取ったことのない人にとっても印象深いはず。

今回、BAR IAPONIAにて『ジョジョ』の魅力をプレゼンしてくれるのは、朝日インタラクティブ運営の宇宙ビジネス情報サイト『UchuBiz』編集長である藤井涼さん。

「実は、小学生の頃に初めてジャンプで読んだときは、そこまで好きにならなかったんです。ほかの漫画と比べると明らかに浮いていたので…『なんだ、この気持ち悪い漫画は?』と」

笑い交じりに語る藤井さん。しかしその後、高校時代に改めて『ジョジョ』の魅力に気付き、”奇妙な冒険”の世界へとのめりこんでいくことに。

自宅にはギャラリーさながらに『ジョジョ』のアートを飾り、ファンが集まるオフ会を10年に渡り開催。また、記者として原作者の荒木飛呂彦先生や、アニメ出演声優へのインタビュー記事を執筆するなど、人生スケールで『ジョジョ』を推しています。


自宅のコレクションを紹介する藤井さん

プレゼンのタイトルはずばり、「『歴史』と『旅』でジョジョ愛を語るゥウ!」

”歴史と旅”をテーマにするBAR IAPONIAのため、ふだんと違う切り口で作品を考察してきてくださったという藤井さん。

『ジョジョの奇妙な冒険』がまさしく歴史の奥深さと、旅で広がるスペクタクルを併せ持つ作品であると知るイベントとなりました。

そもそも、『ジョジョの奇妙な冒険』ってどんな作品?魅力をおさらい!

第1部から始まり、第2部、第3部…と続き、現在は第9部が連載中。各部でストーリーも主人公も切り替わります。

”ジョジョ”というのは主人公に受け継がれていく呼び名。ジョナサン・ジョースターや空条承太郎など、彼らの名前には必ず”ジョ”の音が入ります。

『ジョジョの奇妙な冒険』というタイトルについて、藤井さんは、

「主人公たちが行く先々でちょっとホラーな、奇妙な出来事にあう話なんですが、実は第1部ではあんまり”奇妙な冒険”をしていないんですよ。それでよくあんな神タイトルをつけられたなぁ、と思います」

熱狂的なファンをもつ一方、「手を出せていない」という声も聞く『ジョジョ』。(実は、このイベントレポートの筆者もそのひとり…)

何年も続いている超大作であるのはもちろん、作品世界への参入ハードルを高く感じてしまうのはやはりその独創性の強さ…いえ、この際だから言ってしまいましょう、そのクセの強さ。

複数の主人公がそれぞれの物語を展開するスケールの大きな構成、エキセントリックともいえる表現技法。どれも、他の作品にはあまりない要素で、つい「慣れなさそう」という印象を抱いてしまうのではないでしょうか。

しかし、その特異な要素の数々こそ、『ジョジョ』を『ジョジョ』たらしめているもの。

「『ジョジョ』といえばやっぱり、”ジョジョ立ち”といわれる独特なポージングであったり、他にないような擬音の使い方、そして名言の数々。あとはもちろん、”スタンド”ですね」

”スタンド能力”とは、登場キャラクターが駆使する、守護霊のような超能力。『ジョジョ』の見どころのひとつとして有名ですが、実はシリーズの途中から登場したものだそう。

「最初は”波紋”っていう、体の中にある精神エネルギーで敵を倒す能力を使っていたんですよ。そこから、当時の編集者さんに『波紋は抽象的で分かりづらい』と言われた荒木飛呂彦先生が、精神的な攻撃を具現化したものとして考えたのがスタンド能力なんです」

”第1部は奇妙な冒険していなかった”エピソードも然り、長く続く物語だからこそ、作品変化を楽しめるのも醍醐味かもしれません。

このスタンド能力もまた、空間を掴み削ることができたり、相手を本にできたり…と、発想が実にユニーク。

しかし、藤井さんが語る『ジョジョ』の魅力は、より作品の根幹的な部分でした。

「『ジョジョ』シリーズのテーマは”人間賛歌”。どんな状況でも、最後には自分の精神力で敵に立ち向かって打ち勝つ、という、人間の強さを感じさせてくれる作品なんです」

派手に目をひくポージングや台詞の向こうには、深く練られた人間ドラマが。

「”敵”と言われる人たちにもそれぞれ正義があって、それに基づいて行動しているだけなんです。逆の視点にたつと、こっちが正義かもしれないと思わせられる。敵側にもかなり愛着をもってしまうというのが、作品の特徴かなと思います」

これぞ歴史絵巻。受け継がれる血脈の物語

『ジョジョ』の特徴のひとつ、第1部、第2部…と章が変わるごとに交代していく主人公たち。

これもまた初心者的にはややこしく思えてしまうのですが、この物語構造が巧みに描きだしているのが作品テーマである”人間賛歌”です。

「『ジョジョ』は代々受け継がれていく、血脈の物語なんですよね。大河ドラマの枠なんです」

最初の主人公は、19世紀イギリスの貴族の息子、ジョナサン・ジョースター。その宿敵であるディオとの因縁が物語の主軸となり、子孫の代まで脈々と受け継がれていきます。

興味深いのが第5部。主人公はなんと、ディオの息子!え、ジョースター家の血筋じゃないの?

気になるその真相は、ぜひ実際の作品を手にして確かめるとしましょう。

各部において、主人公の性格も大きく変化する点にも、『ジョジョ』シリーズが描く人間の奥深さが見てとれます。

「第1部主人公のジョナサンは、英国紳士。なのに、その子どもで第2部の主人公になるジョセフは、チャラ男みたいなキャラクターなんです。彼は頓智をきかせて凶悪な敵にも打ち勝つ。戦い方も主人公によって違ってきます」

物語が進むごとに描かれる”敵”や”恐怖”の在り方が変化するのも面白さ。

たとえば、シリーズ全体の象徴的な宿敵・ディオはある種カリスマ的な存在ですが、第4部で敵として登場する吉良吉影は、よりひっそりと、「静かに暮らす」ことを望むキャラクターとして描かれています。

「第4部は、身近に迫る恐怖が見どころです。色んな敵が襲ってくる第3部の派手さと、対照的なのも面白いですね」

主人公、敵、それぞれが自分の信念を貫く様を通して、人間がもつ底知れぬパワーを描き出す『ジョジョ』シリーズ。

時代を経ても変わらない人間の普遍性、その中でもきらめくキャラクターごとの個性は、まさしく時代モノ・歴史モノの醍醐味に通じるところがありそうです。

あの有名旅行ガイドともコラボ!歴代ジョジョたちが刻んだ旅の記録

主人公の交代とともに、時代や舞台も変わる『ジョジョ』。物語はこれまで、国の内外を縦横無尽に飛び越え展開されてきました。

なんと、あの『地球の歩き方』とコラボした書籍も刊行されています。

第1部、19世紀イギリスで始まった物語は、第2部ではアメリカへ。

「ニューヨークやメキシコ、イタリア、スイスなどを移動していくんですが、その先々での食事や文化が描かれていて。漫画を読んでいると、自然とその土地に詳しくなれたりします」

そして、日本の高校生・空条承太郎が主人公となった第3部は、日本から香港、シンガポール、インドなどを経て果てはエジプトまで至る大冒険を展開。

「一番”王道”といわれるのがこの第3部。その次の第4部がいきなり日本の杜王町という場所になるんですが、これが、3部のためにたくさん取材旅行をした結果、『荒木先生が疲れてしまったから』と言われています(笑)。杜王町のモデルになっているのは仙台、先生の生まれ故郷です」

先述の吉良吉影が登場するのもこの第4部。原作者の地元をモデルとした舞台で描かれるのが、「身近に迫る恐怖」であるのは興味深いものです。

そして第5部、主人公は噂のディオの息子、ジョルノ・ジョバァーナ。舞台はイタリアで、ファンには聖地巡礼旅行が人気だそう。

第6部には、シリーズ初の女性主人公・空条徐倫が登場。物語は彼女が無実の罪で収監された刑務所で始まりますが、中盤以降はどんどん展開がダイナミックになるらしく…

「物語が加速し過ぎてですね。世界がいっぺん終わって、パラレルワールド化するんです」

ど、どいうこと…!?度肝を抜かれる展開です…

「第7部は始まった瞬間に、アメリカ横断レースがスタートするんです」

え!?終わった世界はどうなってしまったの?もう旅どころの話ではありません。

しかも第7部、まさかの謎が解けないままで次の部へと突入するそう。

そんな訳のわからない展開、読者は置いてけぼりにされてしまうのでは?と、思いきや、とにかく話はとても面白いそうで、藤井さんも第4部・第5部とならびお気に入りに挙げています。(ただし基本的にどの部も良いので、これ!とお気に入りを決めるのは難しいとのこと。)

第7部の謎はその後、ふたたび杜王町が舞台となる第8部で明かされるそうですが、なんとその間12年!『ジョジョの奇妙な冒険』の、作品としての歴史の深さを感じます。そこについていくファンの熱も、やはり尋常ではありません。

そして現在、南国ハワイを舞台にストーリーが進行中の第9部。ここからまた、アッという展開へとつながっていくのでしょうか…?

『ジョジョ』ワールドの創造主、荒木先生も、すごい

「荒木先生が、すごいお茶目なんです。ぜひ先生にも注目していただきたい」

と、藤井さんがプッシュするのは原作者・荒木飛呂彦先生の魅力。

ここまでのお話の中でも、そのチャーミングさは見え隠れしていました。ちなみに『ジョジョ』未読の筆者、「荒木先生がいつまでも若々しすぎる」という噂までは聞き及んでいます。

実はメディアにもよく出演している荒木先生。お料理もお得意とのことで、『JOJO's キッチン』という料理番組が作られたことも。

アートへの造詣が深いことから、TV番組『日曜美術館』にコメンテーターとして出演するなど、幅広く活躍されています。

「『ジョジョ』そのもののアート性も、近年高く評価されています。GUCCIやベンツとコラボしたり、ルーヴル美術館の企画展で展示されたこともあるんです」

最近では、先生が東京弁護士会の公式キャラクターの選考委員に就任したニュースが話題となりました。

荒木先生へのインタビューも行ったことのある藤井さん。間近で感じたのは、その人間としての厚み。

「質問に対して、誰も傷つけない、完璧な回答がかえってくる。『ジョジョ』って結構えげつないシーンやキャラクター描写もあるんですが、そんな話を書く人にみえないですね。別の人格なのでは、と思うくらい。素敵な方だな、と思います」

ここまで聴いたらもう、居ても立ってもいられない。早く奇妙な冒険の世界へ飛び込みたくなってきます!

やっぱり時系列で第1部から?それとも人気の第3部や第4部から読み始めるのがいいのか…。

悩む初心者へ、藤井さんのおすすめは意外にもスピンオフ作品である『岸部露伴は動かない』と、『死刑執行中脱獄進行中』、そして最新シリーズの『ザ・ジョジョランズ』。

「スピンオフ作品は2巻くらいでまとまっていて、『ザ・ジョジョランズ』もまだ物語が始まったばかり。やっぱり独特な作品ではあるので、まずは短いお話から『ジョジョ』が自分に合うのか試してみてはいかがでしょうか」

作品があわない人には、無理にすすめない。

だけどスピンオフ作品であっても、伝わる人にはバッチリその面白さがはまるはず。

そんな、藤井さんのファンとしての心意気と、『ジョジョの奇妙な冒険』への信頼が感じられるセレクトでした。


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