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これは私の物語。なのに、私のものではない。

フランス・ボルドー出身の映画監督、脚本家、女優である著者のデビュー小説を読み終えました。

       (Amazonから画像を借りています)

3つの大陸、3人の女性、3通りの人生。唯一重なるのは、自分の意志を貫く勇気。インド。不可触民のスミタは、娘を学校に通わせ、悲惨な生活から抜け出せるよう力を尽くしたが、その願いは断ち切られる。イタリア。家族経営の毛髪加工会社で働くジュリアは父の事故を機に、倒産寸前の会社をまかされる。お金持ちとの望まぬ結婚が解決策だと母は言うが…。カナダ。シングルマザーの弁護士サラは女性初のトップの座を目前にして、癌の告知を受ける。それを知った同僚たちの態度は様変わりする。3人が運命と闘うことを選んだとき、美しい髪をたどってつながるはずのない物語が交差する。文学賞8冠達成!全国図書館協会賞、グローブ・ドゥ・クリスタル賞(文学部門)、「ルレイ」旅する読者賞、女性経済人の文学賞、ユリシーズ賞(デビュー小説部門)、フランス・ゾンタクラブ賞、全国医療施設内図書館連盟賞、ドミティス文学賞。(「BOOK」データベースより)

本国では出版直後から口コミで評判が広がり、85万部超えのベストセラーです。

インド、イタリア、カナダと著者の出身地ではない、大陸のかけ離れた国に住み、境遇も違う3人の女性の人生が交互に語られていくうちに、結末でまさに三つ編みを編み終えるように結びつきます。

3人ともそれぞれ不運や試練に見舞われるますが、三者三様の生き方で乗り越えようと奮闘する女性の力強さが素敵です。

それにしても、女性がこれほどまでの過酷な状況に置かれるのはなぜでしょうか?

小説の背景に描かれる身分制度や伝統的価値観、効率優先社会の重圧が、多くの女性にのし掛かっているということでしょう。

過酷な状況を脱しようと奮闘した末、3人は希望を見出すのですが、この作品の良さは登場する男性の良さも見逃せません。

フェミニズム小説だと男性優位な構図を扱いがちですが、思いやり深い男、押しの弱い優しい男たちが寄り添って、脇役として主人公を引き立てていました。

男女格差是正に積極的で、多様性を認めるフランスを母国とする著者らしい作品といえるかもしれません。

「#Me Too」運動がここにも影響があるようで、世界32カ国での翻訳が決まっているそうです。

タイトルは、プロローグに記された最後の2行です。

韓国の「82年生まれ、キム・ジヨン」もそうでしたが、このタイプの小説は好きです。

著者の手による脚本・監督で映画化の話も進んでいるようなので、そちらも期待したいですね。



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