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ひとよ

あけましておめでとうございます
と、言えない日が続いています。
年末年始、家族や友人たちと過ごした写真をここに載せようと思っていたけれど、元旦に起きた能登半島地震と、その後の救助、避難所の様子を見ていていると。
あまりにも今私の過ごしている日常とかけ離れた現状に言葉もありません。

わたしはというと一昨日、夜中に豆腐一丁食べたらなんでか急性胃腸炎になり、脂汗をかいて上へ下への大騒ぎがあった後、今は自宅にて細々仕事をしつつ、大人しくしております。
なにやってんだ。豆腐は胃に優しいわけじゃないのか。
だからこれもこれで日常ではないのですけれど、おしらせがありnoteを書くことにしました。

桑原の原作舞台を映画化した「ひとよ」が、テレビ初放送されます。
これまでご覧になったことがない方々がいらっしゃいましたら、是非この機会にチェックしてくださいませ。
感動ドラマという表現は、私の立場ですとどこか気恥ずかしい思いもありますが、白石監督と素晴らしいキャストの皆さんによる、素晴らしい映画になっております。

KAKUTA公演「ひとよ」
(こちらは2016年の再演版)
写真・相川博昭

原作舞台の初演を描いたのは2011年の夏。
この物語を描いたのは東日本震災がきっかけでした。

世界は、人は、一夜で変わってしまうことがある。
もし、人生が一変してしまうような出来事が起きたとき。
すべてが真っ暗な闇につつまれてしまったとき。
私たちは、どうしたらこわれてしまったものを再生できるのか。
明けない夜はないなんて、ほんとうだろうか。
この作品に描いたことは、そのまま、震災当時の気持ちでした。

当時、震災について直接的に描くことはまだ当然出来ず、家族の崩壊に状況をスライドさせて描いたので、元になっているとは気づかれませんでした。
そもそも、震災について描きたいと思ったわけでもありません。
失われた日常のただなかにあるとき新作舞台を創ることになって、「普通の日」はほんとうに戻ってくるのだろうか、という想いを、そのままのせる形で描くことしかできなかったのです。

今、このタイミングでこの映画が放送されることに、なんともいえない気持ちになります。皮肉にも思えますし、今だからこそ、改めて見直したい気持ちもあります。

能登半島地震があった元旦、私は金沢出身の姉と共に過ごしていました。
姉というのは心の姉で、10代の頃からの友です。
兄弟姉妹のいない私にとっては、これまで人生の折にふれ支えてもらった、時には窮地から助け出してくれた肉親のような存在であります。
関東にいるこちら側で感じた地震もそれなりに長く怖かったけれど、ここまでの事態が起きているとは気づかず、そばで涙する姉のすがたに事の深刻さを察しました。
それでも姉の親族が無事であることに安堵し、何より今、私の横に姉がいることに安堵し、きっとすぐに救助が行くはず、この場で気を病んでも仕方がないのだからと、なるべく予定通りの正月を過ごすことにしました。
東日本震災の時に、自分の心の平安も守らなければならないと思った教訓から、こもってニュースを追い続けるのはやめようと思いました。
二日の日はもう一人の姉も来て、母も加わり、買い物をしたり食事をしたりして過ごしました。

いつもどおりに、いつもどおりに。

大丈夫、きっと大丈夫。日本は地震大国です。でもだからこそ、こうした災害への対策は慣れていると思っていました。
そう信じていました。

でも。でも。でも。
8日現在、避難所の様子はどうでしょう。
今も、食事や薬、水でさえ足りてないという声が多く届き、寒さの中で救助を待っている人がいると知るにつれ、「できるだけいつもどおりの生活を」ということをほんとうに享受していいのかわからなくなります。
現地に行くなと言われていますが、本当にそうなのでしょうか。
地割れや土砂崩れなどあるなか、何もわからぬ素人が乗り込んでは危険だと言うことはわかります。ボランティアが増えすぎてもかえって迷惑がかかるということも、理解できます。
でも。それは国の対応が充分に行われていてこそ納得できるものではないでしょうか。

国の代表が現地に行かず正月休みを過ごし連日新年会に行く。テレビ番組に出演してこの期に及んで憲法改正だの選挙戦だのを語る。現地にいないのに作業服を着て、胸に赤い花を指してみせるあまりにも無神経な姿には、さすがに怒りを通り越し、心底哀しく、怖くなりました。
あなたがいつもどおりの日を過ごしてどうする。
あなたたちを信じられないから、いつもどおりに過ごしてしまえる自分にも不安が募る。
無力だと言うことはわかっていても、現地に行って何かしたいと、これほど強く思ったのは初めてです。

同じ気持ちを抱いている人は、大勢いるだろうなと思います。
出来ることをするしかない、わかっています。

いまできること。

※こちらの募金は災害救助犬の支援だけでなく被災した犬たちの一時預かりにかかる費用にも使われるとのことです。

再生、復興、絆。
そんな言葉が信じられなかったときに描いた「ひとよ」。
でも信じたい。そう思って描いた。
信じたい。
支え合うことを、許し合うことを、また歩き出せることを、
ひとを。

映画版で唯一登場しない舞台版の名物キャラクター、吉永さん。
家族の前に現れる、きてれつで陽気な救世主。
今こそ彼のような人が現れてほしいと願ってしまう。
「おきゃくさんどちらまで?」
「そうね・・・夜が明けるところまで」
「ひとよ」2020年の再再演は、渡辺えりさん主演で。
このまいど豊さんがほんとうに素敵

本日放送、よろしければご覧くださいませ。

映画版に私やKAKUTA勢もちょっと出演しております。
見つけてくださいね。
この映画で知り合ったフィリピンパブのお姉さんたちが後に「らぶゆ」という作品のなかで私が演じた役のモデルとなったのは、また別の話

被災地の方々が、一日も早く、温かく安心できる場所で過ごせますように。
新しい年を心から祝える時を願って。

わたしもいま、できることを。

新年あけましておめでとうございます
本年もよろしくお願いします

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