見出し画像

アークナイツ二次創作【ミヅキサイドストーリー】まとめ⑦

 ――――――時刻00:12。

 ロドスまで約5時間の道のりを走り、ペンギン急便一行がロドスへと到着。
 案内役のオペレーターはイーサンが優しく断り、そのまま先頭を歩いていく。

「あかん……もう体バキバキやわ……めっちゃ遠いやん……なんでロドスから迎えに来てくれへんねん……片道五時間かかるとかアホやろ……」
「クロちゃん、私もいろいろ疲れたよ……あ、ミヅキ君ありがとう……」
「気にしないで」

 ソラは精神的に疲労が溜まっているらしく、ミヅキが自然と手を貸して支えられていた。

「ボス重かった! 膝がぺちゃんこになってる!」
「そんなんなるかいなっ……ってツッコミさせんとって……」
「エクシア、てめぇが俺を膝の上に乗せたんだろうがっ」
「もうほんましんどいわぁ……」

 クロワッサンが肩を回しながらため息をもらし、テキサスは口にお菓子を運ぶ。
 エクシアは楽しそうにボスとじゃれ合う。

「……んぁ~、よく寝たぜ」
「イーサン、ちょっとは休めた?」
「おう、少しはな」
「そっか、それならよかった」

 ミヅキの笑みに自然とイーサンの口元が緩んでいく。
 テキサスはなにも動じていないようで黙々と廊下を歩いていたが……。
 お菓子を運ぶ手がふと止まった。

「それでボス、どうしてロドスに来たのか説明してくれないか」
「ん、あぁ、そういえばそうだったな。おいミヅキ」
「なに?」
「あの荷物の中身を読んでみな」
「ん? うん……」

 ミヅキはボスに言われて荷物と言われていた封筒の中から1枚の紙を取り出した。

「えっと……、『この度、ロドスに新しい客人を迎えることとなり、そのことで手紙を送らせてもらった。彼の名前はミヅキ、優しく礼儀正しい子だ。そこで、ペンギン急便の皆様がよろしければ食事会を開きたいと思う。都合のいい時間に来てもらえれば食事の用意をしよう。』って……」
「「…………」」

 手紙の内容にイーサンとミヅキは顔を見合わせた。

 ――――このためにロドスからわざわざ行かせたの?

 二人が同時に疑問符を浮かべる。

「パーティーじゃん! やったー!」
「ま、そういうことだ。ドクターの奢りってんなら、断ることもねぇだろ?」
「アップルパイとか鱗獣のステーキとか作ってくれるのかな!」
「そりゃ作ってくれなきゃ来た甲斐がないってもんだぜ」

 エクシアとボスが料理の内容を楽しそうに話す。

「ふむ……」

 テキサスは少し考えたあと、クロワッサンとソラに声をかけた。

「二人ともこんな時間だが、食えるのか?」
「食べるよりもうち寝たいんやけど……ってかテキサスは疲れてないんか……?」
「私は大丈夫だが?」
「ほんまタフやなぁ……」
「わ、私……この時間に食べるのはちょっと遠慮したいかも……あ、でもみんなが食べたいなら付き合うよ!」

 テキサスの質問にクロワッサンは項垂れながら呟き、ソラは空元気で答える。

「んで、肝心のドクターはどこにいるんだ?」
「そうだそうだー! ドクターを出せー! じゃないとミヅキ君をよしよしするぞー! イーサンのヨーヨーに花火付けてパチパチするぞー!」
「おいイーサン、ドクターはどこだ?」
「ん〜」

 ボスの質問に対してイーサンが辺りを見ながら、
「んー、そもそもこの時間に帰ってくるって知ってんのかなぁ」
 と呑気にあくびをかました。

「まぁまぁ、応接室に行けばじきに現れるんじゃない? それかドンパチして待つ!?」
「ちょうど体を動かしたかったところだ」
「お、テキサスやる気だね! やっちゃおうか!」
「望むところだ」

 ――――――コツ、コツ…………。

「ん……? あ!」

 微かな足音に振り向いたミヅキの表情が、視界に捉えた人物を見たと同時に花が咲いたように明るくなっていく。

「えっとねー、勝負の内容は――――」
「……テキサス、エクシア、艦内で暴れるのは控えてもらえないかな?」
「おっ! ドクター久しぶりだー!!」 
「ドクター、世話になる」
「ああ……。ボス、それにペンギン急便のみんなも足を運んでくれてなによりだ」

 ドクターの登場にソラが身を引き締めてお辞儀をした。クロワッサンはあくび混じりに手を振り、ボスがぺたぺたと歩み寄る。

「おうドクター、お招き頂き光栄だ。それに、ドクターの方こそ相変わらずでなによりってもんだ」
「ああ、ありがとう」

 ドクターとボスが握手を交わすなか……。
 エクシアが凄まじい勢いでドクターの背中へと張り付いた。

「あぁ〜楽だ〜♪」
「エクシア、なぜ背中に……?」
「疲れたからー」
「それだと私が疲れ……いや、まぁいい。迎えに行けなくてすまなかった」
「ふふーん、その代わり美味しいご飯期待してるよ!」
「もちろんだとも」

 ドクターは迎え入れたペンギン急便のメンバーを客間へと案内し、必要な分だけの軽食を用意するようにオペレーターへと頼んでいた。


 ペンギン急便と別れたミヅキとイーサン、ドクターの3人が廊下を静かに進んでいく。

 深夜のロドス艦内、ドクターを挟むようにしてイーサンとミヅキが歩いていく。
 間に並び歩くドクターも、心なしか嬉しそうに見えた。

「二人ともおかえり、怪我はしていないか?」
「ああ」
「うん」
「疲れてはいないだろうか?」
「ん〜、俺は車ん中で寝てたからなぁ、逆に目が冴えてるぜ」
「僕も元気だよ」
「そうか……それなら良かった」

 静かな艦内に足音だけが響いていく。
 ロドスの陸上艦も今は運航を停止させているため、オペレーターたちは一部を除いてぐっすりと眠りについているだろう。

「なぁ、ドクター」
「……?」
「なんで任務だなんて言ったんだ? 本当に内容はただのおつかい、荷物の受け取りもなかったしよ〜。最初からそう言ってくれれば良かったのに」
「……その件に関しては二人にすまなかった」
「「…………」」

 ドクターの謝罪に二人は足を止めた。
 別に謝ってほしいわけではない。ただ二人はなぜそうする必要があったのかを聞きたかった。

「ねぇドクター、理由を教えてもらえる?」
「ああ、もちろんだとも。歩きながら話そう」

 彼らには理由を説明しなければならない。でなければ不公平というものだ。

「ミヅキは現在、客人としてロドスに滞在してもらっている」
「へぇー、オペレーターじゃないのか」
「うん、そうみたい」
「……だが、私としてはミヅキと他のオペレーターたち、他にも外との繋がりを持ってほしかった」
「繋がりねぇ、こいつならどこ行っても好かれるんじゃねぇのか?」
「ああ、私もそう思うよ、イーサン。だが、きっかけは誰にでも必要となるだろう」

 ドクターの話にイーサンがあくびを添える。

「ふぁ~ぁ……まぁ要するにドクターが考えてるこたぁ分からねぇけど、そうする必要があったってことなんだな」
「理解してもらえてなによりだ、イーサン」
「俺はあんたを信用するさ。ああ、そういえばレユニオンの襲撃のことって……」
「その件については、こちらで対応済みだ」
「さすがドクターは仕事が早いねぇ。リーさんはドクターが呼んだのか?」
「嫌な予感がしてね」
「へぇ~、さすがだねぇ……」

 ミヅキは二人の会話をただ隣で聞いていた。ドクターの言葉を、イーサンの問いかけを飲み込んでいく。
 イーサンは虚ろなミヅキの瞳を視界に捉え、自然とヨーヨーを取り出す。

「んじゃま、俺は自分の部屋で寝てくるわー」
「そうか」
「じゃあなミヅキ、今日は助かったぜ」
「ううん、僕のほうこそ。イーサンありがとう」

 イーサンの姿が周囲に溶け込んでいく。ヨーヨーだけが宙を舞いながらフラフラと進んでいく様子に、ミヅキは小さく手を振る。

「ねぇドクター」
「……?」
「ドクターは眠くないの?」
「……もう少し話そうか」
「ドクターがいいのなら」
「ああ、構わないよ」
「えへへ、ありがと」

 深夜、寝静まった艦内を二人は歩き、陸上艦の甲板へと足を運んで行った。


 甲板には、ドクターとミヅキ以外は誰も居ない。
 外の空気はひんやりと、頬を撫でれば身体が冷えていくような肌寒い感覚がする。

 二人は甲板の手すりの下で、背中を手すりの細い柱へと預けてその場へと座りこんだ。

「ドクター、外だと少し冷えるね」
「ああ……私の部屋で話そうか?」
「ううん、車の中でソラさんが暖かかったから丁度いいよ。ドクターは大丈夫?」
「私は大丈夫……それより、車の中は疲れなかったかい?」
「うん、車にみんなぎゅって入ってたから。楽しかったよ!」
「そうか」
「うん!」

 ミヅキが笑みを浮かべ、両ひざを抱きかかえた。
 ドクターは静かにミヅキの横顔を見つめる。膝の間から、ミヅキは冷たい鉄製の甲板の上を一点に注視している。

「聞きたいことは遠慮しないで聞いてくれて構わないよ」
「ふふっ、ドクターはなんでもお見通しだね」
「そう感じただけさ」
「僕は……そうだね。ちゃんとした全体の説明が聞きたいかな。イーサンにした返答は少し曖昧なように感じたんだ」

 あの場で言葉を濁したのは、ミヅキには伝わっていたらしい。イーサンも違和感に気付いて二人きりになるようにしてくれたのかもしれない。
 彼の良さは全体の空気を察知できることも含まれる。

「ああ、分かった」

 ドクターはミヅキの質問に丁寧に答えるべく呼吸を整える。そして、今回の経緯に至るまでを述べていった。

「――――私としては、君が様々な人物、オペレーターたちと交流を深めてほしいと願っている。だが、君は医療部門の観察対象でもある。だから安易な外出許可が貰えないんだ」
「うん、ケルシー先生からも聞いてるからね。事情は分かるよ」
「そこで、外出を可能にするため、今回は二面性を含めた任務にした」

 まず始めに、オペレーターを動かすのには名目が必要になる。
 行動目的が決まれば計画と実行。だが、オペレーターではないミヅキを任務に加えることは出来ない。

 そこで、アーミヤと一緒に形式上は任務という形をとり、内容は荷物の受け渡しということになった。

「1つは任務という形に、そしてもう1つは客人としてペンギン急便への挨拶回りだ」
「そんな屁理屈みたいなのを、ケルシー先生が納得したの?」
「事後報告さ。先ほど、彼女には随分と言われてしまったけどね」
「ふふっ、想像できるよ」

 楽しそうに微笑むミヅキに、ドクターは僅かに安堵していた。
 もし、この行動が彼の気分を害した場合、ドクターが嘘をついたと感じた場合……。ドクターを悪だと認識していたかもしれない。
 そこは賭けのようなものだったが、これで彼には必要悪の概念があるということが解かった。

 ただ、リーとSharpが彼の監視役だったということは、知らない方がお互いのためだろう。

「……ということで、明日は食事会を開きたいと思っているんだが、どうだろうか?」
「うん、喜んで!」
「それは良かった」

 ドクターが立ち上がり、隣で見上げるミヅキへと手を差し出す。

「さぁ、身体も冷えてしまうから部屋に帰ろうか」
「そうだね。ドクターの体調が悪くなったらいけないし」
「ミヅキ、君もだよ」
「えへへ、こう見えても身体は丈夫だからね」
「……」

 身体は……か。

「ねぇ、ドクター」
「……?」
「部屋まで手を繋いでもいいかな?」
「ああ、君がそうしたいなら」
「ふふ、ドクターを独り占めだねっ」
「……」

 オペレーターから手を繋いでくれと言われるのは久しいような気がする。
 皆が私にこうして接することは、無いのだろう……。

 そういえば、私が眠りから目を覚ました時に、手を差し伸べてくれたアーミヤ……。
 彼女の意思もロドスも、ここですぐに失うわけにはいかない。


 みんなが寝静まった艦内を歩き、ミヅキの部屋までドクターが見送る。
 部屋の前でミヅキは手を放し、くるりと回り丁寧なお辞儀をした。

「お見送りありがとう、ドクター」
「そんなにかしこまらなくていい」
「良い人にはちゃんと礼儀正しくしないとね。それにドクターに嫌われたら悲しいし…………なんて、あはは……」

 微笑みの中に、少しばかりの苦みを含めた表情を見せるミヅキ。
 私の方こそ、いつ私自身が、知らないうちに彼を裏切ることになるか心配になる。

「そんなことで嫌いになったりしないさ」
「……」
「ミヅキ?」
「……うん、ドクターならきっと大丈夫だよね」
「ああ、大丈夫だ」
「えへへ、送ってくれてありがとう! おやすみなさい!」
「ああ、おやすみ」

 部屋の扉が閉まるまで、隙間から手を振り続けるミヅキに同じ行動をする。

「…………」

 さぁ、寝るにはまだ早い。
 私にはまだやることがある。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?