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想いに寄り添う企てを。

先月から通い始めた全6回の講座
『言葉の企画』

6/15(土)第2回目を受講した。

主宰者の阿部広太郎さんが話す言葉と
他の企画生から得る学びを
自分の中にひとつずつ落とし込んでいく。

自分は物事にどんな企てをしているのか
日常生活を振り返ることが最近楽しくて
言葉の企画での学びと照らし合わせることで
学びがより深まると感じた。

今回も阿部さんの
『正論よりも楽論に人が動く』という言葉で
看護学生時代の実習での体験を思い出した。

▶︎その人らしさを考える(個別性)

大学3年生の夏、
老年看護学の実習(高齢者の方の看護)で
緩和ケア病棟に配属された。

✳︎緩和ケア病棟とは、
がんに伴う全人的苦痛(身体的・精神的・社会的苦痛・スピリチュアルペイン)を、
できる限り和らげることを目指し、
「その人らしく」過ごすための
支援をする病棟であり、ひとり1人の病状に
合わせたケアを行う病棟。

「その人らしい」
個別生のある看護って何だろう。
看護学生の私には、目の前の患者さんに
3週間の実習期間で何ができるんだろう。

患者さんが
どんな想いを抱えて入院しているのか、
病院という限られた空間の中でも
笑顔が増えたら精神的な痛みを
和らげることができるんじゃないか、

自分にできる看護を見つけて
少しでも患者さんの想いに寄り添いたい。
そう決意して実習に臨んだ。

▶︎心が動く瞬間を見つける

私が担当した患者さん(=Aさん)は、
食事以外の時はベッドで寝たきりで
1日の多くの時間を病室で過ごしていた。

寝たきりの状態は体力がどんどん落ちてしまうので、なるべく自分の部屋から出て活動してほしいと看護師さんは話していた。

Aさんの心は何に動かされるのだろう。

Aさんが食事以外で起き上がるのは
俳句をつくるとき、家族が来たとき、
病院で大事に育てているニンジンの鉢植えの手入れをするときだった。

農家の家に育ち、
野菜を育てることが大好きなAさん
病院で個人の鉢植えを用意してもらい
小さなニンジンを育てていることを
嬉しそうに、楽しそうに話してくれたAさんの表情は今でも忘れられない。

その人らしくを大切にする
緩和ケア病棟ならではの看護だと思った。

そして、育ったニンジンを見て
Aさんと一緒に喜ぶ看護師さんの様子から
患者さんと同じ目線になることで
患者さんが何を考えているのか、
何を感じているのか、
患者さんに『寄り添う』ことの大切さを感じた。

Aさんの心が動く瞬間を見つけるために
好きなことや楽しいことを一緒に感じることでヒントが見つかるかなと思った。

▶︎一緒に共感できることを探す (自分ごと化)

筆ペンを使って毎日俳句を書くAさんに
習字を習っていたことを話すと
とても興味を持ってくれて話が盛り上がった
病棟に習字道具があったので、
今度一緒に好きな文字書きましょうよ!と話すと、目をキラキラさせながら賛成してくれた。

お部屋から共有スペースに移動して
お互いの名前を書いてプレゼントしあったり、
Aさんの好きな言葉を書いてほしいとリクエストされ、『心、愛、信、望』の4文字を書いた。作品は、ベッドで横になっても見える位置に飾ることにした。
いつも関わる看護師さんがこの様子を見ていて、Aさんが食事以外のことで共有スペースに出ていることに驚いたと話してくださり、
ご家族の方も壁に貼ってある習字をみて、Aさんが喜んで話してくれていたことを教えてくれた。

看護の実習では患者さんの健康課題を抽出し
課題へのアプローチ方法を考えなくてはいけない。課題の1つに、寝たきりの状態による体力の低下があったが、ただ「体力を落とさないために動きましょう」と言っても理屈はわかるんだけど、自分だったらその言葉かけだけじゃ動かないなあ…と思った。

そしてきっとこういった課題は共通している患者さんは沢山いるはずだけど、
その人らしくを大切にした個別性のある看護を実現するためには、
ただ活動を増やしましょうと声をかけるのではなくて、Aさんが自分の意思で動きたいと思ってもらえるような工夫が必要だと考えた。

Aさんの行動を振り返ると
ベッドから起き上がって活動しているときは
ニンジンを育てたり、俳句を書いたり
好きなことをしているとき。

▶︎正論より、楽論

理屈で人は動かない。
人を動かすためには、楽しいこと、ワクワクすること、心が動かないといけない。と
Aさんと関わることで気づくことができた。

今回言葉の企画でも、
正論よりも楽論に人は動く』とあったが、
まさにこれだ!!と思った。

Aさんの看護計画に楽しさ(ユーモア)を企てることを意識した。

▶︎本音に向き合うと、課題が見えてくる

Aさんとも少しずつ関係性ができてきて
本音を話してくれることが多くなった。

《お風呂が大好き》
大好きなお風呂、
でも人の介助で入らないといけないのが実は悲しい。

《自分のペースで動きたい》
ベッドから車椅子に移乗するとき、
もう少し自分のペースを待ってくれたら、看護師さんの介助がなくても自分で乗ることができるのに。看護師さんは忙しいから介助した方が早いんだよね。わかってるんだけど、自分でできることは自分でしたい。

《牛乳が好き》
でも、朝ごはんのタイミングでどうしても飲む気持ちになれなくて結局飲めていない

何気なく話した会話の中には
本当はこうしたいというAさんの想いがあって、その想いに寄り添いながら看護したいと思った。

そこで考えた看護計画は…
《足湯で温泉気分!
さっぱりした後は牛乳でカンパイ!》

入浴自体は安全面も考慮し、介助が必要なため無理はできない。けど足湯なら自分の部屋で環境を整えればできる。(足浴という看護ケアを足湯とした)
そして、朝飲みたくても飲めなくて結局飲むタイミングを逃していた牛乳も、
お風呂上がりの牛乳は美味しい!という会話から、足湯でプチ温泉気分を味わいつつ、終わった後に牛乳でカンパイしましょう!と計画を立てた。とても楽しみにしてくれていて、看護師さんに足湯して牛乳飲むんだと話していたらしい。

そして、温泉気分を少しでも味わうために
お部屋を銭湯風にアレンジしようと思っていることを話したら、一緒に準備したいと話してくれた。
「ゆ」の字を書いた暖簾、
かもめが飛んでいるオリジナルの富士山、
足湯に入れる入浴剤選び、
全部手作りのため自然とベッドから起き上がる時間も長くなり、活動量を増やすことができていた。
当日は足湯をしながら二人で描いた富士山を見て、「この富士山は日本一だ!」と笑いながら楽しい時間を過ごすことができた。

▶︎前向きな変化が起きる企てをしたい

実習中に
Aさんが少し長めの詩をつくってることを教えてくれた。
実習最終日に、下書きと完成した詩を見せてくれて、1つの変化に気づいた。
詩は3番まであって、
各はじまりのフレーズが下書きの時は、
「心さみしく、心せわしく、心かなしく」だったのが、完成版は、3番目の心かなしくが
心うれしく」と前向きな言葉に変わっていた。

Aさんの心になにか前向きな変化を起こすことができたようでとても嬉しかった。

そしてもう1つ驚いたことは、
はじめの頃Aさんと習字をしたときに書いた「心、愛、信、望」の4文字が詩に使われていたことに、とても感動した。
Aさんはこの詩をプレゼントしてくれて、
私にとって今でも大切な宝物だ。

大切にしまっていた宝物を
思い出といっしょに振り返り
言葉の企画の学びとすり合わせることで
温かさが増した大切な宝物となった。

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