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最終出勤日に13駅分歩いて会社に行った話

2022年12月下旬。最終出勤日に用もなく午前休を取っていたので、「歩いて会社に行こう」と前日に思いついた。
自宅は埼玉県なのでそこから歩いていくのは無理なのだが、長い通勤にうんざりしていた有楽町線を最後に歩いて、良い思い出に昇華させようという目論見である。

前日譚はこちら

というわけで、最終出勤日。
予定通り10時に池袋駅に降り立ち、有楽町線ウォークの始まり!

1.池袋駅 10:04

東池袋駅へは、ほぼサンシャインシティへ向かう道のりと同じである。普段から徒歩圏内。何度か歩いたことがあるがなんでだろうと考えてみた。

1.大阪と行き来する夜行バスを池袋で乗り降りするとバスターミナルがサンシャインの最奥部だったので。頻繁に使っていたわけではないけれど。

2.都電が好きなので、荒川線の東池袋四丁目駅に意味もなく降り立ったことも何度かあったような記憶。中高の同級生のL君は実家がこの辺りと聞いて、すごいなあと思ったこともあった。

2.東池袋駅 10:09

高架下には飲食店とちいさな事務所とが案外同じくらいの割合で並んでいる。飲食店がどれも良さそうである。池袋で飲もうと思った時に、東池袋を選ぶという発想がなかったなあと今更悔いた。10年以上前からよく来ている街なのに、まだまだ知らないことがありそうだなあと思う。

東池袋から護国寺にかけての間で、明かりがすでに灯っていて開いていそうな焼き鳥屋を発見、立ち寄りたい衝動に駆られる。時間さえあれば1杯くらい引っ掛けてから仕事に行けたら、もっとおもしろい思い出になったかもしれない…と、ウケを狙いがちである。幹線道路の対岸だったので、気にするだけで終わってむしろよかった。

3.護国寺 10:23

護国寺〜江戸川橋あたりは、雑司ヶ谷をぶらぶらすると自然と歩いているエリアである。通学時間には遅い気がするのだが、ちょうど男子学生がたくさん歩いていてなんだか微笑ましかった。講談社のビルを臨みながら進み、途中、あまりにも空が青いので立ち止まる。

4.江戸川橋 10:40


東京の友人たちは、学生の時と卒業後で住む場所を変えていることがほとんどだが、江戸川橋はサークルの後輩T君が住んでいた街。こうやって、東京のいろいろな街のことを「誰々が住んでいる/住んでいた街」と認識していることが多い自分に気づく。
江戸川橋は雑司ヶ谷や目白、早稲田界隈をゆったりと散歩していたら自ずとたどり着く街でもあり、目的地にしたことはないかもしれない。

大きな交差点のところに立派な公衆トイレがあって、それから川沿いがちょっとした公園みたいになっているのが好きだ。その公園を過ぎると椿山荘に出て、そこはもはや早稲田なので、江戸川橋は前々からすぐ身近にあった街だ(早稲田大学に通っていた)。

途中、パン屋さんでソーセージの入った細長いパンとフレンチトーストを買った(どちらもとてもおいしかった!)。
「是れはうまい!」と看板に赤字で書いてある立ち食いの肉そば屋さんがあってまたも強く心惹かれた。機会があれば行ってみたい。と思っていたら次の飯田橋駅近くでも遭遇し、チェーン店なのか!とつっこんでしまった。でも看板の写真を見返すとフォントのチョイスは全く違う。

5.飯田橋 11:08

江戸川橋側から飯田橋に来たのは初めてかもしれない。この辺りに来るときはたいてい、早稲田から早稲田通りを神楽坂方面にまっすぐ歩いて、神楽坂と飯田橋の境目はいつまで経ってもわからないな〜と思いながら気づくと到着している街、というイメージだ。

早稲田→江戸川橋、早稲田→飯田橋はそれぞれ歩いたことがあるのに、江戸川橋→飯田橋はわたしの中でつながっていなかったんだと気づくことができて、これだけで収穫である。
神楽坂側、JRの大きな入り口が見える方まで回るとやっと、よく知った飯田橋の顔で、なんとなく安心する。

6.市ヶ谷 11:31

飯田橋から市ヶ谷までの体感が結構長かった。川沿いに並ぶビルに時折大学名を見とめながら、外堀沿いに歩く。
片や進行方向左側を見れば法政大学。一度学食を食べに行ったことがある(学食めぐりにはまっていた時期があった)。いつもは九段下から高い建物だけが見えているイメージなので、この位置から見ているのが新鮮だった。

普段あまり使うことのない市ヶ谷駅に到着すると、ある記憶が急によみがえってきた。24歳の夏、某社の最終面接を受けに来たことがある!
結局そこは落ちたのだが、茶色いギンガムチェックのワンピースを着て行き、「バムとケロ」が好きな女の子と、デイビット・ボウイが好きな男の子と話しながら駅まで帰った記憶がある。その時と同じ坂を上って、その先は歩いたことがないな〜と、あの日の続きをしているようで楽しい。

時間帯のせいもあり会社員の人々の往来が多くて活気があった。ちなみに市ヶ谷駅の上半分はほぼケーキ屋のハーブスで、駅にハーブスがある、というより、ハーブスに駅がある、って感じで笑ってしまった。

途中、番町の森と言うちょっとした公園みたいなところで一休み。すごくいいベンチだった。深く腰掛けると大人でも足がつかなくてぶらぶらとすることになり、愉快な気持ちだった。おじさん3人組も足ブラしていて微笑ましい。わざわざ日陰を選んで座るくらいには暖かく、12月って案外暖かいんだなあ、と思う。

この辺りは千代田区の二番町とか六番町とかいう地名で、そういえば以前仕事で千代田区の小学生たちと関わった時に、子供たち同士で「私は○番町に住んでるの」みたいな会話があったなと思い出した。こんなところに住んでるのか、すごい…

7.麹町 11:51

市ヶ谷と麹町はとても近いのだが、番町の森でパンを食べていたので遅くなってしまった。

麹町の印象は、四谷からすぐ歩ける場所で永田町方面に歩くときに何度か通り過ぎるところ、というような感じ。国会図書館に行くときなどに通過しており、今回も同様のルートである。
たくさんの会社員がランチを食べに外出していたけど、よくよく時計を見れば12時前である。そんな早い時間からみんな昼休憩に行けるものなのか、と驚く。

8.永田町 11:56

永田町まで、5分で着いている。近い。というか、もしや14時の出社に間に合わないのではとビビり始め、麹町から永田町まで少し走った。そのせいもあるが、距離も近い。

急に静かで、空と銀杏が美しい。永田町は修論執筆時に国会図書館に行くために何度となく下車していたが、今日はなんだかいつもよりキラキラして見える。
国立劇場の横を通って、半蔵門の方に折れる国道20号の標識を見て嬉しくなる。20号線は山梨に住んでいた時に出会った私が一番好きな国道であり、こうやって東京のど真ん中でまた出会えるのはとても心躍ることなのである。

9.桜田門 12:12

なんと桜田門の地下鉄の出口の上にも国道20号の標識が。国道20号って内堀通りと重なるのだと初めて知った。

内堀沿いに到着すると、永田町周辺の少しキンと張り詰めた感じがやわらいで、空は広く、みんな走ったり散歩したり余暇の時間を過ごしている人が多くなっていい感じだ。特に皇居に吸い込まれて行く人の流れは圧倒的に外国人が多い。時間があったら立ち寄りたいところだけどちょっと厳しい。残念。

お濠のふちにはあまり見たことない黒っぽい鳥が何羽か群れでのんびりしていてよかった。木漏れ日がお濠の水面に映って、木の揺れるのに合わせてゆうらゆらとしているのもまたよかった。

10.有楽町 12:29

皇居を過ぎる辺りから、ようやく会社に近づいてきた感じがする!実体験からしてもここから豊洲は徒歩圏内だ(ちょっと他人とはズレた感覚かもしれない…)。

というわけで、少し安心する。地下鉄のちゃんとした出入り口を見つけることができず、よく出入りする階段のところで写真を撮った。一番使う出口はビックカメラのところなのだが、わざわざそこまで行く気力なく銀座方面に早々に歩き出した。

11. 銀座一丁目 12:33


近い!この辺りは駅密集地帯である。銀座線や丸の内線に乗るときはいつも銀座一丁目で乗り換えをして、ついでに伊東屋に立ち寄るのが今年のお決まりパターンだった。でも何も買ったことはない…。

この辺りは各県の物産館がとても多く、この日だけでも沖縄、広島、山形と立ち寄ってしまった。2月に宮古島に行く予定があり、つい前日にガイドブックを見たばかりだったのでブルーシールのソフトクリームに無性に惹かれてしまい、食べようか3分くらい迷った。食べなかったけれど。タコライスや沖縄そばの昼食をとっている人たちがいて、うらやましかった。

12. 新富町 12:46


有楽町から東へ向かうラインは、通常なら銀座-築地-勝どきとなることが多く、ここからが案外知らない道だった。
有楽町〜銀座エリアの雑多な人が入り乱れている通りから一本外れて、働いている人、暮らしている人、そこが日常の人だけという雰囲気になる。両手で鞄をちょこんと持って行儀よく信号待ちをしているおじさんがいてかわいらしかった。

そういえば4年くらい前に、豊洲のららぽーとに乗り捨てられているチャリのパンクをららぽーと内の自転車屋さんで直してもらってちょっと乗ったけど、すぐに新富町で乗り捨てたことを急に思い出した。図書館みたいなところの駐輪場に放置していった。今考えてもかなり謎な行為だ。

佃大橋を渡りながら、市ヶ谷からもうかれこれ1時間ノンストップなので少し疲れた心持ちになりながらも、通ってきた景色の遠さに清々しい気分になる。
いつもこの辺りを通ると思い出すのは聖路加タワーのこと。今は閉鎖されてしまっている展望室に両親と出かけたこと、帰りにエクセルシオールカフェに寄ったことを克明に覚えている。エクセルシオールの小粒で透明なタピオカが美味しいと覚えたのはそのときだった。

佃大橋から臨む隅田川は青々とそしてそこここで光がきらきらとしていて美しかった。疲れた足を休めるように、できるだけゆっくり、時間をかけて橋を渡る。あそこにも、こちらにも、光が落ちている、という様を見つけるのが楽しかった。

13. 月島 13:09

ようやっとゴールが見えてきた。月島駅には徒歩で来たことの方が多いんじゃないかというくらい地上からアクセスしている気がするのだけれど、そして佃大橋も何度か渡ったことがあるはずなのだけど、初めて通る道のように感じて不思議だった。
そこから朝潮大橋、春海橋とさらに2本の橋を渡って豊洲まで向かったのだが、どちらも初めて通ったように感じた。月島方面から来ていたら、そんなことはないはずなのだが…記憶とは当てにならないものである。

こうずっと歩いてくると、明らかに豊洲というのはこれまで通ってきた場所とは異質で、人の生活が後から入ってきた場所なんだなあというのがよくわかる。調べてみると、関東大震災で生じた瓦礫を埋め立ててできた土地なのだそうだ。

13:30くらいに春海橋公園に到着し、会社まで5分の距離。ここであと10分くらいはゆっくりできるなと、ひとまず腰を下ろす。晴海橋梁を遊歩道として通れるように整備していることを知る。

見上げるタワーマンションは、今はどうだかわからないけれど、大学の友達がお父さんとふたりぐらしをしていて、かつて泊まらせてもらったことがある。その時はあまりわかっていなかったけれど、会社員をしている今ならわかる。…お金持ちの家庭だ。会社にもこの辺りに住んでいる人が何人かいる。わたしとタワマン暮らしはソリが合わなさそうだけど、この辺りをのんびり散歩する人の安らかさを見ていると、1年くらいならいいかもしれないな、とも時々思う。

さあ、そろそろ出社しよう。始業予定の14:15へとだいぶ余裕を持って豊洲駅に到着。いつも使っていた、オフィスビルほぼ直結の出入り口を写真に収めた。

14. 豊洲 13:50

地下鉄有楽町線、かつてそれは葛西臨海公園かディズニーランドに行くときに乗る電車だった。
通勤電車に変わってからは、駅数が多すぎて乗っている時間が長すぎ!と辟易していたものだ。
だからこそ、最後に、歩いてよかった。8割くらい歩いたことある道だったけど、私ってかつてたくさん東京を歩いていたんだな、でもそれが東京で会社員をしている自分と繋がっていなかったな、と気づくことができた。


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