あまつばめ

好きな小説を好きなように書いています。面白いかどうかは人によりますが、私自身は気に入っ…

あまつばめ

好きな小説を好きなように書いています。面白いかどうかは人によりますが、私自身は気に入っています。➢swift.notswallow@gmail.com

マガジン

  • 一瞬で読める小説に違いない

    #一瞬で読めると#これだって小説に違いないをまとめています。サクッと読んでください。

  • ANIMALS

    動物をテーマにした読み物をまとめました。

  • ハンチ

    ハンチまとめました。

最近の記事

熊ざわさん

熊ざわさんはいつも言う。 「『熊ざわ』の『ざわ』の字は難しいほうの『ざわ』だ」 それを聞いて「ふーん」で終わらなかったやつはいない。 「ふーん」 「ふーん」 「『熊ざわ』……『ざわ』の字……『ざわ』……」 やたらざわざわ言うもんだから、いつの頃からか、友達は彼を『ふくもと』と呼ぶようになった。実は僕が知り合ったときの彼はもう『ふくもと』だった。 いろいろと聞きたいことはあったが聞かなかった。そのうち聞けばいいやと思ったからだ。そのうちがいつかなんて、まあ、どうで

    • ラマ

      「ラマってどんな動物だ?」 「なんかアルパカみたいな動物」 「アルパカってどんな動物だ?」 「なんか首の長い羊みたいな動物」 「首の長い羊ってどんな動物だ」 「もう進みようがない。後戻りするしかないだろ。アルパカみたいな動物だろ」 「逃げられないんだな」 「逃げられないんだよ」

      • 月面着陸

        今夜は月がとても大きく見えました。しかも満月で、色はオレンジ色でした。 駅からの帰り道、そんな月をなんとなく眺めていたらふいにあなたのことを思い出しました。あなたがあの月の上に立っている光景を思い浮かべました。 あなたも向こうからこっちを眺めていますか?月からも地球は大きく見えますか?地球は青いんですか?ジャンプしてみましたか?重力は6分の1なんでしたよね? まぁ、きっと、肝心なところが抜けているあなたはクレーターの一番暗い場所にでもいるんでしょ。ウサギは見えてもあなた

        • ちょっと会って、ちょっと話す。 続きはまたいつか。

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        記事

          わからない

          わからない わからないわからない わからないわからないわからない わからないからわからない わかんない わかんないわかんない わっかない わっかんない わっかないわっかんない わっかんないわっかない わっ館内稚内 わっかないわっかんないから わかんないからわっかんないからわからない わたらない

          そういう人

          恋をすると、いろんなことがどうでもよくなっちゃって、もう逆に恋とかいいかなって、私はそう思っちゃうんだ。ほんとにそう思ってるんだ。

          そういう人

          NO

          「記憶をつかさどるなんとかっていうところをスコーンと引っ叩くと、記憶があるだけスポーンと抜けて、あんなこともこんなことも、彼も彼女も、そこもあそこも、好きも嫌いもなくなっちゃうんだ」 「なくなっちゃうんだ」 「そんなわけだから思い切って、どうかひとつ」 「いいの?」 「どうかひとつ」 「本当にそこでいいの?」 「というと?」 「本当にお前のカリアゲを俺の金属バットで思いっきり何回も殴りつけていいの?」 「何回もはちょっと。あと、金属バットもちょっと」 「そっ

          スイマー

          息をする。と、  苦しくない。 息を止める。と、  苦しい。 手足を動かす。と、  進む。 静止する。と、  沈む。 もがく。と、  沈む。 息をするために、  泳ぐ。

          待ち合わせ

          鳥のやつ、雨の日でも飛びやがる。 靴の先が濡れやがる。 雨音とか。そういうのいいから。 雨粒が窓にはりつく。 風とか。そういうのいいから。 傘とか。そういうのもいいから。 長靴がない。まあ、いいか。

          思う

          お昼に寝たら昼ご飯が食べれないでしょって父と母は言うけど、眠いものは仕方ないし、ランチはおやつで補うからいいじゃんって僕はずっと思ってた。 そうやって大きくなった。それでいいって彼らにも思ってほしい。 僕はずっとそう思ってた。ずっと、ずっと。 ずっと思ってた。眠いと思ってた。 思ってた。ずっと。

          ミルク

          ――「うま」の「う」は「うし」の「う」で「うま」の「ま」は「まま」の「ま」。どっちもみるくがでるよ。 ――ミルクは馬からも出るよ。 ――うまもぎゅうにゅうがでるの? ――馬から牛乳は出ないかな。 ――なにがでるの? ――馬乳? ――ばにゅうがでるの?ままからもばにゅうがでるの? ――ママからは母乳が出るよ。 ――ぎゅうにゅうのむ。 母乳をあまり飲まなかった彼は牛乳をたくさん飲む。子馬は馬乳を飲む。妻は馬油を使う。 ――ぎゅうにゅうのむ。 僕は冷蔵庫を開け

          息子

          ――すごいすごい。すごい雨がすごい降ってる。 窓辺で息子は眠る気配もなく。

          家の近くの運河沿いにあるベンチで休んでいると、茶色い鳥が川を流れていった。 川は東から西にゆっくりと流れていた。風のない日には水面も揺れない。油絵みたいな川を鳥が流れていった。 たぶん同じ種類の鳥が流れる鳥の真上を飛んでいった。 鳥はそのうち見えなくなった。川は流れるのをやめた。

          WILL

          「それじゃあ、また会いましょう」 お互いにそう言って別れてから15年近くが過ぎた。と、ついさっき気がついた。また会おうと約束した相手とまた会ったためしがない。と、ついでに思った。 私は少し体重が増えて、少し髪の毛が少なくなった。眼鏡の度が進んだ。都会に暮らすようになって、少しお洒落になった――と言えなくもない。 私はあの人のことを覚えているけれど、あの人はどうだろう。いっそ忘れてくれていればいいのに、と思ったりも。 最後の言葉は守れない約束になってしまった。変に約束な

          向こう

          地平線にひっかかっている鹿のマークの緑色のトラクターは誰かのものだったのか、今でも誰かのものなのか。誰があんなところに持っていったのか。あんなところに誰が住んでいるのか。 夜は暗いだろうな。月も星もきれいだろうな。 景色が黄色く見えるのはとうもろこしの色なのか。とうもろこしは紫色の粒が混じった飼料用。大地は草の色。土埃は茶色。埃の色なんて見えない。 景色はゆっくりと移り変わる。僕が移動しているから。鹿のマークのトラクターはそこにあるまま。動くのか。動かないのか。あれが見

          無職

          元気に挨拶する無職と無視する無職。 歩行者用信号を守る無職と無視する無職。 「雰囲気」を「ふんいき」と読む無職と「ふいんき」と読む無職。 恋人がいる無職といない無職。 セックスする無職とオナニーしかしない無職。 私は子供たちの手本になる無職でいたい。あとセックスがしたい。