青黒フェアリー(パイオニア)調整録

パイオニア環境の青黒フェアリーの調整過程とその結果を綴っていく記事になります。

※この記事はアーカイブです。画像が入っていたところが無くなっていたりして若干見にくいですがそれでもいい方はお読みください。


挨拶

二カ月ぶりぐらいの投稿です。みやむーです。
関東で大体青黒のデッキを回しています。これを執筆している現在パイオニアが競技フォーマットから外れているので最近は店舗予選等の実績はほぼ無いですが、TLSQで上位入賞など、晴れる屋には定期的にリストを載せたりしています。PHCなる調整チームに入ったりもしています。ブログを書いたりDiscordサーバーを作ったりといった活動もしています。

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https://twitter.com/miyamuratcg

ブログ:

https://barrardgame.fc2.net/

前回同様自分で作って調整したデッキを半分メモ書きのような形で公開して備忘録としつつ、他の人々に「こんなデッキあるよ」って共有できたらなという具合で書いています。基本的に殆ど一人で作って調整しているので、ここで広く公開する事で何かインターネットの集合知によって発展していかないかなという希望もあります。

現行のデッキリスト

青黒フェアリー(~エルドレインの森)

かつての青黒フェアリー

苦花や呪文づまりのスプライトを駆使したクロックパーミッションである青黒フェアリーは、かつてのスタンダードやエクステンデッド、モダン等に存在しました。

特にモダンのものは個人的にもかなり好きなアーキタイプでしたが、モダンホライゾン2の虹色の終焉が出たのを見て完全にやる気を無くしたのを覚えています。もはや苦花は相手がほぼ触れないフィニッシャーではないのです。もっと言うと今のモダンでは2マナで置いてその後活躍するまでに時間がかかるカードって何なんだろう?という気分になってしまうので個人的にはもう使う事は無いだろうなと思っています。

ちなみにこの話は本稿の流れとは全く関係ありません。青黒フェアリーが好きだから書いただけで、完全に余談です。お前それ違うだろと言われても知りません。

エルドレインの森のフェアリー

一方パイオニアのフェアリーと言えば、部族としては以前から存在はしていますが、デッキとして部族でまとめることに意義が生じたのはエルドレインの森が発売されてからです。モダンのフェアリーとの関連性はあまり無く、実質新デッキです。

フェアリーの部族サポートカードがこのセットでプレイアブルなものからアンプレイアブルなものまで幾つか出ていますが、その中でも呪文どもりはマナ漏出の完全下位互換では無いにしろほぼ調整版と言えるカードです。しかしフェアリーがいればマナ漏出相当と、マナ漏出が許されていない現在のスタンダードやパイオニアに於いては比較的強力なカウンターと言えます。

他にも眠り呪いのフェアリーは呪文どもりをサポートするだけでなく単体で1ターン目に置けるクロックとして、待機持ちのクリーチャーのような動きをします。1マナクリーチャーとしては破格の護法2が付いているので場持ちが良いです。

そしてエルドレインの森のカードではないですが高橋優太プロがデザインしたカードであるフェアリーの黒幕が以前からいます。フェアリーマスターたる方が考えて設計されたカードだけあって使いやすく、そのカードパワーは折り紙付きです。モダン以下ではオークの弓使いに居場所を奪われたりしていますが、パイオニア以上の環境であれば十分実戦級なはずです。

パイオニアでの青黒フェアリー

エルドレインの森で登場したフェアリー関連カードの中でも、呪文どもりはパイオニアではとても魅力的な選択肢であると考えています。

そもそもパイオニアでよく使われているクロックパーミッションデッキはほぼ全て当てはまる部族をサポートするべき専用カウンター、もしくはそれに準ずるカードを持っています。スピリット系のデッキなら霊灯の罠や高尚な否定、青黒ローグなら湖での水難のようにです。

なぜなら2マナカウンターの選択肢が、部族サポートにより用いられる専用カウンターを使えない場合かき消しや検閲等を採用せざるを得なくなってしまうからだと考えています。これらは比較的カードパワーが低く、パイオニアという環境にあっては他のカードに遅れを取るカードです。その証拠に専用カウンターが無く、汎用のカウンターを用いるクロックパーミッションはパイオニアではほぼ見ないレベルで使われていません。マナ漏出のようなジェネリックで強力なカウンターがあればこの状況は変わるのでしょうか?それは分かりませんがいずれにせよ現状は厳しいものです。

こう考えると、フェアリーがいれば最低でもマナ漏出相当になる専用カウンターである呪文どもりを擁するフェアリーは、パイオニアでクロックパーミッションを成立させる可能性はあると考えました。

また、周りのカードを見ても、眠り呪いのフェアリーは砕骨の巨人の踏み付けを耐えるタフネスを持ちつつ、致命的な一押しで除去しようとしても3マナかかるのでラクドスミッドレンジ等に比較的強い1マナ域である事が考えられました。フェアリーの黒幕は(個人的な見解では、必ずしもパイオニアの環境がこのカードにとても向いている訳では無いような気もしますが)既に青黒ローグ等で採用実績があります。

加えてスタンダードに存在しない厚かましい借り手のような優秀なカードも存在しています。これらを軸にパイオニアでのフェアリーデッキを考えていくことにしました。

パイオニアでの青黒フェアリーの欠点

パイオニアでの青黒フェアリーは様々な選択肢を検討した結果、(これはパイオニアに限らずスタンダードの青黒フェアリーも同じような所があると個人的には考えていますが)デッキをフェアリーで固めるには優秀なフェアリークリーチャーが少し不足していると考えました。

眠り呪いのフェアリー、フェアリーの黒幕をベースとして、単体で優秀な厚かましい借り手を使う事まではすんなり決まりましたが、それ以外のクリーチャー選択は難航を極めました。

フェアリーデッキのクリーチャーに求めるスペックと言えば、カウンターや除去を構えながら動けるように瞬速、そして飛行のついたクリーチャーでまとめ上げたいので飛行ですが、この二つを両方備えているカードは検索したところフレンチバニラに毛が生えたようなクリーチャーが大半でした。

使うかどうか検討した中では、瞬速が無くデッキとの噛み合いが悪い、サイドボード後の引き裂く流弾で落ちる、そもそもソーサリータイミングで出す4マナなら黙示録、シェオルドレッドより良い選択である可能性が薄い等の欠点を感じた慈愛の王、タリオン、瞬速はあるもののなぜか伝説な上に効果も薄味すぎる夢見る決闘者、オビラ等がいました。

こうした問題点から、今回は柔軟にフェアリー以外の脅威を採用して青黒ミッドレンジのような形の構築で仕上げていく方針にしました。(余談ですがディミーアローグとフェアリーをハイブリッドする構築も存在します。こちらもかなりまとまりやすい組み合わせなので参考として貼っておきます)

https://www.hareruyamtg.com/ja/deck/599738/show/

また、今回のリストではフェアリーを最小限に抑えた事から、自我の流出やフェアリーの剣技のようなフェアリーを強く要求するカードの採用を諦めています。このリストは呪文どもり以外のフェアリーサポートカードを採用していないこと、また呪文どもりはフェアリーがいなくてもかき消し相当のカウンターとして使える為、必ずしもフェアリーを引けていなくてもデッキが機能不全になる事は無いだろうと考えたのです。

青黒フラッシュとの違い

今回構築した青黒フェアリーは以前パイオニア環境で長く使用していてnote記事にもしていた青黒フラッシュを使用していた時のノウハウの蓄積を流用して作っています。(このデッキと系統の近いデッキなので少し古い記事ですが見てみるといいかも知れません)

https://note.com/barrardgame/n/n65f061c00510

主な違いとしては、

・呪文どもりがある為、3マナのハードカウンターを減らす事が可能になっていて、カウンターの質が高い

・フラッシュクリーチャーを大量に採用する必要がある滑りかすれのようなカードが入っていない(呪文どもりはフェアリーが1枚も無くてもかき消し相当なので十分プレイアブル)ので、メインボードの構築やサイド後の組み換え等を柔軟に行えるし、フェアリー以外の脅威を手広く採用できる(具体的な例は後述)

・眠り呪いのフェアリーが1ターン目に置けるクロックと言う事で残りのターンを妨害に割きやすい上、軽く動きやすい

・クリーチャーの大半が飛行クロックとしてまとめられたので、雑多な地上クリーチャーを無視しても良くなった

等、デッキとして好ましい点が多く見られます。クロックが青黒フラッシュより遅い等の欠点もありますが、現在のパイオニアではこちらがクロックパーミッションを仕掛けなければいけないマッチアップ以外も多く存在しているし、構築やプレイでカバーできる範囲だと思ったのでメリットの方が多いと考えています。

メインボードの採用カード

眠り呪いのフェアリー(4枚)

何と言っても1マナで置けるクロックでありながら護法2で自らを守る事ができる点が大きいです。後半引いても余ったマナを適当に注ぎ込めばそこまで時間かからずにアンタップできるので見た目より使いやすいです。

パイオニア環境ではテンポ良くこのカードを除去できるカードはよく使われているものでは引き裂く流弾しかありません。致命的な一押し等のメインボードによく搭載されている除去は護法によってコストパフォーマンスが悪い除去になっているのでカウンター等も比較的当てやすくなります。

パワーとタフネスが3ある飛行クリーチャーである点でアグロへのブロッカーとしても高性能です。特にスピリット系のデッキに対しては、カウンターをすり抜けながら出てきて1枚で完封するポテンシャルがあります。

フェアリーの黒幕(4枚)

瞬速を持つ飛行クロックでありマナフラッド受けと相手のドローに対する牽制等、役割が多い優秀なフェアリーです。漆月魁渡を最速で置く動きとの噛み合いも良いです。

相手のターンにおけるルーティングやキャントリップ等を咎めるのにも役立ち見た目より刺さる範囲の広いカードですし、起動型能力も含めてシェオルドレッドとも相性が良いです。

勢団の銀行破り(2枚)

このカードをメインボードに用意しているのは幾つか理由があります。

①除去の多いデッキに対する対策
クリーチャーによるクロックパーミッションだけだと除去の山でコントロールしようとしてくる相手に負けてしまうので、クリーチャー除去で捌かれない脅威として置き、リソースを増やす狙いがあります。

②フェアリーの層の薄さを補う
前述した通りパイオニア環境で実戦レベルである(と判断した)フェアリーは少し少ないと思います。当初はカードパワーの劣るフェアリーを枚数確保の為に試したりしていましたが、2マナの脅威として場に置けて打ち消しとも相性の良い銀行破りを採用する方向にシフトしました。

③マナフラッド受けやサイドボード後のリソース
マナフラッドを受ける為やサイドボード後に除去コントロールにシフトする際等にもリソースを増やすカードが少しは必要なので採用しました。

厚かましい借り手(3枚)

パイオニアの過去のセットから出てくる優秀なフェアリーとしては真っ先にこのカードが名前が上がりました。サメ台風や放浪皇、鏡割りの寓話、エシカの戦車等、トークンを出してくるカードはパイオニア環境に沢山いるのでそう言ったカードを用いるデッキに強いです。逆にアグロデッキ等には弱かったりするのでサイドアウトしたり減らしたりします。

漆月魁渡(2枚)

青黒のクロックパーミッションと言えばこのカードです。

攻撃し続ける事さえできれば継続的なドローソースになる点でかなり強力です。このカードの役割も勢団の銀行破りに近い所があって、クリーチャー除去だけで捌かれない脅威でありリソース源である事で、除去を大量に用いてくる相手に簡単に勝たせない目的があります。

このカードを強く使う為に出すターンにクリーチャーが攻撃している事が理想ですが眠り呪いのフェアリーは最速で魁渡を出すと攻撃できていない事が多いので若干噛み合いが悪い所もあります。しかし3マナの脅威としてはかなり強力であり、このカードを不採用にすると押し付け要素の薄いデッキになってしまうのもあり2~3枚は必須だと考えています。

黙示録、シェオルドレッド(3枚)

このカードも他のフェアリーと方向性の違う多角的な攻め筋を実現するカードとして投入されています。火力の除去に強かったり、軽量除去で潰されにくかったり、ライフ回復を兼ねたりしています。ラクドスミッドレンジ等と同様、このカードが残ったらほぼそのまま勝ちますので、このカードを倒せるかどうかというサブゲームを仕掛ける事ができます。

また、ライフゲインとクロック両方を兼ね備えているので、コントロールプランを取る際にもアグロプランを取る際にも柔軟に使えるのが利点です。このカード以外ライフゲイン要素が無く、クリーチャーもほぼ貧弱な為顔を詰めてくるアグロ等がデッキの性質上厳しいマッチなので、そういったデッキと戦う為にも必須です。

スカラベの神(2枚)

俺の作るデッキには大体入っているこのカードですが、今回も採用しています。

パイオニア環境で最も多数派なデッキであるラクドスミッドレンジを始めとして赤や黒のデッキに強いのが主な強みです。また単純なクリーチャー除去に耐性のある脅威と言う意味で多角的な攻めを実現するのに一役買うカードでもあります。地上戦を制圧するカードとしてはシェオルドレッドに近いですが、白以外の単体除去を受け付けない点で一線を画しています。ロングゲームにおけるマナの注ぎ込み先でもあるのでこのデッキに於けるゴールとも言えます。

また、サイドボード後にコントロールプランを取る際にはシェオルドレッドとこのカードをフィニッシャーにした除去コントロールになるのでそのプランを取りやすくする為にもメインボードに置いています。自分より遅いデッキ相手には役割が落ちたりするので減らしたりサイドアウトしたりします。

思考囲い(4枚)

黒の定番カードです。あまり言う事はありません。ライフを詰めてくるデッキ相手には減らしたりしますが、サイドボード後の対策カードを的確に抜いたりする等の仕事があるので完全にサイドアウトすることは少ないです。カウンターを突破したりシェオルドレッドやスカラベの神を除去から守る為にも使ったりします。ラクドスミッドレンジ等とのそれと使い方はあまり変わりません。

致命的な一押し(3枚)

汎用的な軽量除去ですが、このデッキでは紛争は達成しづらいのでカードパワーはそこそこと言うことで、少し抑えて3枚。勢団の銀行破りで最後に出てくる宝物で紛争を達成する場合もたまにあります。

呪文どもり(4枚)

主力となるカウンター。フェアリーがいなくても十分使用に値しますし、いればマナ漏出相当になります。サイドボード後にクリーチャーを減らす場合も単なるかき消しとして引き続き運用します。

無情な行動(2枚)

このカード以外にも喉首狙い等、2マナの除去には幾つか候補がありますが、現在の環境では無情な行動が一番強いと個人的に思っています。環境次第では喉首狙いと1枚ずつ使うのもアリですが、喉首狙いは機体や奔流の機械巨人が倒せないのがデメリットです。無情な行動はサリアの副官によるカウンター等がある白単や、ネオフォームのアトラクサ等が裏目としてありますが、最近は白単は光輝王の野心家が抜けているケースが多く以前ほど効かなくもなくなってきた事や、ネオフォームは最近あまり見ないので個人的な体感では現状は無情な行動でいいような気がしています。

否認(1枚)

追加のカウンターの1枚です。この枠は方程式の経変やかき消し等、幾つか候補があったのですが、最終的にはロータスコンボに対してメインをしっかり取る為に何枚かハードカウンターがあるといいかなと思ってこのカードにしています。

提督の命令(1枚)

マイナーなカードですが、個人的には注目していて、以前から使用しているカードです。基本的には3マナの取り消しですが、クリーチャーが積極的に攻撃していくデッキなので1マナで唱えられる瞬間も頻繁にあります。ハードカウンターと言う事で否認と同じくロータスコンボ用のカウンターの枚数を確保する目的と、青白コントロール等の放浪皇を1マナで迎撃できる役割があるのでこのカードにしています。

サイドボードの採用カード

強迫(2枚)

除去を減らすべき相手に除去を減らしてサイドインする事が多いです。またシェオルやスカラベを守る為に相手がサイドインしてきた専用除去等にピンポイントで当てる為にもサイドインしたりします。

切り崩し(2枚)

雑多なアグロに対してサイドインします。なぜ致命的な一押しの4枚目は入れていないのかと言う所ですが、切り崩しにしておくとグルール機体の無謀な嵐探しやスピリットの呪文捕らえや天穹の鷲と言った3マナ2/3のようなスタッツのクリーチャーにも当たるので除去の種類を散らす為にこちらにしています。

レイ・オヴ・エンフィーブルメント(2枚)

人間を始めとした色の合うアグロや脂牙に当たるパルへリオン系のデッキに入れます。また、色が合わないアグロでも1マナのタフネス1が豊富に入っているデッキ(ゴブリン、ゾンビ等)にもサイドインします。

霊気の疾風(2枚)

色の合うデッキにはほぼサイドインします。方程式の改変を採用していないのは打ち消されない脅威を使ってくるデッキが一定数いることやこのカードにしておくと赤単等にも追加の除去として入れやすい事が理由です。

軽蔑的な一撃(2枚)

自分より重たい脅威を繰り出してくるデッキに対してサイドインします。ほぼ見た通りの使い方をするカードですが、召集クリーチャーが重たいボロス召集等にも入れます。

食肉鉤虐殺事件(3枚)

アグロ~ミッドレンジに対してサイドインします。メインボードの構成のままだと対アグロは不利が付くことが多いので、対アグロはこのカードを中心とした青黒コントロールにシフトするサイドボーディングをする事が多いです。

未認可霊柩車(2枚)

墓地対策の枠です。パルへリオン系、イゼットフェニックス、魂剥ぎ等にサイドインします。特にイゼットフェニックスはこのカードが無いと不利が付く事必至です。最近イゼットフェニックスが大きく強化されて注目株なので睨みを利かせる為に入れています。

ゲームプラン

ミッドレンジデッキなので自分より遅いデッキには自分が攻める側に立ってクロックパーミッションを仕掛け、自分より速いデッキには除去を駆使してシェオルやスカラベで蓋をするゲームプランを仕掛ける事が多いです。大抵の対戦相手に対応する札を用意しているので柔軟に対応できるはずです。

終わりに

ここまでお読みいただきありがとうございました。有料部分ではいつも通りサイドボーディングとマッチアップガイドを載せておきます。ではまた。

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