アーマード・コア6 ファイア・オブ・ルビコン 第3部「不滅のレイヴンソウル」より 「ヴェスパー・セブン・ミーツ・ニンジャ」

【しっぴつチームよりおしらせ】
このSSは大人気UNIXゲーム「ARMORED CORE 6 FIRE OF RUBICON」の致命的なネタバレが含まれています。具体的にはチャプター3以降のネタバレのため、そこまで遊んでおらずネタバレを気にされる方はブラウザバックをお願いします。しかし現在3周目をプレイ中の我々はもうネタバレなど一切気にせずSSを書いた。よって普通に公開する。わかったか。
また、SS中の描写はゲーム本編と異なる部分も多々あります。しかしそもそもニンジャは実在しないため実際のゲーム本編とは一切関係がない。いいね?
最後に、このSSは大人気Twitter(現X)小説「ニンジャスレイヤー」(Xアカウント: @njslyr)およびフロム・ソフトウェアより好評発売中のUNIXゲーム「ARMORED CORE 6 FIRE OF RUBICON」の二次創作である。興味を持った方は今すぐ両方の原作を◆しよう◆
なお我々は偶然このnoteに来てSSを書いており上記公式とはマーケティング的にも一切無関係である。


*これまでのあらすじ*
惑星ルビコン3で発生した大災害「アイビスの火」から半世紀。新資源「コーラル」を巡る戦いは激化の一途を辿っていた。アーキバス・グループ、ベイラム・インダストリーの二大メガコーポの攻勢によりルビコン解放戦線は徐々に劣勢となっていく。だがルビコン解放戦線は再び攻勢に転じるべくある作戦を実行に移そうとしていた──!

◆◆◆

ルビコン解放戦線より奪取したアーキバスの調査拠点「壁」。そこに1機のACが佇んでいる。フレームは全てアーキバス社製のパーツで構成された中量二脚で、一見するとアーキバスの関係者を思わせる。

しかし武装を見れば、両手にはベイラム社製の長射程ショットガン「ツィマーマン」が2丁、右肩にはVCPL社製のプラズマミサイル「Vvc-70VPM」が1門。左肩のウェポンハンガーにはベイラム社製パイルバンカー「アシュミ」が装着されている。

ライバル企業のベイラム社のパーツを中心に武装を採用していることからも、このACが明らかにアーキバスの手のものではないことが伺える。彼は独立傭兵であった。

彼が受けた依頼はこの調査拠点を任されたアーキバスの強化人間部隊ヴェスパー第7隊長「スウィンバーン」の暗殺である。スウィンバーンは猜疑心が強い男であり、配下に自身の周囲を監視させていた。この監視を掻い潜らなければ、スウィンバーンはたちまち姿をくらますだろう。

フレームをアーキバス製とすることで、アーキバスの拠点内における自身の存在の違和感を消している。これにより敵の警戒心をある程度低下させる効果を狙っていた。まさにこのフレームこそが彼のフーリンカザンなのである。

「スゥーッ……ハァーッ……」

コクピットの中で、その男は深く呼吸して精神を統一していた。全身をPVC製のテープで構成された装束に身を包んだ彼は静かに憩っている。これから始まるイクサは僅かな気の緩みが命取りとなる。故に、チャドー呼吸によって精神を統一し血中カラテを活性化させることが重要なのだ。

やがて沈思黙考を終えた男は、操縦桿を握りしめるとペダルを軽く踏み込む。各部スラスターからアフターバーナーが吹き出て、機体が軽く浮上し前進する。漆黒のACは闇夜の中で青いアフターバーナーを煌めかせながら滑るようにアーキバスの監視部隊の中に潜り込んだ。

アーキバスの監視部隊はクローンMTで構成されており、いずれも高性能な暗視カメラを装備している。不審な機体があれば即座にカメラに映像を収め、報告を行うことが可能だ。クローンMTたちは招かれざる客を探してカメラをコブラの首めいて動かす。と、その時である!

「イヤーッ!」「アバーッ!?」

突如どこからともなくカラテシャウトが響き渡り、クローンMTのうち1体がしめやかに爆発四散! 先刻の漆黒のACがカメラの死角から鮮やかなショットガン射撃でクローンMTを仕留めたのである! ワザマエ!

次なる獲物を見つけると、漆黒のACの背面のミサイルポッドが口を開ける! スポスポスポスポ! 4本の垂直プラズマミサイル射出! KA-BOOM! 上空でミサイル接近に気が付かぬままプラズマに焼かれクローンMTが爆発四散!

アーキバス調査拠点「壁」は今ここに殺戮の舞台となった。さながら「壁越え」の故事が如き骸の山を盛大に築き上げる漆黒のAC。見つからないことが今回のミッションの要となるのであるならば、最終的に全員殺せば良いのだ! レイヴン状況判断力が導いた結論である!

「イヤーッ!」
「「「「グワーッ!」」」」

マルチロックオンによって4体のクローンMTが次々と爆炎とプラズマによって冷凍食品めいて加熱され爆発四散! 目にも止まらぬミサイル捌きでクローンMTは監視のカメラを向ける余裕も、警戒の通信を送る時間も与えられなかったのである! ナムアミダブツ!

かくしてサーチ・アンド・デストロイを繰り返す漆黒のACによって、いつしか旧ピースシティめいてクローンMTの屍の山が積み上がる。スウィンバーンには一切察知されることなくクローンMTたちは葬られたのであった。後はスウィンバーン本人の所在を探るだけだ。

しかし、その時である!

「ドッソイオラー!!」

監視カメラを持たない四脚MTが突如として漆黒のACの前に躍り出た! 重装四脚クローンMTである! 油断ならぬ強敵だ! 漆黒のACはカラテを構え直した!

「何が来ようが同じこと! イヤーッ!!」 
「スッゾオラー! ドッソイオラー!」

スポスポスポスポ! 射出されるミサイル! だが重装四脚クローンMTは意に介さずその巨体をもって押し潰しにかかる! 漆黒のACはワンインチ距離でクイックブーストを発動! まさに一瞬のレイヴン瞬発力がもたらしたギリギリの回避である! タツジン!

「ザッケンナコラー!!」

BLAM!! BLAM!! グレネードが襲い来る! KA-BOOM!! 着弾地点で激しい爆炎と爆風! しかし漆黒のACはそれすらも回避! 反撃のショットガンのマズルフラッシュが閃く! BLAM! BLAM! 散弾が重装四脚クローンMTのバランスを着実に崩しにかかった!

キャバァーン!! 「ACSエラードスエ」

警告と共に合成マイコ音声によって重装四脚クローンMTのACSエラーが告げられる! これを好機とばかりに漆黒のACのスラスターが全開! 全荷重を乗せたケリ・キックがMTに炸裂した!!

「イヤーッ!」「アバババーッ!」

さらに垂直射出されたミサイルが着弾しプラズマが炸裂! 重装四脚クローンMTは度重なるダメージに耐えきれず爆発四散! インガオホー!

「このあたりの敵は片付いたか」
「「「グググ……ヴェスパー部隊のサンシタは姿を現さぬか」」」

漆黒のACのパイロットのニューロンに響き渡るジゴクめいた声。この凶暴なニューロンの同居人は獲物を求めて牙を剥いていた。

「情報ではこのあたりのはずであったが……」
「「「臆病風に吹かれたか……小童め……む、この気配!」」」

ジゴクめいた声が不意に注意を促し、ACパイロットはカメラセンサーを気配のする方向に向けた。次の瞬間、銃声と爆発音が遠雷のように響く。流れ弾と思しき曳光弾やミサイルが防壁の向こう側から取んできている。

瞬間、漆黒のACは飛び上がるや否や、スラスターを全て背後に向けたアサルトブーストを駆使し、銃声と爆発音の源へと飛翔する。防壁の上に立つと、遠くの状況をよく見渡すことが出来た。比較的新しい残骸が転がり、もうもうと煙を上げていた。その前に1機のACあり。

「あれがヴェスパー第7部隊隊長、スウィンバーン……AC名『ガイダンス』か」

フレームをアーキバス製のパーツで固め、脚部は四脚を選択。武装はアーキバス製のスタンバトン「VP-67EB」にファーロン製のハンドミサイル「HML-G2/P19MLT-04」、メリニット製の大型グレネードキャノン「イヤーショット」を装備。さらにアーキバス製のパルスシールド「VP-61PS」で守りを固める。

まさに敵を寄せ付けず、早期に無力化することに長けた機体である。また、滞空性能に優れた四脚でトップアタックを行うことも可能だ。油断ならぬ強敵である。

「次から次へと不法者……よくもまぁ飽きないものだ。この機体構成は解放戦線ではない……なるほど、ベイラムか。時代遅れの斜陽グループめ」

ブツブツと苛立たしげに独り言をつぶやくスウィンバーン。その時である!

「イヤーッ!」「グワーッ!?」

突如として漆黒のACがパイルバンカー・カラテを叩き込んだ! とっさの一撃にスウィンバーンは対応できずフレームに響く大ダメージ!! 決断的なアンブッシュである! ゴウランガ!!

「ドーモ、スウィンバーン=サン。レイヴンです。オヌシを殺しに来た」

威圧的にアイサツする漆黒のACの乗り手はレイヴンと名乗った! 突然の不法な行いに対して驚きと怒りを滲ませながらスウィンバーンも高圧的な態度でアイサツを返す! 

「ドーモ、レイヴン=サン。スウィンバーンです。また襲撃者か!」

イクサに先立つアイサツは神聖な儀式である。如何に相手が卑劣漢であろうとも、アイサツをされねば返さなければならない。帥父ドルマヤンの随想録にもそう記されている!

「背後から奇襲するとはなんという卑劣……! どこの雇われか知らないが、卑劣な不法者には指導が必要だ!」
「指導は不要。死にゆく者に乞う教えなどない……!」

両者はカラテを構える。スウィンバーンのハンドミサイルとレイヴンのプラズマミサイルが同時に射出され、AC同士のイクサの開始を告げた! KA-BOOM!! 着弾前に両者は弾けるようにクイックブーストで距離を取る!

スウィンバーンは的確に敵の猛攻の間隙を縫ってグレネードを叩き込みつつ、相手の足が止まったところを見計らって的確にスタンバトンを叩き込む。 ACネーム「ガイダンス」の通り、基本に忠実な戦い方を高度なワザマエの中で実現しているのだ。

だが、レイヴンのワザマエはその上を行く! グレネードを紙一重で避け、息切れを装いスタンバトンを誘い込んで回避しカウンターのショットガンを叩き込む! 密度の濃い攻防が続く中、ガイダンスのAPをレイヴンは的確に刈り取っていた!

「れ……劣勢!? この私が……!?」

スウィンバーンは信じがたい現実に目を見開く! このままでは確実に殺される! だが目の前の敵は見たところ独立傭兵だ、依頼を破棄させればあるいは! スウィンバーンの頭脳は自らのフーリンカザンで戦うことを由としたのである!

「ま、待て! 落ち着け……!」
「……?」

パルスアーマーを展開し、両手の武器を捨て、スウィンバーンは意を決して相手に呼びかけた! イクサの最中に突如交渉を持ちかけようとする敵にレイヴンは手を止める。

「「「愚かなりレイヴン!! 奴は手負いぞ! くびり殺せ!」」」
(黙れオバケめ)

ニューロンの同居人が抗議の声を上げるがこれをピシャリと黙らせるレイヴン。沈黙のままレイヴンは武器を下ろし、先を促した。

「い、いいか。私はヴェスパー第7隊長……つまり会計責任者でもあるということだ……部隊の入出金については私に管理権限がある」
「それがどうしたのだ」
「見逃してくれれば悪いようにはしない……わかるな?」

なんということだろうか! つまりは命乞いである! 対価は自らの首にかけられた報酬以上の金額! これぞヴェスパー第7隊長のフーリンカザンであった! なんたるヴェスパー判断力であろうか!

「……参考までに伝えておくが、オヌシの首にかけられた金額は20万コームだ」
「ならばこちらからは手数料等込みで27万コーム出そう……どうだ」
「……よかろう」

ALAS! レイヴンはこの取引に乗った! 独立傭兵の絶対の価値観はカネの大小で決まる! カネ次第では依頼人を裏切ることも平然と行われるのがこのマッポーのルビコン3の現状なのである! おお、ブッダ! 貴方は寝ているのですか?

「「「俗物め! なんたる恥か! カネでみすみす獲物を逃すなど弱者の戯言よ!」」」

ニューロンの同居人が声を荒げるのも意に介さず、レイヴンは取引に同意する。スウィンバーンはほっと胸を撫で下ろした。彼は賭けに勝ったのだ!

「素晴らしい、道理を弁えているようだな……!」

ここで再び余裕と弁舌の滑らかさを取り戻したスウィンバーンは高圧的な態度で語りかける。

「貴様にはスネイル閣下より褒章が下るだろう……私の指導を胸にますます励むのだぞ!」

言葉とは裏腹にそそくさとその場を後にするスウィンバーン。その行く先を見送るレイヴン。かくてここに取引は成立し、レイヴンは当初の依頼を反故にしてスウィンバーンを見逃したのである。本来の報酬は取り消しとなるだろうが、その分スウィンバーンのカネが入る。収支で見ればプラスだろう。

その時である! 再び場を殺気が満たした!

「イヤーッ!」

カラテシャウトと共に暗闇を引き裂き襲いかかる1機のAC! 鋭いサマーソルトキックがレイヴンの機体の装甲を削り取ろうとする! コワイ!

「イヤーッ! 新手か!」

レイヴンは己のレイヴン危機察知能力で殺気を感じ取るやいなやクイックブーストを発動させ弾かれたように後ろに下がる! ワン・インチ距離を凪ぐサマーソルトキックが宙を舞い、風を巻き起こした!

サマーソルトキックによるアンブッシュが失敗に終わると見るや飛び上がる襲撃者! エルカノ製の軽量二脚フレーム「フィルメーザ」を基本に構成しているが、コアは傭兵支援プログラムオールマインドが独立傭兵向けに提供するパーツ「マインドアルファ」を使用している。

武装もプラズマ機雷投射器や爆導索ミサイルといったオールマインド提供の実験パーツに加え、ベイラムのハンドガン「ハルデマン」にBAWSのバーストアサルトライフル「嵐雪」を採用。トリッキーな武装を操ることからも、彼のワザマエは推して知るべしである。

「ドーモ、レイヴン=サン。ロクモンセンです。信義により立つ任務の不履行、万死に値する!」

ロクモンセン、彼はルビコン解放戦線が擁する暗殺ニンジャであった! ニンジャの……ACパイロット!

だが、その時!

「Wasshoi!!」

突如としてレイヴンが搭乗する漆黒のACがコーラルの赤黒い不浄の炎に包まれた! これは一体如何なるジツか!?

「ヌゥーッ!?」

たじろくロクモンセン! 次の瞬間炎を振り払い現れたのは……赤黒のACであった! 肩と頭部のパーツには「忍」「殺」の決断的なショドー!

「ドーモ、ロクモンセン=サン。レイヴン改め……ニンジャスレイヤーです」

コックピット内部で、ジゴクめいた声でアイサツしながらパイロットはPVCテープの装束を破り捨てた! その下には赤黒のニンジャ装束に身を包み、センコめいて灯る赤い光を湛えた瞳を持つニンジャあり! 殺戮者のエントリーだ!

「万死に値するのはオヌシだ。ニンジャ殺すべし。慈悲はない!」

決断的なアイサツと共にレイヴン改めニンジャスレイヤーは戦闘態勢に入る! ここから先はニンジャのイクサである!

「ニンジャスレイヤーだと……! ネオサイタマの死神が何故ここに!」
「邪悪なニンジャソウルの持ち主がこの惑星ルビコン3に逃げ延びたと情報があった。故にオヌシを抹殺するためのフーリンカザンを成立させたのだ! 即ち、状況判断だ!」

ニンジャスレイヤーは不義を演じる形でロクモンセンをまんまとおびき出した! スウィンバーンとの取引は全て、この場にロクモンセンを呼び寄せ、殺すための策略だったのである! なんたるニンジャ洞察力であることか!

「おのれニンジャスレイヤー……! だが不義を働いた事実は動かぬ! 三途の渡しの六文銭、しかと受け取れい!!」
「オヌシがニンジャである以上、渡し賃はオヌシが持つべきであろう。ニンジャ殺すべし! イヤーッ!!」

かくしてニンジャのAC同士のイクサが幕を開けた! 爆導索ミサイルを撃ち込むロクモンセンのAC「シノビ」だが、ニンジャスレイヤーのAC「ローダー」もまたプラズマミサイルで応戦! ミサイルの爆炎があちこちで上がる中、シノビは接近しプラズマ機雷を駆使してムチめいて振るう!

「イヤーッ!」「グワーッ!」

回避が一瞬遅れ、ローダーはプラズマの糸に絡め取られた! 高圧電流を流され、コクピット内で苦しみに足掻くニンジャスレイヤー! ロクモンセンが油断ならぬ相手であることを改めて実感する!

「イヤーッ!」

ニンジャスレイヤーはプラズマの糸から抜け出すと、反撃とばかりに至近距離で両手のショットガンを交互に連射する! 右! BLAM! 左! BLAM! 右! BLAM! 左! BLAM!

「グワーッ!」

軽量機にとっては一発の散弾でも大ダメージである! ましてや至近でこれを食らってしまえばフレームの根幹構造にも致命的な損傷は免れ得ない! ロクモンセンのACSキャパシティが急激に限界に近づき始めていた!

「ヌゥーッ……強敵! だが一飯千金、今こそ同志ツィイーの恩義に報いる時なり! 不義にして富み、かつ貴きは浮雲のごとし……ニンジャスレイヤーよ! ルビコンの土となれい!」

崩れかけた体制を強引に持ち直すため、敢えてブリッジ体制を取った後すぐさま脚部を回転させる! カポエイラの殺人技メイアルーアジコンパッソである!

ニンジャスレイヤーはショットガンで応戦しようとするが、引き金を引いた際にカチン、と鳴る乾いた音! ウカツ! アウトオブアモーだ!

「貰った! イヤーッ!」

危うし、ニンジャスレイヤー! 死神の鎌めいて迫りくる脚部がまさにローダー、ひいてはニンジャスレイヤーの命を刈り取ろうとしていた! 

「Wasshoi!!」「ヌゥーッ!?」

ニンジャ動体視力をお持ちの読者諸兄はお気づきだろう! 凄まじい速度でショットガンを捨てた赤黒のACが両手で挟み込むように脚部を捉え、固定してしまったのだ! まさにシラハドリ・アーツの極北! ゴウランガ、おお、ゴウランガ!! 

「イヤーッ!」「グワーッ!」

極めた足を掴んでジュー・ジツの技、トモエ投げが炸裂する! 吹き飛ぶシノビ! だがそこへアサルトブーストを駆使して追いすがり、さらにチョップの連打を浴びせる!

「ACSエラードスエ」

スタッガーを告げる合成マイコ音声はしかし、金属同士がぶつかる轟音とカラテシャウトにかき消されていた!

「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」

ガシャン! 左肩部のハンガーが駆動しローダーの手にパイルバンカーを装着させた! ロクモンセンの息の根を止める最後の一撃の構えである! ナムアミダブツ!

「ハイクを詠め、ロクモンセン=サン」
「利によりて/行えば怨み多し/雇われよ……コーラルと共にあれい!」

パイルバンカーが振りかぶられ、そして叩きつけられた!

「サヨナラ!!」

ロクモンセンとそのAC、シノビは五体をバラバラに吹き飛ばされしめやかに爆発四散! インガオホー!

「スゥーッ……ハァーッ……」

ニンジャスレイヤーはチャドー呼吸法によってザンシンし、イクサの余韻で荒ぶるニューロンを鎮めた。だが、惑星ルビコン3で心休まる瞬間はない。

「御用! 御用!」

おぉ、壁の向こうより来たるはカンジ・サーチライトを携えた惑星封鎖機構のマッポMTである! 封鎖を潜り抜けて不法に侵入したニンジャスレイヤーを捕らえようと大部隊を率いていた!

「長居は無用か……!」

ニンジャスレイヤーはこれ以上のイクサはジリー・プアー(徐々に不利)と判断し、その場を撤退しルビコン3の夜闇に消える。だが、ルビコン3にニンジャがいる限り、ニンジャスレイヤーの戦いは終わらない! 走れ、ニンジャスレイヤー! 走れ!

◆◆◆

「なるほど、ネオサイタマの死神が」
「はいっ、その通りですスネイル閣下! 部下が確認し私自らも交戦しました!」

アーキバスの本拠地にて、スウィンバーンはヴェスパー隊の実権を握るヴェスパー第2隊長スネイルに事の顛末を報告していた。

「ふむ……独立傭兵として潜り込んだのであれば利用価値はありそうですね。泳がせなさい。それとヴェスパーVIII、後ほど彼に連絡を」
「はっ、承知致しました」

傍に控えていたヴェスパー第8隊長のペイターは頷く。

「ヴェスパーVII」
「ははっ!」
「貴方の働きは見事でした」
「ははっ、今後もこのヴェスパー隊のため粉骨砕身働きたく……!」

スウィンバーンの弁舌をスネイルは視線で遮った。冷たい視線であった。

「しかしヴェスパーVII、貴方は今回の任務で帯同した監視MT部隊を全滅させ、虎の子の重四脚MTすらも撃破された。さらに自らも無様に命乞いをしたと報告が上がっています。我がヴェスパー隊の品位を著しく貶める行為ですね」
「っ、そ、それは……ッ!」

スネイルは狼狽えるスウィンバーンに冷たい視線を向けたまま、ただ一言告げた。

「我がヴェスパー隊に下品な男は不要です」

傍にあったレバーを引くと、スウィンバーンの体躯は悲鳴とともに階下にある再教育センターへと落ちていった。群れなす無数のアーキ坊や達が現れるとスウィンバーンを担架に乗せて運び去る。彼はこの後きっちり自我を研修するまで部隊に復帰することはできないであろう。

再教育センターではマンゴーをもぐなどの過酷な研修を経てアーキバスへの帰属意識を高める。さらに終始研修担当のアーキ坊やたちと共に過ごすため、研修が終わればそこにはアーキバスのために戦いアーキバスのために散る企業戦士が完成するのだ。

「素晴らしい、まさに彼はこれから生まれ変わるのです……」

スネイルはメガネを右手中指で押し上げると、彼の視線の先にあるアーキ坊やのぬいぐるみを2つ同時に手に取った。そして彼はアーキ坊やのぬいぐるみと共にベッドの中へと潜り込むのであった。

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