NPB守備指標(UZR)の年齢曲線

 守備が上手いと言われる「名手」と呼ばれる選手はベテランに多い。一方で高い身体能力を活かした華麗に魅せる守備は若手選手に分があると言える。ただし、勝利につなげる上で問題なのは守備の「魅せ方」ではなく「得点を防ぐか」である。今回は年齢が与える守備指標の年齢曲線の可視化を試みる。

MLBでの先行研究

 SIS社によるDRSを用いたAging Curveによると、MLBでは守備指標は25歳のシーズンから低下を始め、30歳を超えるとさらに急激に低下する。この結果は意外と思われるかもしれない。NPBでも2012年に失策数を5に抑え名手と名高い42歳の宮本慎也を、29失策と荒々しい守備の21歳堂林翔太がUZRの上では上回って、今よりセイバーメトリクスの認知度が低い当時は論争を呼んだ。年齢が守備に与える影響は従来の想像以上に大きいようだ。

NPBのUZR年齢曲線(算出方法)

 現在、NPBにおけるゾーンデータを用いた守備指標としてはUZRがある。UZRを出してるデータ分析会社は複数あるが、今回はその中でも2014年以降のデータをwebで限定公開しているDELTA社のものを使用する。

 方法論としては前述のSISの先行研究を踏襲する。

 まず守備指標はサンプルの少なさによって値が変動しやすいことから、1年の結果ではなく2年間のトータルを1000イニングあたりのUZRに換算して使用した。サンプルには2年間のトータルで1000イニング以上、内野、外野を守った選手のみを対象とした。(先行研究では1800イニングだが球団数がMLBほど多くなく、算出の時期も最近であることから、データ数が限られるNPBの事情を考慮しサンプルの数を確保することを目的として1000イニングとした)

 また、守備位置ごとの難易度を考慮して守備位置によって補正値で調整した。ここで用いる補正値は、DELTA社がUWARの算出の際に使う補正値である。

 DELTA社のWARの補正値は、2019年の改訂で複数の守備位置を守った選手の守備位置ごとのUZRの変動を基に算出されており、今回の分析の目的に合致すると考え採用した。補正値は以下の通りである。

補正値

 最後に、補正した1000イニングあたりUZRを少ない方のイニング数で加重して平均をとった。サンプルは、2年連続で1000イニング以上守った選手のUZRの変動値のみを対象とした。例えば24-25歳のシーズンでUZR/1000を+4記録し25-26歳でUZR/1000を+2で記録した選手の場合、25→26歳の変動値は-2となる。

算出結果

 算出結果は以下の通りである。

画像2

守備指標 Aging

 MLBでの先行研究とは異なりNPBでは27歳が守備指標のピーク年齢となった。32歳を過ぎると低下の度合いが激しくなる。

 MLBの先行研究と比較するとピークが若干遅く27歳まで成長の余地を残すという結果になった。ただし、この数字をそのまま受け取れるかは慎重になったほうが良いかもしれない。前述したが、NPBではMLBと比較するとそもそもサンプル数が少なく、将来サンプルがたまった場合は、異なる結果になるかもしれないからだ。

 今回の検証では27歳がピークとなったが、将来的にサンプルが多くたまった場合にどうなるかに注目したい。

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