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[#41] Panther気に入ってます - たまには手放しで褒めてみましょうか

初出: MacPower 2003年 12月号

ついにPantherが発売になった。WWDCでプレビューを見て以来、本当に待ち遠しい日々が続いたが、これでようやくPantherの良さについて堂々と話せる日が来たわけだ。そのくらい自分では気に入っているバージョンアップである。

まず目に付くのは描画速度の速さだ。これまでのどのバージョンのMac OS Xよりも、いろいろな処理が高速化されている。これは普通に使ってみてすぐにわかるくらいだ。確かテキストのレンダリング速度がアップするということを言っていたので、それの効果が大きいのか。あとは内部的にHIView化がさらに進んだのだろうか。かなりきびきびした動きを見せてくれる。

そして、ことえりがとても賢くなっている。何の前情報も聞いていなかったので、これにはびっくりだ。今までのようにしばらく使うと馬鹿になっていくようなことも、今のところは起こっていない。最初の起動時にもたもたすることもなく、変換も速いし高精度だ。さらにMac OS Xの特徴である異字体や新JISのサポートも優れているように見える。すばらしい機能アップ、これはうれしいサプライズだ。

使ってみて想像をはるかに超えた使用感を与えてくれているのがExposéだ。この機能の説明の前には、ちょっと背景をまとめたほうがいいだろう。Mac OS Xになってアプリケレーションというレイヤーが薄くなり、違うアプリケーションのウィンドウが交互に並ぶ、というようなことができるようになった。Multi-Finderが標準になったSystem 7の時代からMacの弱点として語られてきた制限だあったのだが、それがMac OS Xではなくなったのだ。目出たいことのはずであった。

しかし、実際にウィンドウ単位で好きに並べ替えられるようになると、意外と使いづらいということが明らかになった。今まではどれか同じ種類のウィンドウをクリックすれば、アプリケーション全体が前面に出てくるので、ウィンドウを探すことが簡単にできた。つまり、適当に探すことができていたのだが、Mac OS X になるとそれができなくなり、明確に「あのウィンドウ」という意識をしないと行けなくなってしまったのだのだ。

さらに悪いことに、ウィンドウをリストアップする方法として用意されていたのは各アプリケーションの「ウィンドウ」メニューであり、それは当然、そのアプリケーションのウィンドウしかサポートしない。つまりアプリケーションをまたいでウィンドウを探す手段が用意されていなかったのだ。これではアプリケーションの垣根を取っ払ったことが、逆に迷惑なことになってしまうのも無理はない。

そして一番迷惑を被ったのはFinderだと思う。今まではデスクトップはFinderに属していたので、どこからでもデスクトップをクリックすると全部のFinderのウィンドウが前面に来た。Finderのウィンドウを小さく画面上で整理しているオレのような使い方をしていると、このデスクトップ・クリックを非常に多用することになるのだ。Mac OS Xになってからは、本当に困っていた。

そんな状況で登場した新機能Exposé。最初は見た目の派手さにびっくりするが、実はとても考えられた実用的な機能だったのだ。何がそんなに気に入っているかと言うと、前々からしつこく言っている「位置を大事にしたインターフェース」ということを考えてくれているからだ。ウィンドウが小さくなるだけでなく、ウィンドウが縮小されるまでをちゃんとアニメーションで見せているこれが大事だと思う。実はどんなに散らかっていても意外と動きというのは目を引くもので、確かあの辺にあったウィンドウ・・・・・・というあいまいな記憶でも、縮小するアニメーションのおかげで、そのウィンドウにちゃんと反応できる。これがもし、アニメーションがなかったら、それこそ小さくなったものの一覧の中から目で探さなくてはいけない。それだけの表現だったら、たぶんこんな使い勝手は実現できなかっただろう。この動きこそがExposéの真骨頂なのだと思う。

全ウインドウを隠してデスクトップを表示する機能も秀逸と言える。これなどはMac OS 9の時代からかかえてきた問題点を、ものの見事に解決してみせた。初めてAquaインターフェースが旧Mac OSのインターフェースを超えた瞬間ではないだろうか。こういうのを待っていたんだよなぁ。嬉しいなぁ。

今回のバージョンアップでは、細かいところにも気の利いた部分が多い。例えばメタル系のウィンドウでシートが出るときの動き。シートは、普通のウィンドウから出るときは、タイトルバーの下から出るので気にならないが、メタル系ではこの境目がないので、かなりカッコ悪いことになっていた。しかしPanther では、なんと一時的にシートの出るスリットが表示されて、そこからビヨンと飛び出してくる。これがいい動きをしていて気持ちいい。

あと、とても大きな変更点として、アクテティブでないウィンドウのタイトルバーが半透明でなくなったことがある。これだけはどうしても許せないことだったので、改善されてとても嬉しい。アクティブなときのタイトルバーも、縞模様に比べて今回のメタリックな感じのタイトルバーのほうが視認性も高いように思う。また1つ、よくなってくれた。ありがとう。

ま、ちょっとだけ文句を言わせてもらうと、Finderがメタルである必要性は、使ってみてもやっぱりなかったかな。Exposé中にDockが表示されるとよかったかな。タイトルバーとかスクロールバーとか、ドラッグ中につかんでいることをフィードバックしてくれないかな。メニューの半透明は必要ないんじゃないかなぁ。ラベルの復活は嬉しいんだけど、表現方法が表示モードで違うのはどうかなぁ……。あ、文句は言わないはずでしたね(笑)。すみません。

バスケ 有限会社シエスタウェア(http://saryo.org/basuke/)
珍しく褒めちぎってみましたが、どうでしょう?(笑)。いつもうるさいこと言っているんだから、よくなったときぐらいはちゃんと褒めないとね。ホント今回のバージョンアップはいい方向に進んでいますよ。環境設定の分類もわかりやすくなったし、ウィンドウ閉じるとアプリが終了するようになったし(ようやく……笑)プリンタの設定も前よりわかりやすいと思います。全体的にユーザーのことをちゃんと考えた設計になったという感じがします。この調子でがんばってくれー、アップルよ。文句がなくなったわけではないからね。ちなみに、今回の原稿は全部ことえリ+テキストエディットで書いてみました。使えるなぁ。

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