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[#14] オレに好きなキーボードを使わせろ

初出: MacPower 2001年 8月号

前回に引き続き、今回の話題もJISキーボード。「またか」と思わないでほしい。こんな話をしているのはそもそも、USキーボードのPowerBookを日本で購入できないからなのだ。買うことができれば、実はさほど問題はない。人それぞれ好きなキーボードを使えばいい。選べること。それが大事なのだ。今月は、キーボードのそんな現状を考えてみよう。

日本のApple Storeでは、デスクトップマシンを買うときにキーボードを選択できるようになった。確か昨年からだったと思うが、素晴らしいことだ。その前に、USキーボードと英語版OSがセット販売されていたが、これはちょっと方向がずれていた。USキーボードを使う人が英語版のOSを使うとは限らない。日本で販売している以上、そういう人は少数派だろう。それに、別途購入では付属のキーボードが無駄になる。つまり、ゴミになるのだ。やはり、好きなキーボードを買いたいときに選べるのがベストだ。

デスクトップマシンでUSキーボードを選択できるというのは、アップルがユーザーの要求をちゃんと把握していることを意味する。しかも追加されたサービスなのだから、この問題に対してアップルが解決の努力をしているということだ。

確実にいい方向に進んでいる。それは認めよう。しかし、PowerBookユーザーはいまだにキーボードを選べない。これが現実だ。アップルは頑張って、早急に何とかしてほしい。

この問題の1つの解決策は、米国のApple Storeで日本からも商品を購入可能にすることだ。いまの米国Apple Storeのシステムは、日本へ品物を送ることができないだけでなく、そもそも日本のクレジットカードを受け付けないようになっている。だから、米国に住む知人に住所を借りてそこに送ってもらうように注文しても、精算のところではねられてしまう [*1] のだ。これは、とてもばかげた制限だと思う。「なんで日本に商品を送らないんだ!」と言っているのではない。買おうとしているのに、どうして日本のカードだとダメなんだ?海外でカードで買い物をして、日本のカードが使えないなんて言われたことはないぞ。しかも昔は、米国のAppleStoreでも日本のカードが使えた。先代のiBookはそうやって買った [*2] のだ。インターネットにおける課税の問題などが難しいということはわからなくはないが、顧客側から見れば明らかに時代に逆行している。何とかしてほしい。

もっとも、本質的な解決策はやはり日本でもUSキーボードのPowerBookが購入できるようになることだ。なぜ買えないのだろうか?PowerBookで取り付けが一番簡単なパーツだぞ。AirMacカードを装着するよりもよっぽど手軽で、メモリーを追加するついでにでもできることだぞ。いったいなぜなんだろう?こればかりは、納得できる理由が見つからない。

納得できないといえばもう1つ、とても大きなものがある。なぜJISキーボードなのか?正確には、なぜアップルは日本ではJISキーボードを採用しないと売れないと思っているのだろうか?ということだ。

昔からよく耳に入ってくる話なのだが、バソコンがJISキーボードになっていないと学校や企業が買ってくれないということらしい。だが、どうにも納得がいかない。いや、学校とかが確かに言いそうなことだし、現実にそういうこともあるんだろうが、じゃあアップルはそれだけ学校に販売しているのか?

実際に売れているのか?ついこの間までは企業がMacを大量に購入したくてもアップルにそのための窓口さえない状態だったと聞いているぞ。そんな状態なのに、JISキーボードを付属することが日本市場でMacを売るための企業努力だとはとても思えない。主要な顧客はコンシューマーだろう。世界中でも、コンシューマーがこれほどMacを買う市場はほかにはない。アップルにはそこを少し考えてほしい。

例えば、ある日PowerBookがUSキーボレードになっていたとする。果たして、量販店での売れ行きに影響があるだろうか?恐らくないと思う。最近Macを買う人に多いのが、マシン本体のデザイン重視派だ。そんな人たちがキーボードのかな表記を必要とするだろうか?デザイン的にすっきりとしたUSキーボードのほうが好みなのではないか?キートップにかな表記があると、ごちちゃごちゃして汚く感じるのはオレだけじゃないだろう。USキーボードだと、すっきりして気持ちいいはずだ。

いきなりUSキーボードにしてしまうことに抵抗があるのならば、記号の配列はJISキレーボードと同じにして、キートップからかな表記をなくしたらどうだろうか?ある調査では、パソコンを使う約9割の人が日本語をローマ字入力しているそうだ。ということは、少なくともキートップのかなは不要ということになる。かな表記付きキーボードは、それこそオプションにすればいいのだ。もちろん量販店では両方用意するのは難しいだろうから、それはApple Storeの特典ということにすればいい。うん、それがいい。

こんな非現実的なことを考えるより、Apple StoreでホントのUSキーボードを買えるようにするほうがよっぽど簡単だろうとは思う。でもいい機会だから、一度みんなにちゃんと考えてほしい。自分にとって最高のキーボードは何か?プログラマーのオレにとってはUSキーボードだ。あなたにとっては何?キートップに印刷されているひらがなは本当に必要なのか?来月は、JISキーボードの存在そのものに疑問の目を向けてみる。うーん、恨みはホントに深いなぁ。

バスケ (http://www.saryo.org/basuke/)シエスタウェア代表取締役
佐野元春のライブに行ってきた。高校時代からのファンなんだけど、ライブは初めて。とにかく楽しめた。感動した。思い出の曲として色あせ始めていた曲「SOMEDAY」が、オレの中に力強いロックンロールとして蘇ってきたことがとてもうれしいぞ。

[*1] 精算のところではねられてしまう正確には、しばらくしてから「日本のカードは使えないよ」というお知らせが来る。おかげで注文は出遅れ。悔しい。

[*2] iBookはそうやって買った 米国版を買うと日本語のOSが手に入らないという目に遭う。しかし、OS Xを入手すればマルチリンガルで使えるぞ。

編集・三村晋一


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