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『西村賢太旧蔵資料目録』とドクターマーチン

 私のような素人が、こういう本、いや、資料を手にするのは初めてだ。
 サイズはA4である。

 パラパラとページを繰ると、藤澤清造田中英光の名前が多いのは当然として、ドストエフスキーが多いのにビックリする。カタカナだから目立ち易いのもあるのだろうが、「ドストイェーエフスキー」とか「ドストエフスキイ」という古めかしい表記の本も多い。

 カバーの青は、けんけんが30代の藤澤清造研究者だった頃、石川近代文学館へ行っていた時分に着ていた青いワイシャツをイメージしてもらったのじゃないかしらん?

 私の知っている西村さんは、いつも青いワイシャツにグレーのスーツ姿で、ジュラルミンのアタッシェケースを手にしていた。石川近代文学館主催の、「文学散歩―七尾」にも、同じ姿で駆け付けてくれた。汗だくの西村さんに学芸員が上着とネクタイを取るように勧めたところ「師の生誕地でありまして・・・文学関係者の皆様の前ですから・・・」と言われたとか。常に誠実で、優しく礼儀正しい青年であった。

『西村賢太旧蔵資料目録』に寄せて 石川近代文学館元館長 井口哲郎

 「愛用品」というページもあって、「革靴 1点 ドクターマーチン製 箱付」と載っていた。
 西村賢太はヨーカドーで服を買う漢だ。

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