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Rocket Manの話でもしよう。

言わずと知れた1970年代を駆け抜けたロックスター、エルトン・ジョンの自伝的映画である。あえて「1970年代」と書いたが、80年代にも、そして依存症更生から復帰しての90年代も一線で活躍した(97年のダイアナ妃追悼に歌った「Candle in the wind 1977」はとくに有名)。だが、やはり彼のロックスターとしての神髄は、1970~1976に集約されていると言っても過言ではあるまい。
この映画は、彼の幼年時代から90年代の復活までを2時間強にまとめあげたミュージカルで、稀代のロックスターという仮面を余儀なくされた孤独な人間の姿をかなり忠実に描いている良品である。とはいってもクロニクルとして視聴するよりはむしろ、ヒット曲の制作時期との整合性などにはあまりこだわらず、それよりもそれぞれの歌詞やメロディをテーマとして彼の人生の岐路や場面に重ね合わせたミュージカルとして観るのが正しい姿勢だといえよう。エルトン本人が監修に関わっていることからも、トーピンの綴る歌詞にいかに彼が陶酔し大事にしていることが鮮明にわかる。
同じロックミュージシャン映画ということで当然引き合いに出されている昨年の大ヒット作『Bohemian Rhapsody』がライブ映画だったのに対し、本作はむしろオフステージにこそ注目したつくりで、彼と彼のおかれた環境を描くのにも成功している。要するに物語としてより深みを感じるということだ。
衣装やパフォーマンスの派手さで見過ごされがちだが、彼の楽曲、とくにメロディーの美しさは非常に高いレベルである。プレミュージシャン段階に時間をかけることで、彼の本質部分であるそれを再確認させてくれたという意味でも良い映画だった。

彼の楽曲の中でも一番好きな曲名が冠された映画だから、これは行くしかあるまいと思い劇場に足を運んだファーストデイ、個人的に一番印象に残ったのは、最初期の名曲「Your Song」をつくるところだった。盟友となるバーニー・トーピンが詩を記したノートの紙片を譜面台に置いて、一音一音確かめながら徐々に形づくられていく作曲のシーンは、奇跡の誕生に共に立ち会う感動を与えてくれる。

パフォーマーとしての彼を知らないひとでも耳にしたことがある(かもしれない)名曲佳曲が、とても効果的に配されているところも見もの。あと、1970年代初頭の西海岸ヒッピームーブメントなんかも。

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