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台風19号から東京を守った水の守護神。「環七地下巨大調整池」の驚異の威力

1958年に伊豆・東京を直撃して1189人もの死者行方不明者を出した狩野川台風。
勢力、コースともにまさにその再来ともいうべき台風19号が昨日首都圏を直撃しました。
朝から首都圏の鉄道は次々と計画運休に入り、店舗や会社も軒並みシャッターを下ろす中、多くの人たちが自宅で不安な1日を送ったのではないかとおもいます。

果たして首都圏では箱根の観測史上最大となる24時間降雨量1000㎜オーバーという豪雨を始め、ここ数十年では最大クラスの大雨に見舞われ、同時に風速30メートル近い暴風が東京を吹き荒れました。
この災害で多くの河川で越水があり、又20人近い方々が亡くなるなどの被害が出ました。

しかし、過去最悪クラスの災害の可能性が警告されてきたにも関わらず、幸にして狩野川台風のような甚大な災害となることは防げことができました。
実はそこには、2度と狩野川台風の悲劇は繰り返さぬまいと長い時間と多くのの資金を投じた巨大プロジェクトの威力があったのです。

狩野川台風から始まった東京の都市治水対策

狩野川台風が甚大な被害をもたらしたのは、利根川や荒川のような大規模河川ではなく、都内最大の流域面積を持つ神田川水系をはじめとする都内の中小河川が氾濫、決壊し市街地に大量の水が押し寄せたからです。
この事態の再来を防ぐ為、昭和40年代から隅田川以西の中小河川のうち46河川324㎞を対象に、1時間50ミリの集中豪雨にも耐えうる治水システムを都内に張り巡らせてきたのです。

しかし昨今の気候の温暖化によって集中豪雨はその規模、頻度とも多くなり、1時間50ミリの前提の施設では東京を守ることができなくなりつつありました。
そこで新たに完成したのが、2008年に第一期工事が完成し、現在も拡張工事が続けられている「神田川・環状7号線地下調整池」なのです。

台風19号でも河川を守り切った超巨大地下調整池

この巨大な施設は、皆さんお馴染みの環状7号線の地下にあります。
その実態は内径12.5m、全長4.5kmという超巨大トンネル。

通常は閉鎖されていますが、一度豪雨ともなれば神田川水系で度々氾濫を起こしてきた問題児、善福寺川、神田川、妙正寺川の三箇所の取水口が開き、大量の水を地下へと流し込むのです。
その貯蔵量たるや何と54万立方メートル!
これは実に300万人以上の人たちが1日で使う水量に匹敵する量です。

今回の台風19号でもその威力は遺憾なく発揮され、取水が開始されてから、神田川水系の水位は大きく下がり、過去例のないほどの豪雨となった今回でもついに堤防を守り切りました。

もしかつての台風や集中豪雨のように堤防が決壊し、水が市街地に押し寄せてきだとしたらどうでしょう?
恐らく流域の秋葉原あたりから水道橋〜飯田橋〜高田馬場〜鷺ノ宮や西荻窪辺りまで、都内のとてつもない広範囲が甚大な水害に遭うことになったはずです。

日頃はじっとしていて、災害の時にムックリと目覚めて大活躍する環状7号線地下貯水池は、まさに、東京の水の守護神ともいうべき存在だと言えましょう。

さてここでは一番大きい環七地下調整池を取り上げましたが、それだけではありません。
実は東京にはこうした施設が網の目のように張り巡らさせています。
その数は10河川、24ヶ所。
合計195万7700㎥もの貯留量をもち、多くの治水ネットワークと協力して今回の台風19号から街を護ったのです。

進化する守護神。完成すれば世界最大の治水施設に。

しかしこうした東京の守護神達の戦いはまだ終わりません。
温暖化の進行で、さらに巨大なスーパー台風が東京を直撃する可能性は否定できないからです。
現在進行している環七地下調整池の拡張工事では、明治通りの下に作られた白子川貯水池ら5河川5カ所の調整池と合体させ、何と総延長13キロ、一箇所で130万㎥もの貯蔵量を持ち、時間100㎜の集中豪雨にも耐えられるようにするのだそうです。
完成すれば勿論世界最大の施設になります。

日本は世界の自然災害の約1割が集中する、災害国家です。
普通の国ならおそらくその都度何千何万という人命が失われるであろう場所にも関わらず、こうして私たちが安心して暮らせるのは、こうして陽に陰に日本を護る存在があってのことなのですね。