見出し画像

”8話”話

何の8話だって?「ふたりはプリキュア」第8話「プリキュア解散! ぶっちゃけ早すぎ!?」の話に決まっとる。

第1話~第12話:2018年10月13日(土)00:00~10月19日(金)23:59
第13話~第24話:2018年10月20日(土)00:00~10月26日(金)23:59
第25話~第36話:2018年10月27日(土)00:00~11月02日(金)23:59
第37話~第49話:2018年11月03日(土)00:00~11月09日(金)23:59

そういうわけで、昨日から配信が始まっている。

正直言うと今からプリキュア全部観ろという話をしたいのは山々なのだが、忙しい現代人に対して全50話近い14年前の女児向けアニメを4週間で全部観ろとはなかなか言えないんだよな……
そこで、本来ここだけでも観てっていう勧め文句はあまり好きじゃないんだが、「ふたりはプリキュア」というアニメーション作品における”8話”は、それはもうとんでもない意味合いがあり、歴史に残るレベルで力の入った伝説とでも言うべき回を、まずは一度観てほしいという話をする。よろしく。

ますプリキュアありき、正反対の二人

「ふたりはプリキュア」と言うだけあって、プリキュアは”二人”であり、これは二人による物語である。

そして、意外かもしれないが、プリキュアに変身する”二人”は物語の開始時点ではほとんど接点のない二人であった。同じ学校に通う、同じクラスの二人ではあるものの、正反対の二人はそれぞれの人生の中でなんら接点を持たず、交わることはなかったのだ。
二人の関係性はまずプリキュアありき。「光の園」が闇に滅ぼされてこっちの世界に逃げてきたちっこいマスコット二匹が偶然、美墨なぎさ雪城ほのかのところに転がり込んだだけで、事実第1話におけるプリキュア初変身もなりゆきによるものだった。
お互いを全く知らなかった二人が、偶然選ばれし戦士プリキュアとして戦う羽目になり、そこで初めて美墨なぎさと雪城ほのかの交流が始まるのである。

二人は最初友達でもなんでもない。ここがミソなんだよな。ラクロス部のエースで勉強は苦手な活発タイプの美墨なぎさ、科学部のエースで勉強も学年トップな控えめタイプの雪城ほのか。本来交わることのなかった正反対の二人がじっくりと絆を育む過程はプリキュア無印の醍醐味と言ってもいい。4クール使って話を運ぶアニメはこういう醸成される関係性を描く上で有利である。
で、ふたりはプリキュア第8話とは、ついになぎさとほのかの関係性が”友達”にまで進展する超重要回。ここまでお互いの呼び名が「美墨さん」「雪城さん」であった二人が、この8話を境に「なぎさ」「ほのか」と呼び合う間柄になる。1クールアニメならもう残り1/4しかないような時間を使ってゆっくりと歩み寄った二人の関係性がついに進展する瞬間に立ち会う。そういう回である。Google先生が「ふたりは」と打っただけで「ふたりはプリキュア 8話」をサジェストしてくるレベルで歴史に残る話なのだ。

雨降って……

ラクロスの試合の日以来、なぎさとほのかの関係はギクシャクしっぱなし。なぎさはどうやら、藤村に想いを寄せているらしい…そのことに気づいたほのかは、なぎさを藤村に紹介。だが、良かれと思って言った一言に、なぎさは激怒。「あなたなんてプリキュアってだけで、友達でもなんでもないんだから!」と言い放つ。

以上8話のあらすじ。そう、喧嘩回である。「あなたなんてプリキュアってだけで、友達でもなんでもないんだから!」ですよ。凄くない?
ひょんなことから二人の関係に完全にヒビが入り、正反対の二人がお互い悶々としながら、「仲直りしたい」、「あの娘と友達になりたい」という思いを積もらせ、最終的に互いに気持ちを正直にぶつけあうことで無二の親友になる過程を描く(なんなら次の第9話ラストの次回予告でなぎさが「親友の誕生日」というフレーズを出している辺りお察しください)。
幼い頃に仲いい友達と喧嘩して一回冷戦みたいな状態になったことのある人間(おれ)には身にしみてよくわかる、ぎこちない独特の空気感が巧みな演出によって、凄まじい質感でもって描かれる。お互い気持ちに正直になれずに明後日を向いた会話をする二人。あるキッカケから正面切ってお互いの気持ちをぶつけ合ったことでモヤモヤが晴れ、ラストの端的な仲直りのシーンで感情がストンと落ちるカタルシス。実に、実によくできた回である。

演出の教科書か???

当然物語の上でも極めて重要なこの回は、作画レイアウト演出どれを取ってもよくできており、もう目に見えてやたら力が入っている。画の構図からしてもうことごとく良い。いや凄いから。騙されたと思って。

なんなら全部上げたいのだが、もう二人を立たせる構図一つとってもこういう良いレイアウトがバンバン出てきて気持ちがいい。

影/光
藤村の幼馴染であるほのかに何かを言い出し倦ねるなぎさの消極性。

仲違い直後。
拒絶されたほのかが下手の方に歩き去る余白が用意されていて……

一方ラストの仲直りシーン。こうして並べると目に見えて明るい。
中央に並ぶ二人。泣くがな。

キャ、キャラクターを立たせる構図が良すぎる……

また、光と影の使い方が本当に印象に残る回で、演出の教科書めいて人物にやたら影が差す。

ほのかに対する嫉妬。

決定的な拒絶。

「あなたなんてプリキュアってだけで、友達でもなんでもないんだから!」
直後のほのかのアップ。
通り過ぎる列車の轟音。

悩んでるなら相談してよね、と持ちかける「友達」から
光が差してなぎさを照らす。
ほのかは影の中。

仲直りのキッカケとなる一言を切り出すほのか。
不安がる内心。

ウ~~~~~~~~~~~ン良すぎる……………………

あとはまぁ、小道具までもが実にいい仕事をしているぞっていう。

祖母から「あのお友達」と言われたのがなぎさのことだと気づけなかったほのか→なぎさとはもう「友達」……?という投じられた気づきが紅茶の水面に波紋となって表れる→二人の関係性を前へと進めたいほのかの内心に応じるように赤から青に変わる信号機(発進する車の音付き)。この流れ……う、美しすぎる……
直後のなぎさ側の内面描写の後には黃→赤になる信号機に救急車のサイレンの音がセットになって描かれ、その後も再びなぎさとセットで赤の歩行者用信号機が映り込む(ほのかが来た瞬間青になる)懇切丁寧演出。恋愛にまつわる不安によって前に進めないなぎさとほのかのすれ違いなんだよな~
今回、普段は積極的ななぎさがめちゃくちゃ奥手で、前進を望む普段は控えめなほのかっていう逆転した構図が本当によく描かれている。小道具にしろ、差す影にしろ。

上で触れたけど「あなたなんてプリキュアってだけで、友達でもなんでもないんだから!」の瞬間、その衝撃を表すかのようにプァーーーーーーーーン!!!!!って列車の轟音が入って来たりだとか、あるいは仲直りのキッカケを探るためにおずおずと会話を切り出すなぎさ、それを拒絶するほのかと共に3回に渡って描かれるベクトルを持ったモチーフ(画面手前を一方向に横切る生徒、パスを出すも撥ねつけられるバレーボール、すれ違って床掃除をする生徒)であったり、とにもかくにもどれを、どのシーンをとって見ても演出がわかりやすく、それでいてきめ細かい。

それらの細やかな積み重ねと声優さんの熱演が、ラストの「なぎさ」「ほのか」呼びに向かって収束していく流れの美しさたるや。詳細はもう自分の目で確かめていただきたいんですけど、喧嘩中の二人が喧嘩しながらプリキュアとなって戦闘に突入するくだり、最高。人間一度はそこのゆかなさんの演技を見てから死にたいもんだよな。本気やぞ。

金曜まで

人類が8話を観るべき理由は分かったかな???わかったならすぐに8話のリンクを踏むんだよ。わからないなら8話のリンクを踏んで自分で確かめよう。

配信は金曜までだから……~10月19日(金)23:59までだから……いやこの後も28話とか42話とかなぎさとほのかの関係性がどえらいことになる回は山程あるんだが、とにもかくにもまずは8話なんですよ。8話が関係性の出発点だから。一回8話観て、それで引っかかるところがあったなら1話から観てみたらいいんじゃないですかね……

じゃあそういうことで……8話ですよ、8話ね。
そういう感じで……お願いしますよ……本当にさ……ハイ……

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?