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ラバーダック・デバッグの応用

 前々回、生成系AIを使った発想支援の方法を書いた。自分の書いた考えを他人の言葉のようにして見直すのにAIを使おうというものである。しかし、この方法自体は実はそれほど新しいものではない。他人との協同が自分の考えの整理につながるという事自体はすでに知見としてあるのだが、そんな理屈を飛び越えてエンジニアの間で使われている方法として「ラバーダック・デバッグ」がある。エンジニアのそばに置いてある人形に話しかけることで悩みや躓きを克服するというものだ。人形を話し相手にすることで自分の考えが整理される。

似たような方法は伊集院光さんも提案している。

伊集院さんは人形ではなく、「尊敬する人の墓石」としている。用いる対象は人形でなくても良しとしている分、自由度が高い。その代わり、「尊敬する人」という条件がついている。「尊敬する人がいいそうなことを想像することで自分の中のベストな答えを引き出す」というのが狙いだ。

 しかし、「尊敬する人」でなければならないのだろうか?実はさらに類似の方法を用いていた人がいる。ウォルト・ディズニーである。ウォルト・ディズニーは自分の中に3人のキャラクターを生み出して脳内会議の相談役とした。夢想家のミッキーにやりたいことを相談し、分析家のドレイクに実現手段を相談し、悲観的なドナルドにリスクを相談する。相談する相手は尊敬する相手どころか自分の創作キャラである。しかし、ウォルト・ディズニーほどの人物ともなると、自らが創作であってもキャラが立っていて対話相手として十分機能するのだろう。また、3人ものキャラクターを同時に扱うのも大変そうだが、それぞれに役割分担が明確に決められている点は理にかなっている。何も相談する相手は一人に、状況に応じて使い分けてもいいというわけだ。

 以前の記事でChatGPTに他の人物になったつもりで自らの文章を言い換えさせる方法を提案したが、人物を複数用意して使い分けることもChatGPTになら簡単にできる。視点や役割を変えてChatGPTと相談してみるのもよいだろう。





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