唐突に「逃げ恥」と「けもなれ」を見た話

一人暮らしを始めてからはや数か月が経つが、買わないと思っていたテレビを買った。部屋が静かすぎてむなしくなって買ってしまった。テレビがあればあるで生活感が出て悪くないとも思う。

初めて点けたとき、「逃げ恥」の再放送をやっていた。リアルタイムで全く乗り切れていなかったが、「ガッキーかわええええ」というどうにも安直な衝動に駆られて、1話から見直すことにした。今の時代、思い立てば無料かちょっと課金すると見ることができる。文明よありがとう。

ということで今回はガッキーの可愛さに初めてやられた男が衝動的に見たガッキー×野木亜紀子の2作「逃げるは恥だが役に立つ」「獣になれない私たち」を衝動的に見た感想を書いてみたいと思う。日本のドラマを文章にするのは初めてですが、気長にどうぞ。ちなみにドラマのストーリーにはあまり触れませんのでご了承ください。

この2作、共通して主題になっているのは「感情・本能」と「理性・知性」のはざまで揺れる人間です。どちらの作品でも、多少のキャラクターの違いはあれど、ガッキーが演じる主人公は後者に重きを据える人物。「逃げ恥」では、とにかく誰かの役に立ちたいと思いながら、効率性を目指す25歳の職なし女性。「けもなれ」では誰からも好かれながら自分の幸せを見つけられずにいるアラサーOL。そして、どちらも自分の感情をむき出したいと悩み、出せば出すで周囲の人間との関係に悩む、ざっくりと言うとそんな感じ。

私ははっきり言って「自分の好きなように生きなよ」とか「自分にうそをつくなよ」とかそういった趣旨の言葉が好きじゃない。お前の好き勝手でどれだけ周りの人間が迷惑して、世の中にも悪影響が出ると思ってるんだと感じます。この2作はそこのポイントを決して押しつけがましくなく、うまく「問題」として視聴者に提示していたと思います。あくまで考える余地を与える形で。

押しつけがましい作品は苦手だ。「こうあるべき」「こうするべき」といった考えは、二律背反なのでそこに自由は存在しない。強い押しつけは抑圧をもたらす。その点、「逃げ恥」も「けもなれ」も最終的な答えは明示していない。答えを出す最後の余地を視聴者に託している。ドラマに限らず音楽や映画など、最近は受け手を見くびった作品が多い気がします。特にここ日本では。そういった点で、まずこの作品どっぷりつかることができた。

話が少しそれてしまったので本題に戻すと、この2作に共通する「感情・本能」と「理性・知性」はどちらも大切だ。どちらかがあればいいわけではないし、どっちかが偉いわけでもない。要は言い換えるならば「自分を大切にする」と「他人を思いやる」ことの両立なのだ。両作品で出てくる格差社会やジェンダー問題、福島の原発、ハラスメントなどの社会問題をうまく絡めながら、個人としての社会に訴えている点もうまいなあと感心してしまう。

平易な言葉だが人は一人では生きてゆけない。周りには誰にだって誰かがいる。好きな奴も嫌いな奴も。それが故に自発的でないしがらみに縛られて生きている。会社や結婚はそれが「契約」という形ではっきりと示される。もちろん文言として見えない形でも私たちを縛るものもある。両作では、そのしがらみがきつければ逃げればいいと言う。同時に、大切な誰かのためにはその枠を超えることもいとわない。これこそが、最も大切なテーマであったのではと思う。従来の結婚の価値観に縛られなくていい、女性は結婚して子供を産むことが全てではない、同性愛でも構わない。反対に、自分の好きな人たちのためなら残業する、業務上必要のない気づかいをする、相手の好意を受け止める。前者が自分を大切にするということなら、後者は他人を思いやるということだ。こういう観点で見ると、ガッキーだけじゃないいろんなキャラクターがこれを実践しようとしていたことがわかるのではないだろうか。

そして、これを実践しようとすると必ず困難に直面する、悩む、くじける、傷つく。感情を大切にするときも、誰かを思いやるときも、ハードルがある。なぜなら自分でコントロールできるのは自分の言動だけで周りの人間の、暮らす環境も、住む国も社会も自分ではコントロールできない。それでいいと思う。そうやって自分の感情を押し殺さず、でもむき出しにはせず、知性と理性をもって誰かを想い、苦悩して成長する。この繰り返しなんだなと強く感じました。これが大切なんだと。これが全ての解決にはならないかもしれないが、全員が自分の本能のままに生きたら、あるいは全員が本能を殺して誰かを思って生きたら、衝突や抑圧にさいなまれる世界になる。だからこそたとえ傷つこうが、身を削ろうが、「感情」と「理性」の両輪で生きてゆくしかないのだと。

ざっと、2作通じて感じたのはこんなとこです。これ以外にもいろんな観点から語れる作品なので是非皆さん観てそれぞれにいろんなことを感じてほしいです。

生きづらい世の中と言われて久しいですが、それが故にこのような作品が生まれてるのだとも思います。世の中にはいろんな人がいますから、そんなことを少しでも思いながら、周りの大切な人間を忘れない。自分自身を決して押し殺さないように。でも、本能を垂れ流さないように。懸命に生きたい。

ガッキーかわいい。


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