薬局BCPとは ーその4ー

今回は、BCP策定の流れとして、BCPの構成と初動対応計画、災害対策本部計画をお話しします。対象リスクは地震としておきます。

BCPの構成

BCPの構成は4つの計画から出来ています。地震発生直後に取るべき行動の「初動対応計画」、本格的な情報収集や対策の検討と指示命令するための「災害対策本部計画」、救護所へ薬剤師を派遣するための「救護所支援計画」、そして優先して継続・再開する事業(業務)の「事業継続計画」になります。BCPを考えるためのポイントとしては、最悪の被害想定をして、その事前対策と行動計画を検討する事です。事前対策とは平時にできる対策であり、行動計画は地震発生後の行動になります。この事前対策と行動計画を予め検討することが重要となります。

初動対応計画の概要

初動対応計画とは、地震発生直後に社員と来局している患者の身の安全を守り、安否確認と初期の被害状況確認を予め取り決めておく計画になります。先ず薬局内で身の安全確保をする場合、どこが一番危険な場所になるか知る必要があります。実は、皆さんが普段仕事をしている調剤室が一番危険な場所なのです。既に気が付いている方も多いと思いますが、薬品棚がいくつもあり、キャスターの付いている自動分包機や複合機が設置されており、地震の揺れで棚は倒壊し、キャスターの付いている自動分包機や複合機は走り回るのです。その事前対策としては、身の安全を守るためには、その棚類と自動分包機、複合機の固定が必要になります。キャスターを止める器具も今はありますので検索してみてください。次に待合室はどうでしょうか?OTC陳列用の棚、ウォーターサーバー、太陽の日差しがサンサンと入るような大きな窓に自動ドア等がどこの薬局にもあると思いますが、地震発生で棚とウォーターサーバーは調剤室同様に倒れ、大きな窓ガラスは全てが割れて、自動ドアは開かなくなります。その事前対策は全てを固定し、窓ガラスには飛散防止フィルムを貼るしかありません。ここまで対策できるとケガをする可能性は低くなります。

次に行動計画はどうでしょうか?揺れを感じた場合、どう行動しますか?前回お話ししたように机の下に潜りますか?でも調剤室に机はほとんどありません。だって立ち仕事ですから。そんな立ち仕事の方々の身の安全確保方法は、揺れを感じたら安全な場所へ避難するという事になります。揺れを感じたら調剤室の入り口付近までゆっくり歩いて移動してください。慌てて動き始めると何かにぶつかってケガをしたり、他の社員や待合室にいる患者さんも慌ててしまいます。服薬指導中だったり、レジ打ちをしている社員は患者さんに声掛けしながら自動ドアを開けるようにすることも必要です。また、建物の築年数や構造も事前に確認してください。倒壊するのか一部損壊だけで済むのか、それともビクともしない建物なのかで行動計画は変わってきます。倒壊や一部破損する可能性がある建物であれば、揺れを感じた場合、薬局の外に出ることが一番安全となります。

揺れが収まって落ち着いてきたら、周囲にケガ人がいないか、近隣で火災は発生していないかの確認が必要です。もしケガ人がいる場合、応急処置をしてください。薬剤師ですから応急処置は出来ると信じていますが、もし忘れた方は近隣の消防署へ応急処置の講義を受けるようにしてください。その後は安否確認です。安否確認ツールはたくさんあります。複数選択して平時から使用できるように訓練してください。有償の安否確認ツールや災害時伝言ダイヤル(171)も有効です。

災害対策本部計画の概要

災害対策本部というと仰々しいイメージですが、災害対策本部計画は複数店舗経営している薬局では必須で、単店舗経営の薬局でも、その活動内容を認識していると災害時に有効だと考えます。

災害対策本部計画は、地震発生後に発生する全ての不測の事態に対して意思決定し、重要関係先との連携等をする平時には存在しない活動になります。そこで、事前対策として「立ち上げ・解散の基準」、「設置場所」、「役割分担」を検討し、行動計画は「地震発生後、立ち上げ基準に照らした災害本部の設置、役割分担に沿った活動の開始」となります。

立ち上げの基準は、「震度5弱以上の地震が発生した場合、または調剤業務に支障を来す恐れがある場合」とする薬局が多いです。震度を明確にすることで全社員が認識しやすくなります。解散基準も予め決めておかないといつの間にか対策本部がなくなっていたでは困りますので、全ての業務が稼働した場合とした方が良いと考えます。

次に、災害対策本部の設置場所は、休憩室でも広めの待合室でも良いと思いますが、地震で被災しない場所が前提になります。ただし、災害対策本部が万一被災しても他の場所が確保できるように設置場所の候補を3番目まで決めておきます。複数店舗経営している場合、第1候補は本店休憩室、第2候補に本店待合室、第3候補を別店舗休憩室というように設定をお勧めします。併せて、災害対策本部に必要な備品(照明、携帯ラジオ、通信機器、指示命令が記載できるホワイトボードまたは大きめの記録用紙、筆記道具等)も準備しておき、災害対策本部の設置が決まったら準備します。

災害対策本部の活動内容は、情報収集(安否確認、店舗内外とインフラの被害状況)を実施し、重要関係先との連携も始め、収集した情報を元に様々な不測の事態に対して意思決定をする事になります。社長が不在またはケガをする場合も想定し、災害対策本部長の代行順位も第3位まで決定しておきます。重要関係先として、近隣医療機関、地域薬剤師会、医薬品卸、システム会社等になります。その重要関係先と地震発生後に連絡を取り合いそれぞれの被災状況と活動再開の見通し等の確認ができると安心です。

BCP策定は、薬局の間取りと築年数や社員数、来局する患者数や立地等でこの2つの計画は大きく変わってきますが、最悪の被害想定をしてその事前対策と行動計画を予め検討することと、代替手段(ツール等)は第3位まで検討することが重要なポイントとなります。また、可能であれば検討する際、全社員参加してもらうとその場で情報共有もできますし、色々な意見が出ますのでお勧めです。また参加した社員からは「この薬局で良かった」「いざというとき安心」という感想がでると思います。次回は、BCPの核になる事業継続計画のポイントをお話ししますので、お楽しみにしてください。

あとがき

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