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Nontitle HOJOJO 補助金アプリは成功するか?


はじめに

さて、最近話題になったSUANさんのツイートで知りましたけど、NontitleチャンネルというYoutubeがあるようで、補助金がテーマだったので、のぞいてみました。

多少なりとも補助金の支援をした立場から、事業ピッチを分析してみたいと思います。


意気込み

まず出だしのリーダーからの意気込み。
この時点でピッチの勝負という意味ではレッドに勝負あった感がありますが、大事なのは事業の中身。


チームリーダーの会社

中身に入る前に、リーダーのもーりーさんが代表(たぶんオーナーでしょう)を務める会社はNKKソリューションズ
事業再構築補助金やものづくり補助金も結構件数こなしている会社の代表者のよう。補助金支援については相応の知識があるのは間違いない。

全体の採択率も厳しかった第11回は、nontitleに出ていてリソースを避けなかったからかやや厳しい結果に…。


出資される事業(会社)は?

まずHOJOJO事業を行う会社はNKKソリューションズの子会社として設立(グループ内の新設法人)されるのか、メンバー3人個人の共同出資なのか、株主構成は不明。

そこに、結論を言うと3000万が追加出資がされる。投資家側の出資比率はどうなるのでしょう?具体的なところは番組内ではなかったかな。


HOJOJOの事業内容

それでは本編を見ていきましょう。
HOJOJOの事業内容は、補助金、助成金の総合案内プラットフォーム。AIが教えてくれる補助金窓口。

似たような補助金・助成金のポータルサイトといえば、
補助金ポータル 
スマート補助金
助成金なう
などが有名ですよね。

これらと違う点は、事業者ではない「個人向け」の補助金などにも注力するとしているところです。
(ただし、これはユーザー数は集まるものの、マネタイズは難しいと思うので、最終的な売上、利益はやはり事業者(法人)向けの大型補助金の紹介料が主である他の補助金ポータルサイトと同じところに落ち着くと思われます)。

HOJOJOではAIデジタルヒューマンを採用とのことだが、これだけでは本当にすごいのか、現時点ですごさが伝わってこない。

株式会社リニューアルストアのAIと似たようなものなのではないか…。

そして、会社名やURLを入力するだけで、情報をWEBから自動で収集してぴったりの補助金を提案してくれる。
といっても、それもどれほどのものか、ヒカルさんの会社ででてくる補助金の例が事業承継引継補助金と事業再構築補助金というメジャー補助金では、AIのスゴさがちょっと伝わりづらかったかな。

HOJOJOの会員向け有料プラン

そして980円の有料プランの機能は3つ
①AIサポートによる申請書作成支援
②AIによる申請書類の不備チェック
③スケジュール管理

①はどこまでの補助金に対応するのか?
小規模事業者持続化補助金など、メジャーな補助金いくつかなら対応している既存サービスはある。ただし、個人向けの細かいものに対応しようとすると、やはり人間が公募要領等をすべて理解したうえで、AIが答える回答を用意する必要がある。工数的に対象者(ニーズ)が小さい補助金まではどうやっても手が回らず、カバーできないだろう。

②の不備チェックも、補助金毎に様式がバラバラな中で、どのようにチェックするのか?この書類はあるか程度のチェックであれば、あまり意味があるとも思えず、書類の中身をチェックできれるサポートがあればいいが、そこまでのサービスにはならないだろう。
これについては、後の質疑応答で、不備を目視でチェックするという説明もあった。どこまでやるかだけど、目視で(要は人間が)チェックするというのは、採算ベースに乗りにくくなるし、それでミスがあった場合の補償なども考えると、かなり難しいサービスだと感じる。

③スケジュール管理も、人が行う補助金コンサルと同水準(近しい水準)のスケジュール管理、進捗管理とフォローアップ(尻たたき)ができるかというと、それは難しいでしょう。
という正直な感想はあるが、実際のサービス水準には期待したい!


HOJOJOの特徴

そしてHOJOJOの特徴
①情報の鮮度・網羅性 常に最新の情報を漏れなくお届け
②簡単さ・手軽さ シンプルなデザインと専門用語の解説

いずれも、他の補助金ポータルサイトでも似たようなことは言っている気がする内容。特段、モックの画面を見ても、そこまでの凄さは伝わってこない。特に、ややこしい補助金なので、シンプルだからいいとも限らないしね。


HOJOJOの業績目標

そして注目の業績目標。

2024年4月に公式LINEスタートで、すぐに開発に着手。2024年7月にサービスローンチ。

そうなると、初年度は、2025年7月期か?

2025年7月期:売上2億、営業利益3000万(営業利益率15%)
2027年7月期:売上5億、営業利益3億(営業利益率60%)
2029年7月期:売上10億、営業利益5億(営業利益率50%)

と、高営業利益率で有名なM&A総研もびっくりの利益率です。

そして、これがコンサバ(保守的)な数字というのですからすごい自信。

5年後に営業利益率50%に達するという説明があるも、その前の3年後に60%に達しているので、数字の見せ方としては、売上5億、営業利益2億(営業利益率40%)で良かったんじゃないかな…なんて細かい指摘してみたり。

でも、もーりーさんはたしかに補助金の実績は相応にあるけど、この数年の補助金バブル時代が良かったのであって、今後の補助金冬の時代で、新たなサービスの成功が間違いないと言い切るのであれば、もう少し説明が欲しかったかな。

気になるもの補助4点

そして一番引っかかったのがこちら。

結論を先に言うと
①もの補助の2024年度(~2025年3月)は終了しているが…
②もの補助は事前着手不可のはずが…
③補助金をすぐに配当原資とすると表現してしまうことの違和感…
④想定通りの業績だと、収益納付規定に引っかかり、即補助金返還も…
という4点


次回のものづくり補助金で750万の受給を目指すというところ。

このあたり補助金のプロであるもーりーさんは知っているはずだが、今年度のものづくり補助金は2024年3月27日締切の18次公募で終了の予定。
今年度終了(2025年3月頃)までは、もう公募が予定されていない(補助金支給スケジュールの緩和や補正予算があれば追加があるかもしれないが…)。

初年度が2025年7月だとすると、それまでにものづくり補助金に採択され、補助金を受け取れるかと言うと、かなり不確定(というか現時点で見込むことは不可能)。
なにかインパクトがあることを織り交ぜたかったんだろうけど、これを言ってしまって良かったのか、後々、そもそも、もの補助の申請するできませんでしたと言うことになった場合、補助金のプロとして投資家からの信用を落とすことにもつながりかねないが、果たしてどうなのか…。

さらに、もの補助は、事業再構築補助金と異なり、事前着手が認められていない。そうであれば、今後申請するもの補助(19次公募~)で、2024年4月から開発するHOJOJOの開発コスト(システム開発費)を補助対象にはできない。

よって、既にもの補助の今年度分は締切&事前着手認められていないということから、16次公募以前に採択されていない限り、補助金の受給は難しいと思うのだが、何か秘策はあるのだろうか…。
(ただし、機能の大幅な追加等、2025年以降に予定する追加開発部分をもの補助の対象とすることは、投資内容=開発内容によっては可能性としてはありえる)

そして、お金に色はないけれど、補助金を配当の原資にして、すぐに払い戻しちゃうよというところも、補助金の趣旨的にはいかがなものかと…。
質疑応答を聞く限り、松田社長以外、多くの投資家の方もこのあたりのことはあまり理解はされていなさそうだが。

その他、投資家が100%株式を持つわけでもないのに、補助金受領想定額750万全額を投資家にだけ配当するようなことが可能なのか、質疑応答で突っ込みが入っていたが、明確には答えられなかったので、やはり、この「もの補助とります」はピッチ用のネタで深い議論はできていなかったのかなと推測。

そして最後に、補助金を使った事業で儲かったのなら、補助金を返してねという収益納付というルールがものづくり補助金にはあります。

仮にどうにかして初年度にものづくり補助金を受給できたとしても、想定通りの営業利益が出た場合、補助金の大部分(もしかしたら全額)を初年度から収益納付として国に返還する義務が生じるかもしれません。

仮にプレゼン通り750万円を現金配当として社外に流出させるのに加え、収益納付で750万を国に返還すると、成長投資に必要な資金が不足することにもなりかねないかもしれませんね。


質疑応答 業績計画の確からしさ

質疑応答で気になったのは、キャッシュポイントの詳細。

①アプリ内広告(無料ユーザーには広告を表示)
②アプリの有料会員(@980円/月)
③大型補助金の専門家への案件紹介料 @300,000円(専門家の想定フィー150万×20%)
の3つのキャッシュポイントがあるが、売上比率で①が25%、②も25%、③が50%の割合(売上10億達成時)。

5年後の想定では、
①無料会員が5万人。
②有料会員が無料会員の20%なので1万人。
③案件紹介料に結び付く件数が、②の20%なので2000人。

ここで、私なら、5万人のユーザーのうち、個人と法人(含む個人事業主)の割合をどう考えているか質問したいところ。
コンセプトがシンプル、簡易で、アプリベースでCPA1000円となると、その大半は個人会員(一般の消費者)ではないだろうか。
もしくは、個人会員に近い個人事業主等の属性で、大型補助金を活用出来たり、ある程度、自社内に補助金事務を担当できるレベルの人材がいる法人会員の割合はかなり少ないと予想される。
特にそのような法人会員であれば、なんらかの士業と既にコネクションがあり、わざわざHOJOJOに頼らずとも良いケースが多いからね。

この法人会員数が少ないという想定に立てば、特に③の案件紹介料で大きな誤算が生じる可能性が高い。


10億達成時の売上割合でいうと、
①が2.5億(10億×25%)、②も2.5億(同)、③が5億(10億×50%)なので、
①の無料広告で2.5億まで行くかは未知数
②は@980円×1万人×12ヶ月=1.2億なので、未達?
③は@30万×2000人6億で、こちらは予定超過。

上記の②については、北の達人の木下社長が正しい指摘をされていた。
2.5億の売上を確保するためには、2.1万人が【12ヶ月間】、980円を払い続ける必要がある。1万人(無料会員の20%)では計算上足りない。

が、さらに【12ヶ月間】と言うのも曲者で、毎月補助金を申請するユーザーはいないため、一定期間(1~3ヵ月)で有料会員から離脱することも考えれば、20万とか30万の無料会員が必要になるのでは?とも思うが、これをしようとすると、集客のための広告費が莫大になる。ここの疑問は解消されなかったところが、数字(理詰め)で事業をされている木下社長がRedに投票しなかった理由でもあるかな(最後には500万出しちゃってたけど)。


もう1点、③についても、HOJOJOが30万の紹介料(専門家が150万のフィー)をもらえる案件が年間2000件あれば、たしかに計算上は売上6億となる。

しかし、この年間2000件は紹介ベースの数字ではない。【採択ベース】の数字が必要だ。

この2000件、案件を紹介すればいいわけではない。30万の紹介料は専門家(士業等)が補助金採択時にもらえる成功報酬が原資であるため、案件が採択されなければ発生しないのが通常。

では、直近の事業再構築補助金の採択率はと言うと26.4%、ものづくり補助金の採択率は48.8%程度。
前提として40%の採択率とした場合、2000件の採択のためには5000件の紹介が必要になる。

5000件の紹介(実際の専門家が支援した補助金への申請)があって、採択率40%で、2000件の採択。

さて、この数字をどう見るか。

10億達成時の無料会員数の前提は5万人。
1000万円級の大型補助金に応募できる法人会員の割合は、もちろんどの属性をメインターゲットとして集客するかによるが、ユーザー数達成重視でいくなら多くとも10%程度がいいところではないか。
つまり5万人×10%=5000社。

そうなると、先ほどの計算だと、法人会員5000社のすべてが、1000万円級の大型補助金にHOJOJO経由で紹介された専門家を通じて申請する必要がある。やはり、数字としては非常に強い(難しい)数字という肌感になる。


さらに言えば、5年後にそれほどの大型補助金があるのか問題も見逃せない。

ここ数年、コロナ禍では事業再構築補助金を中心に補助金バブルと呼ばれていた。そして、コロナが去るとともに、補助金も確実に縮小されつつある。

事業再構築補助金は、そもそも国の有識者からは廃止が提言されており、直近の第11回は採択率26%と過去最低に沈んだ。
ものづくり補助金は比較的採択率は安定し5割前後を保っているが、足元の第18次などは、申請要件がかなり厳格化され、従来応募できた事業者が要件を満たせず、申請を見送る事例も多いと聞く。そして当然、来年度継続されるかは全く保証がない。

このほかに有望なのは、大型の省エネ系補助金だが、それらにはしっかりと既存の士業やエネルギー関連コンサル会社が食い込んでおり、信頼性や支援能力という面からも、HOJOJO経由で専門家を紹介し、採択される可能性はかなり見込薄な感じを受ける。

以上から、売上、利益の中核を担う大型補助金の案件紹介の数字の確からしさがかなり揺らいでくる。
今後、アプリ等の開発を行いつつ、この辺りの収益モデルの精度を高めていく、または適切なピボットをする必要がでてくるだろう。


結局どうするか?

個人的には、10分のピッチと質疑応答しか見ていないが、現在描いている事業モデルがそのまま進み、業績計画値までのスケールする可能性はかなり低いと思う。

もちろん、
夢を追いかけることは素晴らしい。
「あきらめることをあきらめる」いい言葉だ。
誰もが挑戦できる世の中を当たり前にできるよう、ぜひ頑張ってほしい。

では、大型補助金自体がコロナ禍をピークに大きく減少し、今後も増える見込みが立たないかつ、当該マーケットは強力なライバルがひしめいている状況下、どうすればいいか。

そして投資家の立場だったらどう考えるか?

まず、今回のアプリ(HOJOJO)事業はNKKソリューションズのひとつの事業部として行ったうえで、投資(出資)はNKKソリューションズに対して行うことが投資家として回収、リターンを考えるのであればいいと思う。

なぜか?
大型補助金の案件がゼロにならない前提だが、5年後の想定件数2000件の10%、200件しか実際には案件が取れなかったとしよう。

200件×採択率40%=採択件数80件 紹介料@30万×80件=2400万。
ほぼ粗利ではあるが、HOJOJOの投資家としては、物足りない数字かもしれない。

ただ、仮にNKKソリューションズの事業部として行った場合どうなるか?
採択件数は80件、採択報酬は@150万なので、売上は1.2億。
もちろん自社(NKKソリューションズ)で申請支援する場合は、数名のコンサルタントを雇用または業務委託等行う必要があるが、それでも十分大きな利益を得ることが可能だ。
ここの売上、利益を取り込むことで、投資家としては投資回収の可能性、リターンを高めることが可能だ。

HOJOJOとNKKを分離させると、HOJOJOは広告費も多額に投下した結果、あまり儲からず、HOJOJOで集めた法人会員を成功報酬型(NKKはノーリスク)でNKKに優先的に紹介することで、NKKは集客コストをかけずに、優良案件をゲットでき、大きな利益を上げられる可能性が高い。

そして、収益の中心を法人の案件紹介から、個人に方向転換することだ。
もちろん、法人向けも行うが、多分想定通りにはいかない。

先ほど書いた通り、ライバルが強力、優良な法人になればなるほど、既に誰かが関与しており、アプリで入り込む余地は乏しい。

であれば、個人を中心とした会員をベースとして、会員から収益を上げるのではなく、補助金を活用した商品を販売する側から収益を上げる方に舵を切るのはどうだろう。

補助金業界の王、ライトアップのJsaasストア個人版に近いイメージだ。
本当にビジネスになるかはわからないが、ひとつの方向性として、企業広告+紹介時(成約時)のキックバックによる収益獲得という路線もありかもしれない。

以上、長々と書いてきたが、とても面白い番組だったし、挑戦された2社とメンバーのさらなる飛躍を願ってやまない。


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