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「いや、今の彼女は違うんすよ」と不良のほぼ100%が言うのです。

 結婚は夢見るものだ。恋愛のさなかにいるときは。

 だから恋愛中の人が「この人と結婚したい」と考えるのは決して不自然なことではない。

 だけど、中学生や高校生がそれを現実的に考えているかというと、そうではないと思う。文字通り「いつか」であって、決して「今」ではない。

 ところが、不良にとってはそういうものでもないようである。

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 僕が日ごろ接する不良の半分以上は「カノジョ」がいる。大体高校1~2年生の年頃だから、彼女がいても別におかしくはないのだが、その割合は、やっぱり健全な高校生よりは少し高い気がする。

 もっと驚くことは、その「カノジョ持ち」のほぼ100%が、性的な関係を持っていること。

 やっぱり健全な高校生たちと比べると、割合としては多い気がする。

 ま、その是非はまた別の話だ。

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 ともあれ、僕の周りにはカノジョ持ちの不良がたくさんいる。彼らにその関係を尋ねると、ほぼ100%がこう言う。

 「結婚しようと思ってます。今年中に一緒に住みます」

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 彼らにとって結婚は「いつか」ではなく「今」自分の中に現実的なプランとして在るものらしい。僕はこれが不思議でしょうがない。

 「現実的に考えている」と言っても、彼らの「現実的」は「いつかではなく今」という一点だけで、金銭的なことも、結婚後の生活のことも何一つ具体的ではない。

 健全な高校生たちが目の前のパートナーとの結婚を「いつか」と考えているのは、現実味を欠いているのではなく、むしろ不良たちよりも現実的に自分の人生や今後のことを考えているからだ。

 部活やバイト、進学、就職などなど。ぼんやりと思い描く自分の将来を、今の自分の状況と照らし合わせてきちんと見つめているからこそ、「今結婚する」なんてことがいかに現実味がないかをわかっている。

 不良にはそれがない。

 これまでに部活も続けられず、学校の授業にもついていけず、アルバイトすらまともに続かなかったにも関わらず「カノジョのため」という理屈だけで、結婚して家を建てて、幸せな生活が送れると思い込んで平気でそれを口にする。頭の中は5歳児の女の子よりもお花畑だ。

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 彼らはわかっていない。恋愛が常に「過去最高」を更新し続けるものだということを。今の自分には社会人としての実力がないということを。やる気の問題ではなく自分の資質として、不良という生き方しかできていなかったということを。

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 両親が離婚している者がほとんどだ。兄弟が腹違い、父違いなんてこともしょっちゅうだ。そういう生い立ちのせいだろうか、彼らは微笑みあう絵に描いたような夫婦生活に憧れている。

 今の自分のパートナーが、過去のカノジョよりも良く感じるのは、恋愛の性質として当然のことなのに「特別」と感じていることを、「運命」だと思っている。

 現実から目を背け、学力も体力も忍耐力もいらない世界へ自分から飛び込んだことを忘れ、不良の世界でそれなりに生きてこれたことで「俺でも社会で生きていける」と勘違いしていることに気付いていない。

 だからすぐに「結婚する」と言う。

 だからいつも言ってやる。

 お前が「彼女と結婚して子どもが欲しい」って言ってるのは、二人で笑顔で赤ちゃん抱いている瞬間をイメージしてるだけだろって。

 結婚だの子どもだの家立てるだのは、てめぇのケツをてめぇでふけるようになってから言えって。

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 忠告に耳を貸さず、自分の今の恋愛が特別だと信じて疑わず、そのパートナーとそのまま結婚した者のほぼ100%が、すぐに離婚している。

 次の非行少年候補のできあがりだ。

 これを、負の連鎖という。

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