「自己責任論」にとどめを刺した子どものひとことを紹介します《時事社会・自給自足》
この3連休、子どもといっしょに、ちょこちょことネットニュースを見てました。
そのなかに、こんな記事がありました。TOKYO MX の 2019.7.13 20:04配信の記事です。
60歳の25%が貯蓄100万円以下…「老後2,000万円問題」格差浮き彫りに
「60歳の25%が貯蓄100万円以下」と訴えるこのタイトル、かなりショックです。記事内にはこうありました。
PGF生命が行った、今年還暦を迎える男女2,000人を対象の貯蓄額(配偶者がいる場合は夫婦2人分)調査によると、4人に1人(24.7%)が貯蓄額100万円未満という結果に。「3,000~5,000万円未満」が8.7%、「1億円以上」が8.1%など、平均すると2,956万円となり、格差が浮き彫りとなりました。
※一部、太字にしました。
政府の統計ではないし、還暦の人限定で調査しているので、「4人に1人が貯蓄額100万円未満」という数字をあっさりと鵜呑みにはできません。
ですが、看過し得ない割合のお年寄り世帯が、満足な貯金もなく老後を迎えるのは確かだ、という日本の現実がありありと見えてきます。
こんなふうに貯金がないお年寄りって、けっこう多いみたいだけど、そんなお年寄りたちに対して、「若いころ真面目に働いたり、貯金したりしなかったからこうなった。ダメ人間だったのだから、自業自得だ」と知らん顔するのが「自己責任論」なわけ……と子どもに教えていたら、子どもが冷静にこう指摘しました。
4分の1もの人がダメ人間やったら、
とっくに日本、終わっちゅうんじゃない?
……ぐぬううぅぅぅぅぅぅぅゥゥゥゥ……
そ、そ、そ、……そうだよな……
……おまえ、なかなか鋭いな……ほんまに中2かっ!?
まあ、「4分の1」という数字がどこまで確実か、はおいとくとしても、よくぞ気がついたものです。
一瞬、「ほんまに中2か!?」とびびりましたが、脳が大人になってきた中2だからこそ、
自己責任論者が「ダメ人間」と分類する人の割合が多いわりには、いまのところ日本の社会は壊滅してない
と現実との整合性がとれないことに気がついたわけで。
そんな子どものひとことに「ま、負けた〜……」とタジタジしながら、お母さんもいろいろ考えます。
たしかに、宅急便のドライバーさんとか、スーパーのトイレの清掃員さんとか、末端の労働者にいたるまで、くそがつくほど真面目にキチンとした仕事をしてますよね、日本って。
日本人って、海外から見たらやりすぎに見えるくらいきっちりやってるらしいから、世界的水準で見たら、「自業自得と言われてもかばってあげられないくらいめちゃくちゃ不真面目な人」なんて、実はごくごく少ないんじゃないでしょうか?
ついでに言っちゃうと、「自己責任論」が好きな人は「日本人は世界でいちばん勤勉」みたいな優越感にひたるのも好きそうな気がします。
仮に「日本人は世界でいちばん勤勉」なのが本当のことだしたら、「自己責任論的には自業自得とされてる人たち」も世界的水準で見たらかなり勤勉な部類、ってことになりそうです。
自己責任をとらないといけないほどの「ダメ人間度」の世界的水準はどこなのか……自己責任論自体は好きになれませんが、こういうテーマなら追求するに値します。ちょっと興味がひかれます。
※追記
《日経ビジネス》で見つけた記事です。参考にどうぞ。
「海外からも揶揄される貧しき長寿国ニッポン」
河合薫(2019.08.07)
それに、いま現在、ロストジェネレーションは、正社員になれないことや低賃金、貯金ができないことに悩みまくっているわけですが、これが自己責任の自業自得なのなら、この世代は「大学を出た瞬間から使えないバカばっかりだったし、いまもそう」ということになります。
だけど、「使えない社員」という怨嗟はむしろ、正社員で給与も高いバブル世代に向けられていることが多いです。逆に、ロスジェネの派遣社員がいなくなると会社が回らなくなる、という声の方こそよく見かけます。
自己責任論者のみなさんは、このへんの整合性をどうとるんだろう?……というのは素朴に疑問です。
少ない賃金でも真面目に働く人たちに支えられてこの国がまわってきたし、今もまわっていることを、「自己責任」と無視するのは、ほんとうに失礼なことだと思います。
しかも、そんな人たちの賃金が少ないのは、そもそも、政府が最低賃金をまともな生活が成り立たないくらい低い水準に抑え続けてきたせいだと思うのですよね。
……と、こんな感じで考えてみると。
「自己責任論」って、さして根拠も一貫性もないし、その人がその時の気分で口にしてるだけなんじゃないか?という気がしてきます(まあ、五百蔵が書いてることも、しかとした根拠があるわけでないふわふわしたものなので、あまりえらそうには言えません)。
だけど、自己責任論の好きな人は、五百蔵がつらつら書いたことに「そうは言っても……」と逐一反論してきて、現実に基づいた子どものとどめのひとことに対しても、もっともらしくあーだこーだ言うだろうし、なんだかんだ言ってけっきょくは譲らなかった、ということになるだけで終わりそうです。
だって、自己責任論の本当の目的は、
私は弱者や困ってる人を社会的に支援するなんて、
まっぴらごめんです。
むしろ、社会的に処罰さたらスカッとするし!
という本音をごまかし、いかにも、「弱いアンタや困ってるアンタが悪い」と思い込ませることなのですから。
「なぜ、弱者や困窮者が発生するのか?」という根本的なところに迫る気はないのですから。
そして人によっては、その本音に気がついていなかったりするし、逆に「私だって助けてほしいのに、ズルいよ!」というSOSの捻れた発露であったりするのでしょう。
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年金については、さらに、このような記事も見つけました。京都新聞の 2019.7.13 10:20配信の記事です。
少ない年金と「人生100年」 74歳、求職活動の風景
とのタイトルどおり、74歳の女性が、
年金頼みの1人暮らしが続く。2カ月に1度、介護保険料が天引きされると手元に残るのは5万2千円。
※一部、太字にしました。
……な暮らしなものだから、すこしでも稼ごうとして、
求人情報誌で見つけた清掃のパートに応募したが、「その年で立ちっぱなしはしんどいやろう」と門前払い。調理や介護などさまざまな職を探すが、最近は年齢ではじかれてばかりだ。
と、こんなふうに、働いて自助努力しようにも、ままならない。
しかも、夫が自死したあと、飲食店を引き継いで、ふたりの子供を育て上げたけど、50歳になる前に体調を崩し、店をたたんだ、というから、人一倍の苦労をされてきたようです。記事内には、「自業自得の自己責任」的な要素は見当たりませんでした。
ただあえて言うなら、年金のことについては無頓着だったようです。
しかし、そこを突いてまで「自己責任」と言い張る人がいたら、人間としてどうかな、と正直に思います。
こんなふうに、実際にもうすでに、心細い状態で暮らしているお年寄りがいる。
うちも多分、老後はそうなる。
そんな現状に対して、実効的な政策を打ち出している政党はどこか?
と、せっかく参議院選挙期間中なので、子どもに問いかけてみました。
だって、うちの子どもも、あと5年もしたら選挙にいけます。
いまから政党選択の練習をしておかねば!
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だけど。
これはぜひ、こんどの選挙で投票できる、大人のみなさんにこそ考えてほしいと思います。
「老後2000万円問題」から噴出した年金問題でしたが、思った以上に社会全体のことに通じています。この間、私自身がいろいろ考えてみて、そう結論せざるを得ませんでした。
年金のことを解決しようと考えれば考えるほど、
「老後にむけて2000万円も貯金できそうにない現役世代の暮らしをどう底支えするか?」
「現役世代が積極的に負担に耐えようと思える年金制度はどんなものか?どんな社会的条件が必要なのか?」
という、自分たち現役世代の「今」の問題となって返ってきました。
いますでに年が寄っている人たちのために、
いつか年寄りとなる自分たちのために、
そして、最終的には、
子どもたちが大人になったときに「日本はいい国だな」と思えるように、
年金をはじめとして、どんな社会制度を作り、残していくのか?
自己責任論を是とする人も非とする人も、「20年後、30年後、子どもたちが大人になり、社会の中核となったときのために」という視点からなら協調しあえるんじゃないでしょうか。
「老後2000万円問題」は、終わった話題ではありません。
むしろ、よりよい社会を目指していくための導火線に、私たちがしていくんです。
あなたの1票は、そのための1票です。
いま、病気で家にいるので、長い記事がかけてます。 だけど、収入がありません。お金をもらえると、すこし元気になります。 健康になって仕事を始めたら、収入には困りませんが、ものを書く余裕がなくなるかと思うと、ふくざつな心境です。