新月
新月を見てみたい。
唐突に思った。
10月に入ってすぐの日。
爪の先みたいな繊月が夜空を漂っていた。
まだ地表近くはオレンジ色、
空に夜を混ぜ込んでいくように。
月は細いほどその姿を際立たせる。
夜空を照らすのではなく、夜に芯を与える。
夜は磨かれていく。
ちりちりと透き通っていく。
それは夜光虫に似ている。
光は陰を形づくる。
海は、
夜は、
光に磨き上げられて暗く輝く。
それは例えば月自身もそう。
磨き上げられた糸みたいな月光に、
月の隠された部分が照らされる。
月は欠けてはいない。
二日目の月が丸く輝くのなら、
新月も輝くのか。
暗く、黒く、
凝集した夜は沈んだ太陽の真上で輝くのか。
新月を見てみたい。
夜が輝くところを見てみたい。
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