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絶罪殺機アンタゴニアス 第一部 #17

  目次

「アタシ自身の手で青き血脈を縊り殺せるんなら喜んでそうしているんだけどねぇ、ま、そのための下準備くらいは終わらせときたいものさね」
「具体的にどう〈法務院〉を仕留めるんだ。彼らは食料生産を独占している。武力云々関係なく、打倒は不可能だろう」
「そこはそれ、ちゃあんとプランはあるよ。まだボケる気はないんでね。だが、これ以上は教えられない。知ったらお前、殺さにゃならなくなるからねえ」
「絶罪殺機の繰り手を前に、ずいぶんな大言壮語だね」
「で? 〈原罪兵〉狩りに協力するのかい? しないのかい?」
 アーカロトは。
 この老婆の人品そのものについては、「相容れぬ」という思いしか抱くことができない。
 だが――その計画だけは、利用価値があると感じていた。罪業依存社会の宿痾たる「殺人がなくば文明を維持できない」矛盾を、解消とまではいかずとも軽減しうる可能性を秘めていた。うまくすれば、アーカロト自身のプランに大いに資するものとなりうる。現存人類には、もう少し力を付けてもらわなくてはならないのだ。
「いいよ。わかった。あなたの気宇壮大な野望に、少しだけ手を貸そう。罪業変換機関の並列接続に成功したら、繰り手について知っていることをすべてしゃべってもらう」
「いいとも。契約成立だ」
「僕はアーカロト・ニココペク。あなたの名前は?」
「アタシは……そうさね、今はギドと名乗っている」
「よろしく、ギド」
「おっと、ウチにいるつもりならアタシのことはママと呼びな」
「趣味の悪い冗談だな。鳥肌が立ったよ」
「本気だクソガキ。呼ばないと殺す」
「断固として断る。そもそも僕の方が年上だ」
「はッ! 人生の九割九分九里眠りこけてた輩がでかい口をたたくじゃないか。まぁいい。ウチの掟を破ろうってんなら条件がある」
「何か」
 ギドは眉をしかめ、親指で横を指した。
「あんたの連れをいい加減黙らせてくれ。うるさいったらないよ」
「連れ、だと?」
「さっき聞いてたろうがよ。あんたの近くで眠りこけてやがったお嬢さんさ。目を覚ましてからこっち、膝を抱えてめそめそめそめそ、いいかげん撃ち殺してやろうかと思ってたところだよ」
 アーカロトは、思ったよりも危うい橋を渡っていたことに気づいた。
「すぐに会いたい。案内してくれ」

【続く】

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