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絶罪殺機アンタゴニアス

 甲弐式機動牢獄は、囚人たちが特殊刑務作業に従事する際に搭乗する更生支援兵器であり、その外観は巨大な蜘蛛を思わせる。
 胸部下面から伸びた機銃が十字型の火を噴き、命乞いをする貧民たちを容赦なく血煙に変えた。散発的に浴びせられてくる反撃の銃弾は、その装甲に傷一つつけることはない。
 逃げ惑う人々をかきわけて、暗い目をした男がうっそりと歩いてくる。
 その両手に二挺のちっぽけな拳銃が現れた時、囚人らは失笑した。おいおい。マジかアイツ。

 爆音。

 男が重く踏み込んだのだ。大地より返ってくる反動が脚、股関節、胴、肩を伝わる過程で捻りを加えられ、纏絲勁へと変換されてゆく。肩から腕へと力が伝達されると同時に男は右腕を突き出した。拳銃が赤熱し、ヴン、と唸りを発する。
 腕が伸び切った瞬間、発砲。龍の咆哮がごとき轟音とともに撃ち放たれた銃弾は、機動牢獄の装甲を貫通。内部で勁力の作用を解放し、内蔵されていた罪人の脳を粉砕した。

【続く】

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