台風15号による停電のこと。

千葉県に住んでいる。
この度の台風で自宅が長時間停電したが、今朝方復旧した。
まだ復旧していない地域も多数ある中で綴るのもあれなのだが、記憶が薄れないうちに書いておきたい。
町の様子は報道の通りであり、ありふれたつまらない表現になるだろうが、ほんとに自分が肌で感じ思ったことを書こうと思う

記録的台風と言われながらもいつもの台風と同じくらいの備えで、特別な対策はしてなかった。
夜寝る前には普通にゲームをしてた。
寝静まる頃、だんだん風が強くなりいよいよきたかと思った。
ビュービューふいてた風は強くなる一方で、だんだん家の壁をドン、ドンと強く打ち付けはじめた。もう親の仇かってくらい思いきり。
雨もザーザーからバシャーンになっていった。
家が吹き飛びそう!と思ったとき、「カールじいさんの空飛ぶ家」のパッケージ画像が何度も頭をよぎった。
そうしているうちに明かりが消えて真っ暗になり、扇風機が止まった。しばらくして一度ついたが、強い風が吹いてまた消えた。そこから電気はつかなくなった。
結局、風の音がすごくて、空飛ぶ家やスパイ映画によくある窓ガラスが割れる様子を空が明るくなるまで想像してしまい、怖くてあまり眠れなかった。

朝、電車は動かず会社は休みにした。
日が照り始めるころには道路はほとんど乾いていた。
電気はつかず、だんだん暑くなっていった。家中のうちわや扇子、モバイルバッテリーをかき集め、一個しかないポータブル扇風機は大事に使った。
幸い水道やガスは使え、トイレや調理にはとりあえず困らなかった。
NHKの防災アプリでニュースをみながら過ごした。

それでも暑いので家族全員、シニアの犬も連れて車に乗ってガソリンスタンドを探したりコインランドリーに行ったりした。
信号はついているところとついてないところがあり、交差点ではみんなが慎重になっていた。
昼頃からは、救急車のサイレンがずっとどこかで鳴っていた。
犬はずっと息が荒く、うちわであおぎ続けた。

夕方、日が暮れてくると
やばい!真っ暗になる!と慌てて懐中電灯や夕食の支度。
東日本大震災は経験したが、なにぶんこんな長時間の停電は経験したことがないから、どれも対応はギリギリになる。

夜、窓を開けても風は全く吹いてこない。
地元の温泉施設はどこも休みか超混雑で、家で水風呂。
「いだてん」の金栗四三のようにひゃあひゃあ言いながら水の出るシャワーを浴びる。鍋で少しだけ湯を沸かし、お腹だけははお湯で洗った。
大汗をかいたので髪を洗ったが、ドライヤーが動かないのでできる限りタオルで拭いてからうちわであおいで自然乾燥。くせ毛のうねりはひどく、匂いそうなものならドライシャンプーのスプレーをふりまいてなんとか乾かした。

テレビもつかないし暑いしで、その日は早めに寝ようとなったが、汗は止まらない。首に濡れタオルをまいたり、全身用の汗ふきシートで何度も身体を拭いたりしたが、ベタベタが解消するわけがなかった。
寝室では窓を開けてタオル一枚お腹に乗せて横になったが、暑くてまったく眠れない。前日あまり寝てないために睡眠が足りないはずなのに。でも、寝たら寝たで熱中症になって二度と起きれないかもしれない、寝ないほうがいいかもしれないと何度も思った。それでも意識が飛んだ時があって1時間半くらい寝たようで、その後我慢できずに5時に起きた。

次の日の朝はおはようの次に大丈夫?生きてる?寝れた?と、お互いと犬の無事を確かめあった。
その日も会社は休みにした。会社に連絡した時に上司から、被災しているので無理をするなと言われ、私達は出社難民なのではなく被災者なのかとその時初めて実感した。
さすがに次の日は会社に行かないとまずいので、私だけ会社の近くのホテルに泊まるようにした。泊まり支度をしているとき、暑すぎて意識が薄れていきそうになり、ほんとに命の危険を感じた。
ドライヤーもヘアアイロンも使えないから髪はぐちゃぐちゃ、服も汗臭く、化粧も最低限でとても人前には出れない容貌で電車に乗り、ホテルに向かった。

東京はイルミネーションをふんだんに使った看板が立ち並び、虚しささえ感じた。ホテルに着いて身体は休まったが、依然自宅は復旧せず日にちが変わる頃までずっとツイッターで東京電力のアカウントを確認したり、「〇〇(地元地域名) 復旧」というキーワードで検索したりした。

ただ、寝る前にアップルの発表会のライブ動画を見ていたのはほんとの話。ごめん。

復旧の知らせは6時前、家族からLINEでだった。すぐに電話して家族全員の無事も確かめた。

いろいろ普段足りていないものに気づいたり、我々家族としては、多少なりと防災意識は高まったように思う。
でも、千葉県内まだ復旧がまだ先になるとのこと。
お年寄りや赤ちゃん、病気の方やペットがいるところは特に、本当に心配。
健康な大人でさえこの暑さで命の危険を感じるくらいだから、なおのこと早くクーラーの冷気を浴びて欲しいと思う。
復旧作業に関わる方、昼夜問わず働き詰めだと思うしそれもそれで心配。ツイッターをずっと確認していたが、逐一状況を流したりしてくれていた。1時間あたりの停電の件数の減り具合はあまりに少なく、状況が状況だけに批判や心ない苦言も多く見られたが、この混乱の中なかなか復旧の進まない現状には、作業に関わる方も人一倍歯痒く思っているだろうと、同じように働く人間から見れば容易に想像がつく。

私たちのすでに戻ってきたいつもの生活や、これから戻ってくるであろう県内の人たちのいつもの生活のために今も努力してくれていることには、本当に感謝しかない。

私にできることはあまりに少ない。
でも、みんな、どうかがんばってほしい。

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