見出し画像

楽曲解説/歌詞和訳#3 『e.g.』

作詞のKazmaと作曲のKou二人による、セルフライナーノーツ的なBearwear楽曲解説第三回。

今回は、僕らが初めて公開したMV作品であり、Bearwearの代表曲となった『e.g.』を紐解いていきます

楽曲解説

1作目のMV曲にして、エモ/ハードコアとドリームポップ/シューゲイザーの要素を五分五分に含んだ「ゲイズコア」な楽曲。

デモ時の仮タイトルは「エモゲイズ」。本タイトルの「e.g.」は、「エモゲイズ」をそのまま省略したものです。New Found GloryがA Day to Remember、Four Year Strong、SET YOUR GOALSと共に周ったツアー<The easycore Tour>が由来となって「イージーコア」ってジャンル名が出来たみたいに、エモ×ゲイズなバンドもジャンルとして確立されて、日本でもそういうバンドが増えればいいなって話していたのを思い出します。

ドリームポップ要素としてはDay Wave、Hazel EnglishやDIIV、最近だとLAUNDERの曲にあるようなBPM180くらいの8ビートのループを、エモ要素としてはセブンス、ナインスコードの多用や、間奏でAmerican Footballのようなアルペジオの絡みを取り入れています。

また、今回解説するにあたって聴き直してみると、「e.g.」にはBearwearの音楽を作るきっかけになった姿勢や発想が色濃くにじみ出ているなと気づきました。

Bearwearの曲作りを始めた2015~6年は、USでエモ/ハードコアバンドがインディ化するムーブメントがあり、不満を外への攻撃という手段で表現するわけではない「エモ」の姿勢とクリエイティビティに強く感銘を受けていました。そして当時は、神奈川出身のSuchmosが日本のインディーズシーンを席巻した時期でもあり、都会から一歩引いた自身の日常の周辺を描いたバンドによる「自身の生活を音にして、より生活を彩りのあるものにしよう」という発想が自分にとって新鮮なものでした。その両面を表現して、情緒的な空気感とポジティブな生活感を音に表せたのがこの「e.g.」だと思います。

つい先日、For A Reason企画で浮場船戸のスケートパークでライブをさせてもらったのですが、この曲をロケーションの良い場所でプレイ出来たら楽しいだろうなとずっと思っていたので、実現できてとても嬉しかったです。

来週はBearwearでタイ・バンコクへ行って、初の海外ライブをしてきます。もちろんセットリストには組み込むつもりです。今後も色々な場所でこの曲をプレイできるように頑張るので、ライブ来てくれた人はお酒片手にゆったり揺れてみてくださいね。

歌詞/対訳

Memory of that night
It all started to disappear
I grabbed my pen
Draw everything to see what is left in me

Trying to visualize
It doesn't stop fading away
In haste I scribbled
Though it was all just painted in to black

All those vanished memories
I try to recall. You being gone
It just fades away

あの晩の記憶がどんどん消えていく
ペンを握り、自分の中に残っている記憶を全て描きだそうとして

視覚化しようとしている最中も
自分の中から消え続けていく
慌てて書き殴るが、ただ真っ黒に塗りつぶしただけだった

消えた記憶を呼び戻す手段を探しても
君はもういない
霞んで消えていく

歌詞解説

活動開始してから1年目ぐらいのタイミングでこのMVをリリースし、まわりの人たちも自分たちもBearwearを見る目が変わったのを覚えている。それまではエモやハードコアやポップパンクシーンばかりでライブ活動をしていたのだが、このMV公開を皮切りに、下北沢のインディーロックシーンや、ギターロックやドリームポップ/シューゲイザーバンドの企画に呼ばれるようになった。あまり深く考えずにリリースしたのだが、Spotifyの公式プレイリストに入ったり、お店のBGMに使われたり、ラジオで流れたり、自分たちでも予想してなかった動きを見せた。バンドの可能性を広げてくれて、これからの活動の指針となった楽曲である。

この『e.g.』の歌詞は記憶や思い出にまつわる話。

大事な思い出なのに、日が経つにつれてどんどんその思い出が不鮮明になっていく感覚ってありませんか?そしていつか細かいディテールは全て忘れてボンヤリとしか思い出せなくなってしまう。

僕は一般的な人に比べて、思い出に関する記憶能力が低いのではないかと悩んでいる。人が思い出をどう脳内で映像化してるか分からないから比較することはできないが、明らかになにか脳の重要なメモリーが欠如してるんじゃないかってぐらい、自分が一度見たものを鮮明に思い出せない。

行った場所や、とった行動は覚えている。でも、その時見た景色、相手の顔や会話の内容を綺麗に忘れることがある。酒を飲んでる飲んでいない関係なく。でも酔いつぶれた時の記憶の飛び方にちょっと近い。

そしてこの記憶の欠落は、大事な日だったり感情が高まるとより一層顕著になる。バンドのライブを見に行くと「かっこよかった」って感情だけが残ってライブの内容あんま思い出せなかったり、大事なデートはどこに行ったかは覚えているけど相手の表情とかは何も覚えていなかったり。これって僕の脳の出来が悪いのか、みんなよくあることなのか知りたい。

大切な日のことを思い出そうとした時に、本当にその時の情景を何も思い出せなくて。でもその日には戻れないし、その人はもういないから同じことも再現できないという悲しさで、この歌詞を書き始めた。

かなり淡々とシンプルにまとめた歌詞ではある。でも歌詞とか詩って面白くて、その時の読み手の心情によって全然違う捉え方ができたりする。書いた本人すらもそうで、歌詞を書いてから1年ほどその曲を歌っているうちに、自分のいる環境も心情も変化して、歌詞の持つ意味が変わることがある。

最近、夢の記録をしようと夢日記をつけはじめた。わかると思うけど夢って本当に手で砂をすくった時みたいに、ものすごいスピードで抜け落ちて起きて数秒で忘れてしまう。だから夢日記って起きた瞬間に数秒でキーワード書き上げないといけないんだけど、文字書いてる最中に、何書いてたのかわからなくなっちゃったりする。

この一連の行動が『e.g.』の歌詞まんまで、自分でもびっくり。これってこのことについて書いた歌詞だったのかなって最近思い始めた。また少しづつ歌う時の心情も変わってくる。

歌詞の解説は、聞き手に想像させる楽しみを無くすから良くないっていう意見もあるけど。その時々でメッセージの受け取り方は変わるし。曲の持つ意味合いは人それぞれだし、曲を作ったときのキッカケぐらいは解説してもいいかなって思ってる。ライブのMCとかじゃなくてnoteで読みたい人が読めるようにしてるしね。次回もお楽しみに。

photo by Yasuda

Bearwear
Twitter
Instagram


読んでくれてありがとうございます!よければサポートお願いします!頂いたサポートはBearwearの活動費になります