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楽曲解説/歌詞和訳#2 『Break』

作詞のKazmaと作曲のKou二人による、セルフライナーノーツ的な楽曲解説第二回。

今回は奈良のARSKNと東京のSUPER SHANGHAI BANDとの3WAYスプリットシングル『NEO GARAGE SESSION』収録の、『Break』を紐解いていきます。

楽曲解説

ライブアンセム、Break。

南半球最大のメガシティ、ブラジルはサンパウロ出身のオルタナティブロック/シューゲイザーバンド『Kid Foguate』を聴いた時に得た、広大な都市風景を想わせるインスピレーションと、自分の目で見た代々木から新宿の高層ビル群の景色がコネクトして生まれた曲。

1月には勤労統計の改竄によって実際には景気が良くなっているのか疑惑が生まれたりもしたが、サブスクリプション配信サービスによる音楽業界の成長、カナダの大麻解禁(2018年10月)だったりLGBTに対する認知の広がり、そして新元号令和の幕開けなど、1人の駆け出しバンドマンの感覚でも、新たな時代へ前進するエネルギーを確実に感じるようになった2019年。

Breakができたのはそんな2019年と比べると、不景気や音楽シーンの停滞ムードを受け、それを打破し、東京で強く生きようとする、アーバンなシティポップや、ポストロックライクな実験性を持ったバンドに焦点が向いた2016年のこと。

前半のディレイをかましたギターは、自分が当時そういった世相の中で、アーバンな生活に憧れ、背伸びをして作った、自分なりの“都会っぽい音”なのかもしれません。

ライブでプレイすると、後半の叫ぶパートからか、Title Fightっぽいとか言われるのも面白いです。

歌詞/対訳

I lost the ring she bought for me
 I didn’t notice that its left behind
Did it drop and vanished in the rain?
Or maybe still falling down the drain
I lost the ring she bought for me
Don't know where it's been still roaming round
Sinking down the dark water
Left on dark cold ground
People and cars run over

I lost the ring that she bought for me
didn’t notice those things been left behind

I’m still here in this place
Seeing dreams of me being at home
Thought you would pick me up again
Further than i thought
I’m still here in this place
Seeing dreams of being at home

あの人が買ってくれた指輪を無くした
どこかに置いてきたことにも気づかず
落として雨と共に消えたのか
まだ今でも排水口の中を転がり続けてるのか
あの人が買ってくれた指輪は無くした
まだどこかで放浪しているのか
暗い水の中を沈み続けているのか
それとも
人や車に踏みつけられながら
冷たい地面の上に落ちたままなのだろうか

あの人が買ってくれた指輪を無くした
いろいろな物を置いてきたことも気づかず

私はまだここにいる
家に帰る夢を見ながら
また戻ってきて見つけてくれるのかと思っていた
でもここは想像より遥か遠く
私はまだここで家に帰る夢をみてる

歌詞解説

Bearwearの楽曲の中で今のところ一番短く、一番うるさい曲。
ハードコアやエモなど激しい音楽を通って来た人にライブを見てもらうと、よくこの曲が一番好きだと言われます。

Bearwearでは一番最初のライブから必ず演奏してきた曲なのですが、ライブでは映えるがオルタナ色の強い曲なだけに、なかなか音源化するタイミングが掴めず。

そんな時にARSKNとSUPER SHANGHAI BANDという2組のパンク精神強いバンドとツアーをまわった際に、スプリット音源を出すことになり、今こそこの曲を世に出すときだとレコーディングに挑みました。

後半の叫ぶパートは、ライブだとKouと交互にツインボーカルっぽくなることもあって、歌詞は1人の視点だけじゃなくて2方向からの視点で書こうと最初に決めてました。

置いていく側の視点と、置き去りにされた側の視点です。

人とか、記憶とか、思い出のモノ。ちゃんと過去と決別して前に進める人もいれば、ずっと過去から抜け出せずに苦しむ人もいて。

自分の中で整理して成長できる人は、過去を振り返っても
「懐かしいなあ」「そんな時もあったなあ」「あの時のおかげで今の自分があるなあ」という気持ちで思い返すことができます。

しかし逆に取り残された側の人は、いつまでも過去に縛り付けられたまま、今もその辛い時間のなかを生きているような感覚に囚われ溺れ続けなければなりません。

相手はすでに次の人生を歩み始め、たまに思い出すか、もしくはすでに綺麗サッパリ忘れているのかも。だからこそ永遠に抜け出せない自分は余計に惨めで辛く見えます。

そんな二種類の過去との向き合い方を、指輪を無くしたことに気づいた人物と、置き去りにされた指輪の2つの視点で描きました。

Breakというタイトルは曲の持つ破壊衝動だったり、Break away、Break upのような決別と結びつくイメージのある単語だったのでつけました。

photo by Yousuke Fujita


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