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「量子ドットによる初めての脳細胞の制御が行われた。」量子物理学と神経科学のありそうでなかった融合により、量子ドットと呼ばれる小さな粒子が初めて脳細胞の制御に使われた。

以下翻訳。
カトリーヌ・デ・ランジュ 記
2012年2月14日

 量子物理学と神経科学のありそうでなかった融合により、量子ドットと呼ばれる小さな粒子が初めて脳細胞の制御に使われた。

 脳をこのように制御することで、アルツハイマー病やうつ病、てんかんといった疾患に対する非侵襲的な治療法が実現する日が来るかもしれない。 近い将来、量子ドットは、損傷した網膜細胞を再活性化することによって失明を治療するために使用されるかもしれない。

 「ワシントン大学シアトル校のリー・リンは、「多くの脳疾患は、神経活動の不均衡によって引き起こされます。 「特定のニューロンを操作することで、正常な活動レベルを回復できる可能性がある。

 人工的に脳を刺激する方法はすでに存在するが、それぞれに欠点がある。 パーキンソン病では、脳細胞の活動を誘発し、衰弱させる震えの原因となる異常な信号伝達を防ぐために脳深部刺激が使用されているが、電極を設置する必要があるため侵襲性が高い。 経頭蓋磁気刺激は、頭の外から脳細胞を刺激することができるが、高度に標的化されていないため、一度に脳の広い範囲に影響を及ぼす。 オプトジェネティクスの研究者たちは、遺伝子を改変した脳細胞を光でコントロールすることができるが、このような改変があるため、この技術はまだ人間に使用しても安全とはみなされていない。

 林博士の研究チームは、量子ドット(直径数ナノメートルの感光性半導体粒子)を使った代替法を考え出した。

 まず、量子ドットで覆われたフィルム上で前立腺がん細胞を培養した。 がん細胞の細胞膜をドットの横に配置した。 そこで研究チームは、ナノ粒子に光を照射した。

 光のエネルギーは量子ドット内の電子を励起し、周囲をマイナスに帯電させる(図参照)。 これによって、がん細胞の一部のイオン・チャネルが開き、電圧によってイオンが細胞内外を行き来するようになった。

 神経細胞では、イオンチャネルを開くことが活動電位を発生させる重要なステップである。 電圧変化が十分に大きければ、活動電位が発生する。

 林教授のチームが神経細胞で実験を繰り返したところ、量子ドットを刺激するとイオンチャネルが開き、神経細胞が発火することがわかった。

 人間の場合、量子ドットを脳組織に届ける必要がある。 リン博士によれば、これは問題ではないとのことである。 「大きな利点は、量子チャネルの表面をさまざまな分子で修飾できることです。 これらの分子を量子ドットに付着させれば、特定の脳細胞をターゲットにすることができ、静脈内投与が可能になる。

 重要なハードルは、光源を脳に届けることである。 そのため、この技術の最初の用途は、自然に光を吸収する網膜の損傷した細胞を再活性化することだろうと林は考えている。 共著者で網膜疾患を専門とするフレッド・ライクは、量子ドットは視覚のシグナル伝達経路で重要な役割を果たしているイオンチャネルに直接作用するため、この分野で大きな可能性を秘めていると言う。

 「量子ドットは、生物医学的応用に大きな未来があります」と英国リーズ大学のケビン・クリッチリーは同意するが、潜在的な毒性の問題など限界があることも付け加えている。

 「われわれが観察した結果から、この技術が生物学的な疑問に答え、最終的には人間の病気の診断や治療に役立つ可能性を楽観視しています」と林教授は言う。

以上翻訳。


 量子ドットによる脳制御は、従来の方法に比べて、侵襲性が低く、外部・遠隔から高度に標的化され、且つ一度に脳の広い範囲に影響を及ぼす事が可能と言う訳ですね。

 最近実現したと言う事ですが、実は以前から出来ていた事を小出しにして来た、一般にも下りて来たと言う事なのだと私は思います。

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