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北海道編:あんぽん@札幌すすきの

すすきのの中心にやってきた。

札幌最大の歓楽街、昨年冬は、雪の中、巨大ネオンで輝く星の数ほどの店の中から好ましい店をゆっくり探す余裕がなかった。

そして、今回必ず訪れようと心に決めた店がある。「あんぽん」だ。
南5条4丁目、ローソンの隣ビルの上、入口には赤提灯に「あんぽん」とあり、目立たないビルだが赤提灯が頼りだ。


こないだは開店前にこの前を通ったようで、赤提灯がなくまったく気付かなかった。(雪の影響もあるだろう)

厚岸産の牡蠣が早く食べたい。
食欲と期待を高ぶらせる白電灯の看板が階段入口にあり、それを抑えるかのようにゆっくり階段を上った。


宇治茶色の上品な暖簾、店内の落ち着いた静寂なオーラが入口まで漂い、一呼吸した。


暖簾をくぐると店内は焦げ茶色の木造で渋く、コの字のカウンターのみで真ん中には炉端焼き場があり、白髪割烹着の女将さんが優しく「いらっしゃっいませ」と迎えてくれた。

「どこでもお好きなところに」との言葉に真ん中に座るのはあれだし、入口側二つ席隣に腰掛けた。

まずは瓶ビール。北海道に来たら美味いサッポロビールは頼むのが礼儀だろう。
サッポロは黒ラベルとクラシックがある。
ならば即答で「サッポロクラシック」を注文。
北海道限定のビールで八十年代にデビューしたスッキリさわやかなビールだ。
缶は北海道のコンビニで見かけるが瓶で頂けるとは大変貴重だ。
厚岸の牡蠣。生と焼き。どちらも食べたくて迷っていると、種から育てたという貴重な厚岸天然牡蠣「かきえもん」は生で(かきえもんは小ぶりな為、焼きより生で頂くようです。)、通常の厚岸牡蠣は焼きでと勧めて頂いた。


まず、クラシックはスッキリ旨く、日本酒で例えるならば新潟の五百石を使った淡麗な味わいか。黒ラベルの芳醇な美味さは山田錦と言ったところか。

とにかく、「クラシック」とフレッシュな「かきえもんは相性抜群だ。
かきえもんは小ぶりながらも、とてもミルキーで噛むと豆乳のような濃厚なエキスがこぼれ出す。

また、焼き牡蠣は大ぶりでプリプリと育った成熟した女性のようで、殻を閉じたまま焼くからお汁も磯の香りが際立ち美味しく、下手な味つけはいらない。


あっという間に胃袋へ、すぐ次の注文。
みがきニシンを焼いてもらった。
脂ののったホッケや秋刀魚、ニシンは北海道を代表する魚。厳しい寒さを乗り切る為に脂の乗った魚が適している。

女将さんに色々話し教えて頂いた。
ニシン漬けと言えば北海道の冬を越す為の保存食であり、郷土料理のニシン漬けがある。大根や人参、キャベツなどと一緒に漬ける。
これが美味い。

みがきニシンは干しが強めで歯ごたえがあり、今まで柔らかい焼きのニシンを食べたことがない。
女将さんのオススメの焼き
は身か゛とても柔らかく、脂が乗っいて、感動だ。
焼きの場合は干すのはちょい干しのようです。
女将さんの丁寧な焼き方もあり、こんな美味いニシンは生まれて初めてと言っても過言ではない。

さらにオスの立派なシシャモが入ったということで頂いた。

女将さんの言う通り、北海道のシシャモは内地のものより大きく、その存在感はデッカイド~!

こういった焼き魚には日本酒がやはり合う。
あんぽんの酒は、北斗随想、国稀鬼ころし、男山、北の勝。それに新潟の〆張鶴と鶴の友がある。
北海道の酒は辛口が多いがあまり辛くない北の勝をぬる燗で頂いた。

北の勝はポピュラーで、北海道では選挙の時や正月などの行事など必ず呑まれる酒だそうだ。勝の文字に縁起を担ぐようで、味わいも優しい。

そのぬる燗は非常に柔らかくイメージでは辛くどこか親父っぽいが、孫をができたおじいちゃんのように丸い味わいだ。

北海道の魚と酒と女将さんの話で大変心地好いぞ。

「あんぽん」は32年前に始めたそうで創業昭和53年。この店自体は40年くらい前のものらしい。
女将さんは本当に綺麗な言葉で話す。
厨房へ注文する時の「かきえもんお一人様。」
その品数を表すお一人様が大変好き。とても上品。
女将さんに「北海道訛りがないですね」と伺うと出身は茨木?栃木?か忘れたが関東圏の育ちで結婚を機に札幌に来た。
ちなみに娘さんと思っていたお手伝いのお姉さんの北海道訛りも逆に良い。

それでは気になったメニューを聞いてみた。

三升漬け?なんだろう?
米こうじ、塩、唐からしを一升づつ、合わせて三升を漬けたもの。

るいべとは?
主に魚を凍らせて食べる郷土料理。
由来はアイヌ語で、溶けるの「る」と食べるの「いべ」の合わせ言葉。

しかし、その土地で、土地にある郷土料理や地酒で一盃出来るのは至福の喜びである。

最後は栗カボチャのバター煮で〆た。

あんぽんのデザートと言いたい一品。
程よい甘さと栗の様なほくほくしたカボチャにバターの香りが素晴らしい。

さっきまで呑んでいた大阪から出張してきた二人のおじさんが女将さんと記念撮影していた。

羨ましいながらも、臆病な自分、あまりこういうのはどうかと思いつつ記念に一緒に写真撮影。

女将さん、ご馳走でした。札幌に来たら、必ず「あんぽん」はマストな居酒屋です。


すすきのの夜はつづく。。

■居酒屋ロマンティクス 2010月10月18日 自身のblogより

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