司法の女割

まず結論から言うと「女性は刑事裁判になっても男性と比して量刑が軽くなる」という傾向はハッキリ存在する。この傾向の有無自体に議論の余地はない。何故なら殺人罪という解釈の余地が入りにくい犯罪における執行猶予率において、男性は20%であるのに対し女性は40%であるという数字が出てるからだ。

https://senshu-u.repo.nii.ac.jp/record/5700/files/1021_0102_03.pdf

更に量刑の数字を追ってみると、特に女性が子供を殺した場合は執行猶予率は60%にも及ぶうえに、実刑はついた場合でも最長10年未満で最頻値は5年以下という驚愕の数字が弾き出されてる。当然その中には突発的犯行ではなく日頃からの虐待の末に殺したケースも珍しくない…というか子殺しの殆どはそのケースだ。

https://senshu-u.repo.nii.ac.jp/record/5700/files/1021_0102_03.pdf

尚、男性の場合は子供を殺した場合はキッチリ懲役10年以上に課せられている。例えば教育虐待の末に子供を殺した男性は「虐待の末に子供を殺すなんてとんでもない」として懲役13年に処されている。また無職の息子から家庭内暴力を日常的に振るわれ、キレた息子の姿に恐怖して刺殺して自首した元農水事務次官長男殺害事件において被告男性は懲役6年に処されている。家庭内暴力、自首という汲むべき事情があれ男性の殺人は懲役5年以下では済まされないのだ。

またXでは「司法は男性の性犯罪に甘過ぎる!」という意見が1定数見られるが、男性が娘を強姦した事件では男性は懲役4年に課せられており、量刑を比較すれば「男性の性犯罪は女性の殺人罪と同じ程度の重さに扱われてる」と言えるだろう。その重さが妥当かどうか?は別として、今年から施行された不同意性交罪の罰則は刑法第177条により「婚姻関係の有無にかかわらず、5年以上の有期拘禁刑に処する」とされており、これは刑法第199条の所謂殺人罪における「死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する」より少し軽いぐらいの規定だ。よって名実共に日本の司法は「男性の性犯罪」と「女性の殺人罪」を同程度の重みとして扱っているのだ。

こうした事から裁判官が被告の性別によって量刑を変えてること自体は誰の目にも明らかだろう。所謂「司法の女割」という言葉がミームになってるのは、こうした性差別的な判決を出す司法への不信感によるものだ。しかしながら司法の女性割は裁判官だけ問題では決してない。何故なら司法の女性割引は「検察と裁判官の2段階性」なのだ。

起訴・立件の女性割引

検察が性別によって起訴や求刑内容を変える事はあるのか?に関してはYESだ。その有無自体は議論の余地がない。何故なら「検察庁における処分の概況」において起訴率に大きな男女差がある事がデータにハッキリ出てるからだ。検察による起訴率は男性60%に対し女性は30%であり、男性は女性に比して2倍程度起訴されやすい。

https://www.moj.go.jp/content/000105816.pdf

これに関して「男性は女性に比して不起訴にしにくいような重罪を犯したり又歩いは証拠を残しやすいのでは?」という声もあるだろう。正直ここに関してはマクロの統計やデータがない為、その可能性は否定しきれない。しかしながら、女性には起訴・立件段階から量刑が軽くなるよう割引されてる例がチラホラ散見される。

例えば詐欺マニュアルを配布し億単位の被害額を出した男女において、39人に振り込め詐欺マニュアル配布し被害額1億4600万円を出した戸田雅樹(男性)は懲役20年に処されてる1方、恋愛及び病気及び貧乏詐欺マニュアルを1000人以上に配布し被害額1億5000万円を出した渡邊真衣(女性)は懲役9年に処された。(余談だが渡邊真衣がターゲット男性から金を引き出させる手法はロマンスというより「金が無くて病気や生活が!」が主であった。この事件が恋愛詐欺としての面ばかり焦点があてられるのは、やはり「馬鹿な男性が女性に色仕掛けて馬鹿をする」というシナリオが分かりやすく尚且つ面白いからだろう)

この2つの事件の量刑を別ける最大のポイントは「組織犯罪処罰法違反の適用の有無」だ。同法では詐欺行為が組織的に行われた場合、刑罰は「1年以上20年以下の懲役」と定められており詐欺単独犯の「10年以下の懲役」と比べて重くなる。そして組織の定義は同法第2条により「共同の目的を有する多数人の継続的結合体であること」「その目的または意思を実現する行為の全部または一部が、組織により反復して行われるもの」とされている。

戸田雅樹被告は39人に対し明確な指示体制を作らなかった。しかしながら検察は「メンバー同士で犯罪成果をフィードバックし合っていたこと」「緩やかな連帯があったこと」「目的意識が共通させていたこと」等を理由に組織犯罪だと追及、菱田泰信裁判長も「被告は詐欺の手口ごとにグループを分けて収益を競わせるなど集団を高度に組織化し、主宰者として職業的に犯行を繰り返していた」として所謂ネットワーク型組織犯罪である事を認めた。

1方で渡邊真衣被告の立件は詐欺、詐欺ほう助、脱税であり検察から組織犯罪とは扱われていない。しかしながら彼女は「頂き女子りりちゃん」として、同じく詐欺を働く女性達と「頂き女子」として犯罪成果をSNSで堂々とフィードバックしあっていた。また彼女はオープンチャット等を主宰し、最盛期には300人と犯罪手法や成果を話し合っていた。更に頂き女子達はターゲット男性から金を引き出す為に「退去勧告書」「家賃滞納書」「病気の診断書」等の画像を共有していた事も知られている。これをネットワーク型組織犯罪と検察が判断しなかった理由は「被告が女性だから」以外で説明する事は不可能だ。間違いなく「メンバー同士で犯罪成果をフィードバックし合っていたこと」「緩やかな連帯があったこと」「目的意識が共通させていたこと」の3条件は満たしてる。

また女性の子殺しが執行猶予になりやすいのも同様のカラクリであり、要は男性と違い女性の子殺しは例え虐待の末であれ「致死」や「死体遺棄」として立件される事が殆どだ。

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/f0bc4513043515411d19254542a6147d3f1bee65

このように司法の女性割引は検察と裁判官の2本立てなのである。

警察や社会の女性割引

また不起訴率の男女差もそうであるが、女性の犯罪は男性に比して表に出にくいという構造もある。これもその傾向の有無自体は議論の余地がない。

例えば警察の虐待事件で検挙される犯人の7割は男性であるが、(心中以外の)子殺しの犯人は7割が女性と綺麗に性比が逆転する。当然子殺しに及ぶ女性が普段は良き母として振る舞っているにも関わらず、何かの拍子に殺意の波動に襲われ子供をうっかり殺してしまったとは考えづらい。殺害に及ぶ前から虐待等は日常的にあったと考えるほうが自然であるし、実際に殺された児童はほぼ確で衰弱や傷跡が確認されている。つまりこの逆転現象は「女性は虐待しても周囲から虐待と思われなかったり庇ってもらえたりで発覚しにくいが、子供死亡という誤魔化しようがない事態になってはじめて表沙汰になる」ということだ。

https://www.moj.go.jp/content/001338447.pdf
https://www.cfa.go.jp/councils/shingikai/gyakutai_boushi/hogojirei/19-houkoku/

そして女性から男性への犯罪は特に見逃されやすい事が示唆されるデータもある。

警察庁の令和4年の配偶者からの暴力を見ると女性被害者は73%、加害者の性別は男性が73%となっており男女間暴力は女性が被害者、男性が加害者になりやすい傾向が伺える…が、しかしながらグラフをよく見ると男性被害者数が右肩上がりだ。そして暗数を踏まえると更に話が変わってくる。内閣府が平成29年に行ったアンケート調査によれば、「配偶者からDVを受けた事があるか?」という問いに「ある」と回答した女性は31.3%であったが、男性は19.9%が「ある」と回答しているのだ。

https://www.npa.go.jp/publications/statistics/safetylife/dv.html
https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/chousa/h29_boryoku_cyousa.html

また配偶者間の暴力犯罪加害者の割合は男性93.3%女性6.7%であるが、殺人の割合になると男性58.6%女性41.4%と差が1気になくなりだす。これは上記の暗数の調査と合わせて考えるなら「男性は女性から暴力を受けても大抵は泣き寝入りしており警察も事件化しない。しかしながら殺人はその性質上表に出ざるを得ず、その割合は現実の男女間暴力の実態の反映に近くなる」と解釈する他ない。

https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h27/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-04-02.html

このような事情を顧みるに司法の女性割引というよりは「日本の社会自体が女性の犯罪に甘く男性の犯罪に厳しい」という方が実態に近いのだろう。良い悪いは別にして現代日本において女性はある種の治外法権を有する階級なのである。


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