これからお金と抜歯の話をしよう

前回まで、公的保険と歯科医療の相性の悪さについてお話をした。

今日は抜歯とお金のお話。

時々、「歯医者で悪くない歯を抜かれた」なんて話をする人がいるが。どうも無い歯を抜く事なんてまずあり得ない。何かしら問題があるので抜歯することになったと思われる。ただ、日本人は、とにかく歯を抜くことに対して消極的だ。

例えば、親知らずが斜めに生えて、このままだと隣の歯がむし歯になりやすいので抜歯を勧めたとする。すると、「今は痛くないから抜きたくありません」

そうして、隣の歯のむし歯が大きくなってから抜歯をすることになる。酷いケースでは、親知らずを抜かないまま銀歯を被せる治療をしたためにその銀歯の中が数年でむし歯なり再度むし歯の治療をする事になる。

全身の病気が原因だとか、抜歯が怖いから抜くのが嫌ダということは分からんでもない。

しかしながら、「出来るだけはを抜かない方が良いと聞いた」「痛くもない歯を抜きたくない」という理由で、他の歯の寿命を縮めてしまう人も結構いる。

これは、保険の治療では自己負担が少ないため、むし歯の治療が短期間でやり替えることになった場合でも支払うお金が数千円以いないで済むことも理由の一つだと思われる。

もしも、むし歯の治療に5万円以上のお金を負担していたら、親知らずを抜かないでそのママ「短期間で再治療が予想される治療」を受け入れる人は限られるだろう。

他の例で、グラグラしている歯が何本かありそのうちの1本だけ痛みが有り3本は痛みはないが2年と持たないことが想像される状況だとする。

その時に、痛む歯を1本ずつ抜いてその都度入れ歯を作り直し、2年間に3度も4度も作るというのは治療費の自己負担が少ないから起こる事である。

抜歯には、教科書に書いてあるような基準がある。むし歯が大きくなりすぎて残りがほとんど無くなってしまった。根が折れている。歯周病が進行し骨が根の先の方まで溶けて支えがなくなっている。

しかしながら、最後に患者さんの同意がないと抜歯出来ないのだ。歯は抜歯の適応であっても患者さんがそのママ残してくれと言う事で抜かないでそのママのこともある。

もちろん、そのうちに抜かないと行けなくなることがほとんどだ。治療費が安いのは、何かあったときいつでも安心して治療を受けることが出来ると言う国民皆保険制度の良いところではあるが、歯科の分野に限ってみると、「歯を大切にする」と言う事がないがしろにされかねない。

歯の治療の値段が高額だから歯を大切にすると言うのも、本来の健康観とはずれている感じであるが。一つの考えとしてはあり得る。


この様に、国民の健康に対する意識を反映したのが現在の日本の健康保険制度である。またこの制度によって、国民の健康観が育てられている。

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