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「はじめからなかったこと」と同義にしたくない日々のこと

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なまものの自分と向き合う時間をつくるための日記
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戦わずして、世界に“属する”ことはできないのかもしれない

戦わずして、世界に“属する”ことはできないのかもしれない

僕らは何かに属していないと、うまく生きていくことができません。僕らはもちろん家族に属し、社会に属し、今という時代に属しているわけなんですが、それだけでは足りません。その「属し方」が大事なのです。その属し方を納得するために、物語が必要になってきます。物語は僕らがどのようにしてそのようなものに属しているか、なぜ属さなくてはいけないかということを、意識下でありありと疑似体験させます。そして他者との共感と

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ていねいに暮らしたい

毎朝コーヒー豆を挽くとか、季節の変わり目に手紙をしたためるとか、家の中に花を絶やさないとか。「ていねいに暮らす」と聞くと、なんとなくそんなイメージが沸いてくる。もちろんそれらはとても素敵できれいな暮らしだ。と思う一方で、わたしの中の「ていねい」の定義とは、どうしても相容れない。

たとえば、どこか遠くへ旅行したとき。その土地にしかないおいしいものを食べるのが、旅行の“正解”かもしれないけれど、「今

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忘れるためじゃなく、覚えておくために手放す

1年と少し前、気に入っていたtokyobikeの自転車を友人に譲った。

グレーがかったブルーのフレームに、細くて白いタイヤ。ペダルは軽くて、こぐとぐんぐんどこまでも進んでいける、かわいい相棒だった。

出産を機に自転車にあまり乗らなくなったこと、引っ越しが決まったこと、そしてちょうど友人が自転車を探していたタイミングが重なり、ぱぱっと話がまとまった。

私の家まではるばるやってきて、そのまま夜の

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バイクの免許をとったのは

バイクの免許をとったのは

はじめて自分で運転したバイクは、ベトナムに住んでいたときに現地の友人から譲り受けたヤマハのスクーターだった。

ベトナムには「教習所に通って免許を取る」なんていう文化はない。ほとんどの人が、友達や家族に適当に乗り方を教えてもらい、そのまま路上に出る。(交通ルールなんてないようなものだ)

友人の自宅近くで2時間ほど運転練習に付き合ってもらったあと、「じゃ、家まで運転がんばってね!」と見送られたとき

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言語化至上主義がこわい

言語化至上主義がこわい

メールにLINE、SNS、ブログ。これだけテキストベースのコミュニケーションが多くを占める世の中で、「言語化が得意」は間違いなく武器だ。

正しくことばを選んで丁寧に伝えれば、必ず誰かに届く。似たような思いを持つ誰かが共鳴したり、応援したりしてくれる。人の頭の中がのぞけないかぎり、結局は「言わなきゃ伝わらない」のだ。

だけど、それが行きすぎて「思いは言語化すべきである」「ことばにできない=考えて

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新宿の占い師さんが教えてくれたこと(“私とあなた”で話がしたい)

新宿の占い師さんが教えてくれたこと(“私とあなた”で話がしたい)

もうずっと前。人生で一度だけ、手相占いに行ったことがある。

新宿の寒空の下で2時間くらい並び、ようやく通された小部屋には、母くらいの年齢の占い師さんがいた。小さな机を挟んで向かい合い、手のひらを片方ずつ見せていろんなおしゃべりをする。

何を言われたかはほとんど忘れてしまったけれど、よく覚えていることがひとつある。

あなたは体があんまり強くないから、結婚して子どもを産んだら仕事をセーブしたほう

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Suicaの残高に見る人生

Suicaの残高に見る人生

駅に着いて、かばんからSuicaを取り出す。改札に「ピッ」とタッチする。

それだけの行為にいろんなドラマや個性がつまっている気がして、あの瞬間がけっこう好きである。

まず、タッチの仕方。

ほわっとした雰囲気のお姉さんがバーン!!とSuicaを叩きつけていると、見てはいけないものを見てしまったようで、ひゃあ!となる。すごく辛いことがあったのかもしれない、日々何かしらの抑圧に耐えているのかもしれ

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すべての縁は“タイミング”である

すべての縁は“タイミング”である

やっぱり、タイミングかなあ

結婚の決め手を尋ねたとき、90%の確率で返ってくるのがこれだ。

「いや、その“タイミング”をもう少し噛み砕いて教えてほしいんですけど」と思っても、当人にはタイミングとしか言いようがなかったりする。

たしかに、どちらか一方の思いだけではどうにもならないし、タイミングということばが適切なのかもしれない。けど、それって結婚に限ったことかなあ? と最近ふと考えた。

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“幸せ”とか“自己肯定”と呼ばれるものの原型について

長らく彼女と同棲している友人Yが、飲み会でこんなことを言っていた。

「彼女は、自分自身のことをよく知っているのがすごいと思う。たとえば“牛肉を2日続けて食べるとおなかの調子が悪くなる”とか、“ポリエステルが入った服を着ると肌がカサつく”とか、全部ちゃんとわかってるんだよね」

彼女には持病があり、食べるものや身につけるものにはかなりセンシティブなのだ、というのは前から聞いていた。

それにしても

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ものごとの“書きどき”について

ものごとの“書きどき”について

仕事に“辞めどき”があるように、株に“買いどき”があるように、ものごとには“書きどき”がある。

今まさに悩み苦しんでいることを書くのか、かつて悩んでいたことを書くのか。現在進行形の恋愛について書くのか、終わった恋について書くのか。“今伝えたいこと”を書くのか、“伝えたかったこと”を書くのか。「書きどきをいつと捉えるか」に、その人の美学が反映される気がする。

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ところで、私はかさぶたをす

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夏が終わるので

夏が終わるので

8月31日は、いつも唐突にやってくる。日々カレンダーを眺め、「もうすぐ8月も終わるなあ」と頭の隅で自覚しているはずなのに、やっぱりその日は唐突に現れる。宿題が終わらないのも、一度も海に行かなかったことを悔いる気持ちになってしまうのも、すべては8月31日が突然目の前に現れるせいなのだ。

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ところで、今日初めてひーさん(子ども)が歩いた。たどたどしく、机からそっと手を離して、よたよたと4,5

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あきらめたらそこから試合が始まる

あきらめたらそこから試合が始まる

あきらめたらそこで試合終了ですよ

『スラムダンク』の、あまりにも有名なセリフだ。

このことばが名セリフたり得るのは、あきらめたいと思うことが日々にはたくさん、たくさんあるからだ。

がんばっても変わらないこと。自分の力が及ばないこと。どうしたって、そういうことはある。

私は意志が軟弱なので、「いや、無理」「意味ない」とすぐに思ってしまう。自分の力や周りを取り囲む現実を見て、この辺までかな、こ

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気づかずに叶っていること

気づかずに叶っていること

思えば、子どもの頃はやりたくてもできないことがたくさんあった。たとえば、夜更かしすること。好きなお菓子を好きなだけ買うこと。友達と夜まで遊ぶこと。全部、やりたいなあと思っていた。

今、当たり前のように夜更かしをしている。夜中に映画を見てもマンガを読んでも誰にも怒られない。遊びたければ日付が変わるまで外にいてもいいし、友達に会いたければ連絡をして、何時だろうと会えばいい。誰の許可も得ずに、コンビニ

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人を信じるということは

人を信じるということは

いつだったか、友人Rと、各々が思う「いい女/いい男の3ヶ条」について語ったことがある。

彼は、魅力的な恋愛対象の3つ目の条件として、「たくましい人」を挙げた。(1つ目、2つ目は忘れた)「付き合ったり結婚したりしても、俺が事故や病気ですぐ死んじゃう可能性だってあるわけで、たとえそうなってもちゃんと生きていけるだろうなと思える人がいい」と、Rは言う。私は彼の、そういうところが好きだ。

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