花火を見られなかった花火大会のこと

中学に上がる前まで、私の地元ではそこそこ大きな花火大会があった。小さいころは、毎年両親に連れられて近所の橋まで歩き、遠くに上がる花火を眺めた。

小6の夏休み、はじめてクラスの友達と4人で、子どもだけでその花火大会に行くことになった。はりきって浴衣を着て、16時くらいに出発。会場に着くと、斜面になった芝生の上に、細い道を挟んで屋台がひしめいている。その間をぐいぐいと進み、途中で焼きそばやたこ焼きを買って、斜面の途中にレジャーシートを敷いた。まだ夕暮れでもなく、明るかった。

好きな男の子のこと、半年後に迫った中学生活のこと、おしゃべりをしながらあっという間に時間はすぎ、あと少しでいよいよ花火大会が始まるという段になって、飲み物を追加で買おうと誰かが言った。2人が場所取りのためにシートに留まり、私ともう一人が買い出しに行くことになった。

離れないようにと気をつけて進んでいたつもりが、気づいたら友達の姿が見えない。当時は携帯なんか持っていなかったので、とにかく周りを探し回った。人がどんどん増えてきて、身動きが取れなくなっていく。焦る。

そのうちドーン、ドーンと音がし始めた。背の高い大人や屋台に囲まれて全然見えない。シートに戻ろうにも、人が多すぎて進めない。周りでわー!と歓声があがる中をうろうろし続け、ついにそのまま友達の姿を見つけられないまま、一つも花火を見られないまま、その年の花火大会は終わってしまったのだ。(結局そのあと自力でシートに戻って、友達と再会できたのだけど)

その数日後が、夏休み中に1日だけある登校日だったのだが、クラスの男の子に「お前、花火大会で迷子になってたじゃん」と言われた。会場のアナウンスで、何度も名前を呼ばれていたらしい。


その翌年、花火大会は行われなかった。市の財政難で開催できなくなってしまったのだとあとから聞いた。私も友人も中学生になり、地元から少し離れた学校に進学した私は、当時一緒に花火大会に行った3人とも疎遠になっていった。


***

あれから何度も花火を見た。隅田川や江戸川、立川に多摩川。どれもちゃんと、近くで大きくてきれいな花火が見られた。一緒に行く相手が友達から彼氏になったり、ラムネがビールになったり、それぞれの花火と夏の匂いとともに、記憶はきちんと保管されている。全部大切な思い出だ。

だけど、花火と聞いて真っ先に思い出すのは、12歳の、一つも花火が見られなかったあの日のことなのだ。屋台に挟まれた狭い道で、ぎゅうぎゅうになりながら友達を探し回ったあの日。不安でいっぱいのくせに「もう12歳だし大丈夫」と精一杯を保ち続けた、オレンジの灯りにかこまれた夜道を、今でも一番に思い出すのだ。


***

この前母から連絡があり、あの花火大会が今年から復活するのだと聞いた。少し迷ったけど、見に行かないつもりだ。

今日は駅から帰り道の途中にある花火屋さんで、線香花火を買って帰った。そろそろ新しい浴衣を探そうと思う。

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あしたもいい日になりますように!

いえーい!\(^o^)/
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Chihiro Bekkuya

「はじめからなかったこと」と同義にしたくない日々のこと

なまものの自分と向き合う時間をつくるための日記
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