「妖精さん」の話
大学生の頃。学校からの帰り道、いつものように山手線に乗った。池袋から運良く座れて、しばらくうとうとしていたら、突然目の前に立っていた知らないおじさんに軽く肩を叩かれた。
「秋葉原だよ」
ハッと目が覚めて、「ありがとうございます」といそいそお礼を行って降り、総武線のホームに向かいながら、あれ?と思った。どうしてあのおじさんは、私が秋葉原で降りるとわかったんだろう。
こんなふうに、日常の中で突然ふっと現れて、さりげなく私を助けてくれる存在のことを、「妖精さん」と呼んでいる。妖精さんはいろんな人に姿を変えて、ときどき私の前に現れる。(と思っている)
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ものすごく悲しいことが続き、ある日プツッとスイッチが切れてしまった25歳のとき。大学を卒業してからほぼ連絡を取っていなかった友人から、突然「元気?」とメールがきた。流れで、その週末にごはんを食べに行くことになった。
新宿の、オフィスビルの地下にあるイタリアンでピザを食べながら、ひたすら悲しさを彼にぶちまけた。そして彼は、10代の頃に起きた救いのない悲しい話を、ぽつぽつと話した。学生時代にはまったく知らなかったことだった。その数時間、私は彼の1を聞いて10がわかると思ったし、おそらく彼も同じように感じていただろう。二度と再現できない共鳴だった。
その日を境に、ゆるやかに、でも確実に気持ちは上を向いた。彼とはその後、連絡をとっていない。
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妖精さんは、あるときはバスで隣の席に座った人だったり、あるときは古い友人だったり、あるときはカフェの店員さんだったりする。スッと現れて、あとくされなく去ってゆく。
カサついた東京の街で妖精さんに出会うと、なつかしいようなあたたかいような、不思議な気持ちになる。次会えるのはいつかな。
ちょっとなに言ってるかわかんなかったらすみません。でも、そういうことないですか。
あしたもいい日になりますように!