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【前立腺ガン治療日記②】陽子線治療で金を埋め込む

前立腺に金を埋め込む

今日は第2回目の陽子線治療。

なんとなく朝早く起きたのでランニングをしたり、昨日の晩、体全体をストレッチをしてくれる整体のようなところにいったりしたら、どうやらお尻の筋肉の形が昨日とちがってしまったらしい。陽子線治療の機械に乗ってから、何度も行われる微調整に時間がかかった。

今回の治療が始まる前に一度準備で入院、全身麻酔で手術を受けた。陽子線治療は全部で12回行われるのだけれども、毎回、前立腺の位置がずれないようにと、前立腺の中に目印になる金属を打ち込むのだ。腐食しなくて、体に影響が少ないのは「金」らしく、ぼくの前立腺には2つの小さい「金」が埋め込まれている。

この治療において、陽子線を当てる位置というのがどうやらシビアらしい。ずれを防ぐためにぼくの体にピッタリ合わせた樹脂のベットみたいなものも作ってくれた。身体の形を取り、熱成形して作られるようで、ほかのひとたちの人形ベッドも治療室の廊下に積み上げられていた。人の形はそれぞれ違うのだな。黒い樹脂ベッドを見ながら、当たり前のことを考えた。

今までの放射線治療と、最近流行りの陽子線治療の違いをネットで調べてみたのだが、今ひとつよくわからなかった。わかったことは、どうやら、体を放射線が通る時、照射したい部分だけに放射線があたり、その近辺には被害が少ないのが陽子線治療らしい。この治療自体が新しい技術らしいく、いろいろ評判が良い。

それにしても、放射線を当ててガン細胞を殺すわけだから、その周りの細胞も死なないわけはなさそうだ。この治療をしながら、ぼくはぼくの細胞を殺しているわけで、なんだか深く考えると、すこしいたたまれなくなる。

細胞は死んでいくよね

刺青を入れようと思ったことはないが「いれようかな?」などと悩むタイミングがあったとすれば「親からもらった体に傷をつけていいのかな?」と悩んだはずだ。タトゥーをしている人がダメとは思わないが、自分自身に関しては、そういうちょっと保守的な昭和マインドがはたらく。

背に腹は変えられないとは思うのだけれど、この陽子線治療を受けるにあたっては、いろいろなことを考えた。治療をすることで、自分の体が変わってしまうことへの危惧。身体の一部に変化が起きたとしても、自分自身には変わらないはずなんだけれど、漠然とした不安が襲ってくる。

物事は細部に宿ると思っている。それは、普段、創作をするときも同じで、細かいところに心がゆき渡ればゆき渡るほど、作品はいきいきしだす。人間の身体も、細胞や器官などの細部から構成されているわけで、それがアップデート、ダウンサイズすることで、ぼく自身の形も変わってしまうのではないかと考えてしまう。

そんなことを考えていたら、2回目の治療が終わった。技師の方から「今回は、ギリギリ良かったのですが、明日は…」と問題点を指摘される。今日は、大腸に少しだけ便が溜まっていたらしい。生活するには問題ない量なのだが、あまり溜まりすぎると、器官の位置が変わってしまい、治療の妨げになるのだそうだ。

適切な排便と膀胱に200mlの尿。

簡単なようで、人体をコントロールするのは、結構難しい。

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