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ミャンマー再訪

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「私」のミャンマー・ラカイン滞在記。 「伝える」など高尚な目的はなく、ある出来事と私の心の変化を書いてます。 マスコミESに書けば確実に落ちる文章と内容。
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スタディーノート10 未遂

スタディーノート10 未遂

(かつて15世紀から17世紀初頭まで勃興していたアラカン王国。仏教徒の王とムスリムの家臣がおり、コンバウン朝に滅ぼされた後からロヒンギャムスリムの冷遇される時代が始まった。
そして現在に至るまでそれは続いている かつて同じ町で暮らしていたアラカン人たちはロヒンギャを外国人として見なしているのが現状である)

ミャウー郊外にあるロヒンギャの村々を延々に訪ねた。ハイウェイとは名ばかりのアスファルトを一

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スタディーノート9 小火

スタディーノート9 小火

ミャウー。ラカイン州北部に位置し、15-18世紀にかけて栄えた古都である。かつて花めいた王宮こそ残ってはいないが、今でもその堅牢無比(?)の苔だらけの石垣は今もアラカン人を横目に居座り続けている。私は横を通る時、やはり日本の築城技術はすごいのだとほくそ笑むのであった。今年6月からアラカン軍とビルマ軍の衝突の影響でラカイン州のインターネットが遮断されている。9月初目に一部地域のブラックアウトは解除さ

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スタディーノート8 亡霊

スタディーノート8 亡霊

私は今ミャウーの宿に滞在している。ついにシットウェを後にしたのだ。そっと聴覚を森の虚空の方へ集中させてみる。鈴虫か何か虫と宿のペット犬の耳を強く掻き毟る音しか聞き取ることはできない。宿の主人によれば、昨日、近隣のビルマ軍施設から発砲音が聞こえたという。戦闘を行っている訳でもなく、山に潜むアラカン軍を威嚇するための射撃だそうだ。22時46分、一発の銃声が虚空を切り裂いた。

↑ラカイン州地図

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スタディーノート7 脳内議論

スタディーノート7 脳内議論

世界各地で働きバチが失踪していることを皆さまはご存知であろうか。日本でもまた多くの外国人実習生の失踪が相次いでいる。今年4月から政府により改正入管法が施行され、この5年間で日本の外国人労働者受け入れの数は増加するとされている。彼らは希望とともにやってくるのだ。しかし、その冀求を打ち砕かんとする社会構造が日本には部分的に存在している。現在滞在中のシットウェにもそんな希望を持つ若者たちがいた。
 8月

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スタディーノート6 浸水

スタディーノート6 浸水

生まれて21年、初めて洪水というものと対面した。水位がサンダルの底の高さを越えた時、私は屋台で朝食を取っていた。幸運であったのは目の前に麺をすするフロントマンが座っていることである。一人でずぶ濡れのまま、凍えながら啜る暖かいスープなど孤独の極致に違いない。
 9月10日(月)、シットウェは今雨季でも群を抜く豪雨に見舞われた。浸水してしまったメインロード界隈の食品店の従業員たちは椅子の上にしゃがみ込

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スタディーノート5 アラカン人の一面が垣間見える日

スタディーノート5 アラカン人の一面が垣間見える日

現在私が滞在しているシットウェでは、多くのアラカン人が「アラカンヒーロー」として崇め奉っている一人の僧がいた。ビルマの英領からの独立運動に貢献した、ウーオッタマ僧である。
本日9月9日は彼の命日である。昨晩、ビールを飲んで酩酊状態のまま床に就いた私は、翌朝太鼓の音頭と特大スピーカーにより何倍にも増幅された歌声で目を覚ました。朝から何事であるか。歯磨き粉を乗せた歯ブラシを持って外に出ると、学生ほどの

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スタディーノート4−2 ロヒンギャ コミュニティを訪ねて。

スタディーノート4−2 ロヒンギャ コミュニティを訪ねて。

凸凹道を自転車で進んだ先には大型トラック一台分より少し広い幅のコンクリートの道路が敷かれている。側にはバイクに座りながらタバコを吹かしている男や瀟洒な日傘を差しながら談笑している女性が見える。店はティーショップ、食事場所、薬屋、水瓶やプラスチック製の椅子などが売られている雑貨屋が立ち並んでいた。全員私の顔を凝視しており、大人子供問わず近づいてくるのであった。「キャモナソ(こんにちは 元気ですか)」

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スタディーノート4−1ロヒンギャコミュニティを訪ねて

スタディーノート4−1ロヒンギャコミュニティを訪ねて

ミャンマー・ラカイン州シットウェにはロヒンギャ国内避難民キャンプが点在している(internally Displaced Persons:IDPs)。そこには2018年8月25日にバングラデシュに逃れた者とは別にシットウェで隔離されているロヒンギャが居住している。私のような観光客はもちろん、外国人の立ち入りは禁止されておりキャンプの前には大きく“POLICE”書かれた青いボックスの検問が置かれてい

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スタディーノート3 親密圏喪失の危機

スタディーノート3 親密圏喪失の危機

本日もシットウェは雨である。おそらくこれからの記録も冒頭は雨のことについて書くことになると思われる。元寇を打ち払った神風もかくやと思わせるほどの横殴りの雨なのである。

 壊れたレンタル自転車が直っているか確認するためバイクショップへ足を運んだ。昨日ロヒンギャ国内避難民キャンプへ向かう際、強く漕いだためかチェーンがはち切れていた。店に到着するとすでに自転車は修理されていた。お代もいらないそうだ。

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スタディーノート2 教職者

スタディーノート2 教職者

「シットウェ滞在2日目を終えて」
 9月6日(金)午後9時。とうとう2日目を終えた。今回の滞在で大誤算であったのは、未だミャンマーが雨季の時期にありスコールが頻発することだ。外にさえ出れないのである。ましてや高価なカメラを持ってなど。何か対策を考えねば。来月からは雨天の日が少なくなるらしい。
  この二日間でロヒンギャ国内避難民キャンプへは入り口まで行ったものの、警察の目がなかなかに厳しいため長

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スタディーノート1 副次的

スタディーノート1 副次的

9月5日(木)、シットウェタイ滞在1日目を終える。現在、「Kiss Guest House」というメインロードに面するホテルに滞在している。ホテル検索サイトで調べると出てくるホテルと同じクオリティであるが、約20ドル(他は35ドル)と格安かつ同年代のフロントマンはフレンドリーであり、居心地が大変良い。

実は一年と5ヶ月前にも同ホテルに滞在していたのだが、ここまで心地よさは感じなかった。フロントマ

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ミャンマー再訪 〜一年と四ヶ月の月日を経て〜

ミャンマー再訪 〜一年と四ヶ月の月日を経て〜

9月4日午前9時(ミャンマー時間)、ヤンゴンに到着。3日の午後8時に日本を発ちバンコク-ドンムアン空港で乗り換えを経るおよそ半日の旅程であったが、ようやく後は国内線でシットウェに向かうのみである。私はこれまでフィリピン・カナダ・ミャンマー・バングラデシュ・タイの五カ国へ足を運んだことがあるのだが、どの国も空港で入国審査を経て荷物を受け取り、外に出て異国の空気を吸えば「日本に帰りたい」という衝動に駆

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