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電車内での出来事

雪で白く染まる田んぼの隙間をノロノロと進む電車内での出来事。

12月31日、大晦日。高校2年から続けている年末金沢散歩のため、金沢行きの電車に乗った。その日の車内はアジア系の人が多かった。だが彼らのスマホを見たり、談笑したり、慣れた姿から石川県で働く労働者であることが推測できた。今月8日に可決された入管法改正、そして議論の際に浮き彫りとなった労働環境の問題(石川県でも死亡事例あり)に関心があったため彼らの中の一人に話しかけることにした。

話してくれたのは僕の横に座っていたグエンさん(仮名)、25歳。声が少し高く、おっとりとした顔をしている。グエンさんは3年前にベトナムから来日し、今は工場で働いていて、家族に仕送りをしているという。今日は僕と同じく金沢へ観光に行くそう。

グエンさんは日本の文化、特にアニメが好きで日本を働く場所として選んだ。本当は東京で働きたいらしい。日本に憧れを抱き、労働者として来日する人は多く、来てからその期待は裏切られることが多いと聞く。
ただ好きなアニメについて話すグエンさんを見て、楽しんでいる様子がした。
仕事について聞くと「社寮もあって、そこに同じベトナム人の友達もいるし寂しくない。
ただ日本語を話す機会がないけどね。給料も労働環境も悪くないよ。ご飯も美味しい。不満があるとすれば、石川は寒いね。」と笑いながら語ってくれた。
グエンさんも外国人労働者受け入れ拡大について知っており、故郷の友達に教えているという。それを聞いた僕が過去に石川県でも起きた“闇”の側面について教えると、少し黙ってから「怖いね,,,」とだけ呟いた。
やはり来日する人の目には“光”の側面のみが写りがちなのだろうか。

グエンさんと話をして過去に読んだ記事の一節が浮かんだ。

<移民は人間だ。言葉を話して、学んで、働く。どこに住むか、誰と暮らすか。一人一人が違っていて、一人一人が悩んでいる>
(NewsWeek日本版 12/11より)

ただ同じ車両に乗り合わせただけの関係だから深く聞くことはしなかったが、グエンさんにも色々と考えることはあると思う。記事に書かれていたことを身をもって経験した。
加賀市に住む外国人も同じ寒さを感じ、休みの日には金沢に観光にだって行く。僕と何も変わらない日常を過ごしている。

今回の出会いを通して、彼は石川県、さらにニッチに言えば加賀市の一員として見ることができると感じた。
受け入れ拡大により、僕の地元に外国人労働者は増えるだろう。地元はゴーストタウンとなりつつある、いやなっている。
彼らが「労働力」としてだけでなく、同じ「石川県人」として見なされ、地域活性化に繋がればいいと思う。

日々のふとした出会いに感謝。
グエンさん、良いお年を。

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