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短歌60「三つ編み燃える」

2023年に某賞に出した短歌です。50首。たくさん。。
さらっと読んでいただけたら幸いです。下手なので。。


地に何があるか知らずに雪は降る だからわたしを抱(いだ)いたりする

上顎にメンソール吸い吐き出して写真と同じ三つ編みを編む

あかあかと踏み散らかした残り火を思い出とする十七の頃

委員会活動成果報告会 「円滑」って便利しかない

学校の防風林を切り倒す 息したかった息したかったね

若いからとか性欲がとか違う チューリップからの大脱走

オリオンはわたしを見てた 姥捨の山から降りる雪の坂道

二十連花火を撃ち合う男子達ばかでかなしい夏は終わるよ

合格で一万分の本を買う ようこそうちへビリー・ミリガン

塾からの帰りのバスはみな大人開く文庫は連続殺人

真冬日の自販のアイス噛み切って言葉依存のふたりの地雷

寝る子って怒られなくて明け方の彗星のような病はじまる

はじめての空港ロビー、骨になる人待つロビー、よく似たひかり

金縛り霊のせいではなかったな銀の冠ナルコレプシー

髪を切ることをどうして気の迷い扱いするの虹を食う虫

暑い日に服を脱ぎ捨て脱ぎ捨てて野生に還る繋ぎ目のない

タチアオイきみを連れてゆくひとの白い怖い手 吊り革掴む

千メートル走る時の心の声イチニじゃなくていつもウノドス

公園で影になるまで語らって来るパトランプぼんやりと見る

氷舐め安全圏でサバンナを思う キリンに挑むハイエナ

百日紅見たことないしニセの夢 冷たい指の東京のひと

バスの中カセットテープを巻き戻す逆回転のバレリーナめく

先生と山田詠美の新刊の話する時 委員長の耳

街灯の影が伸びてて檻である妹ピンク姉だから青の

眠るときラジオが細く遠ざかるミラーボールは豆電球に

ぬばたまのアイスコーヒーとめどなく汗を吹き出しきみ見られない

パトカーに叱られた坂ふたり乗り認められずに生きてたつもり

「嫌い」だけ禁句のきみが背負うもの知らないままで同じ墓にいる

一生に一度の愛はあげちゃった露草が開く群生している

ももタルト死んだりしない崩れても夏の礼拝かぶりつく水

艦橋に似たベランダを気に入った 通る神輿に手を振ったこと

父の忌にビアガーデンを予約して船頭のない夜に漕ぎ出す

移動する自分が離れ脱げていくライトは溶けて夜のドライブ

手のかかるライター使い煙草吸う真冬震わす金属音

ひとがくれた好きをマフラーとして巻く右手の黒い鉛筆の跡

寄せる肩なくなっても変わっても守るし許す本当に笑う

めちゃくちゃに低音効いたヘッドホン夜の水晶探して歩く

台風が北海道を舐めるからきみはチェス盤守るといいよ

夏の中熱いバスゆく霊廟のようなエアコン爪が冷たい

四十なる妹と手を握る道 子のないふたり空の聖杯

屋上にはじめて出たら脳みそが吹っ飛びそうだ視界が青だ

納骨は優しくしてね思い出が散り散りになる憎まれたこと

熱くなる墓石に水を打つ姉妹 喧嘩してまで真似てみたくて

思ってていつもわたしを札幌がホワイトアウトする日みたいに

卒業の日に目を閉じて死んだんだ春の日差しに燃える三つ編み

大気吸う 風が甘くて辿ったらカラスの握る熟したすもも

地下鉄で眠るあなたの隙を見て三つ編み触れる 地上出るとき

よく泣いたわたしのことを髪を梳き小鳥と言った きみ 舌 燃える

きみの声聞きたくなくて開け放つ噴水割れた青いガーデン

皮ごとのももなんて初、ハレルヤとナイフ入れたり、つ、と音がする
 
 

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