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エッセンシュピール2022 - 期待するゲーム10選(Spiel 2022 - my top 10 anticipated games)

本記事は、Anthony Faber氏が2022年9月15日に投稿した「Spiel 2022 - my top 10 anticipated games」の翻訳である。

Spielとは、ドイツの地方都市エッセンで毎年開催されている世界最大級のボードゲームイベントの1つである(単に「エッセン」や「エッセンシュピール」と呼ばれることも多い。)。今年のSpielは、10月6日から10月9日まで開催されるようだ。毎年多くの新作・最新作が発表される場でもあり、今年は現時点で1111作品が登録されている(ここで見ることができる。)。

本記事は、このnoteではお馴染みのAnthony Faber氏が今年のエッセンにおける注目作10選を語る内容となっている。汎用性のある記事ではない。一般化できる内容でもない。そうとはいえ、こういう記事を読むのは楽しいと思って翻訳した。エッセン前に翻訳を終えるために、ややいつもよりも翻訳の解像度は低くなっているかもしれない。

たくさんの情報が溢れている中で、ほとんどポイントを明示しないまま、ただただBGGのリンク先をたれ流すだけでは芸がない。また、情報としての価値は極めて小さい。少しばかりの情報を付記しておくだけでも、差別化を図ることができるはずだ。本記事は、そういう意味でも意義があるように思われる。かつては、テンデイズTV等で「エッセン 注目作はこれだ!」という企画があり、一定の情報が供給されていたように思う。同企画が復活することを願ってやまない。

元記事は以下のリンク先を参照されたい。また、ヘッダー画像は、Joakim Schön氏から引用させていただいた。

もし、字を読むよりも耳で聞きたいというのであれば、ポッドキャスト「Two Wood for a Wheat」の最新回をチェックしてほしい。そこでは、私自身のエッセンシュピール2022における期待作だけでなく、共同ホストであるPat FlanneryとMitch Manzellaの期待作についても聞くことができる。

期待してわくわくしながら待つこと以上に楽しいことなんてないさ。こういう理由で、私は、毎年、一番楽しい気持ちでこの記事を書くことができている。中量級のユーロゲームが私の好みであり、毎年、エッセンシュピールでは、数えきれないほどの数の中量級のユーロゲームが出展されている。じゃあ、取り掛かろうか。

選外佳作

クレジット: Maurizio Masini

これらのゲームを楽しみにしているのだが、以前、2022年の最も期待する作品という記事の中で大々的に話をしたことから、このリストには載せなかった。別の記事で上位10作品に挙げられている作品を、(※この記事の)上位10作品に挙げたくなかったんだよね。

おそらく、以前に議論した中で私が最も期待するゲームは「ティルトゥム」で、Simone LucianiDaniele Tasciniが、最初にタッグを組んでから5年以上が経過して、再びタッグを組んだゲームになる。このゲームは、Board&DiceのTシリーズ(※ここにまとまっているが、「兵馬俑」はTシリーズではないようだ。)のゲームだが、一見すると、旅とダイスのメカニズムの部分は、Daniele Tasciniというよりも、少しSimone Luciani寄りな気がしている。厳しいダイスのトレードオフは、両デザイナーのトレードマークだ。それに、プレイヤーが取った各ダイスによってリソースを与えられるけれど、選択したアクション全体の強さに反比例してリソースが減っていくというところが特に気に入っている。

クレジット: Yorgo Manis

私のお気に入りのデザイナーが手がけた他のゲームのうち、私が既に話をしたものとして、Vladimír Suchýの「Woodcraft」(※Ross Arnoldとの共作)と、Stan Kordonskiyの「Endless Winter: Paleoamericans」がある。後者は、既にプレイし始めている。クラウドファンディングのゲームの中では、「メルフ」と「ニュートン」のデザイナーがチームを組んだ、美しくて複雑な「Autobahn」をいまだに心待ちにしている。最後に、まだゲームプレイについてやや不透明な点があるが、Jonny Pacの「Unconscious Mind」だ。マジで素晴らしく見えるのは、Andrew BosleyVincent Dutraitのアートと、ワーカープレイスメントを用いて方法論を発展させていくことを組み合わせた精神分析学というテーマだね。

10 「Evergreen

クレジット: Alessandro Pra'

Hjalmar Hachは、ゲーマーの中には知らない人もいるデザイナーの1人だが、そんな人でも彼のゲームを知っているはずだ。二、三個挙げると、「キングスジレンマ」、「Photosynthesis」、「レイルロード・インク」、「覇王龍城」がある。「Evergreen」では、Hachは、プレイヤーにバイオーム(biomes, ※生物群系)を構築させる。そのバイオームにおいて、「Photosynthesis」でみられた、植物が光を求めてお互いを押しのけるというアイディアをもっと洗練させた形のアイディアにしている。

引き取り手のないカードによって、そのカードと関連している地域が更に肥沃になり、プレイヤーが自分の惑星に係る異なるエリアのバランスを取る必要が出てくるという発想が好きだ。そして、こういったオープンドラフトゲームが、最近、私の中ですくすくと成長して病みつきになってるんだ(※grow onには、(植物が)成長する/だんだん(関心・好意等が)大きくなる・募るという意味があり、ダブルミーニングとなる。)。

9 「Applejack

クレジット: Thorsten Hanson

Uwe Rosenbergのもうすぐ発売される多くの作品の中で、この作品のタイトルが最も好きだね。このタイトルは、子供の頃に貪り食った甘いシリアルと超アルコール度数の高い(ultrastrong)フルーツブランデー(※通常、ブランデーはワインを蒸留して作った酒を指すが、ぶどう以外の果物から作ったブランデーを意味する。)の両方を想起させる。このゲームは、単にりんごとハチミツをテーマにしているように思われるが、それはそれでいい感じだ。

私がこのゲームを魅力的だと感じた理由は単純さだ。私が好きなゲームは、ドラフトをして、各ラウンドでタイルを1枚だけ置いていき、制約のあるプレイヤーのエリアで構築されたパターンや隣接関係に基づいてゲーム終了時に得点が入るというものだ。「キャリコ」は、この種のゲームにおける私の代表的な例(my poster child)になるかもしれない。「Applejack」は、Uweのより小箱のゲームである「パッチワーク」やその後に発売されたポリオミノ三部作(※「コテージガーデン」、「インディアンサマー」、「スプリングメドウ・春の草原」のこと)よりも、軽いゲームのように思われる。けれども、このゲームは、いまだに考え込むようなゲーム(thinky)に見えるし、アート、テーマ、アイディアは興味をそそるように思える。

8 「兵馬俑

クレジット: Kacper Frydrykiewicz

Adam Kwapińskiは、Board&Diceから出版された素晴らしい作品である「オリジンズ:ファーストビルダーズ」を伴ってユーロゲーム界に参入する前は、「ネメシス」や「Lords of Hellas」のような紛争系ゲームで主に知られていた。彼の次作のユーロゲームは、共同デザイナーと、ゲームのタイトルの元となったミニチュアを展開することから生じるエリアコントロールプレイが特色となっている。

最も興味をそそる点は、独立して回転させることができる同心円状の3つの輪に基づいたワーカープレイスメントシステムだ。同心円の外側にワーカーを配置すると、その上の3つの円全てのスペース(※に記載されているリソース)が得られる。つまり、プレイヤーは、全てが必要ではないかもしれないアクションのまとまりを選択させられることになるので、やや結合されたドラフト(conjoined drafting, ※セットとなった組合せをドラフトするという意味合い)のようなプレイ感となっている。また、プレイヤーは、貴重なリソースを消費して輪を回転させることができ、重要な場面においてアクションのまとまりをカスタマイズすることができる。この最後の要素は、個人的には身構えてしまう(wary)。ワーカーを配置する場所の設定を変化させると、自分の手を計画するのを難しくさせることになるので、分析麻痺を引き起こす材料(recipe)となり得るからね。

7 「Tribes of the Wind

クレジット: Benoit Bannier

見事なVincent Dutraitの箱絵のあるもう1つのゲームがあり、宮崎駿の航空装置に対する偏愛を表現しているように思われるものとなっている。このゲームのテーマも、プレイヤーが世界滅亡後の探検家となって汚染された過去の世界を建て直すというもので、特定の宮崎駿の映画作品に通ずるものがある。

ゲームメカニズム的には、対戦相手が既にボード上にプレイしたカードによって、プレイヤーのカード効果が修正を受けるというアイディアが魅力的に写る。このデザイナーの過去のデザインは、「ワイルドスペース」というかなり過小評価されている小箱のカードゲームだった。だから、私は、より大箱となったタイル配置ゲームにおいて、彼がどう調理したかをみることに興味をそそられているよ。

6 「Lacrimosa

クレジット: Devir Iberia

このゲームは、メカニクスについては曖昧なままだし、このデザイナーは私のよく知っている作品を作っていないことがあって、ほとんどテーマだけでこのリストに挙げることにした。このゲームでは、プレイヤーは、アマデウス・モーツァルトのスポンサーとなって、彼の死の直後にレクイエムを完成させるため、作曲家に依頼することになる。どうもこのゲームは、5つの異なる時代で展開されるらしい。つまり、既に言及した時代に加えて、もっと以前のプレイヤーが積極的にモーツァルトを支援しているいくつかの時代で構成されている。

このゲームがどうやったら上手く機能するかほとんど分からない。一見すると、空間的な移動(spatial movement)、バッグビルド、そして、察しがついたかと思うけど、オープンドラフトがある。このゲームは、見事にも大コケするかもしれない。けれども、このゲームがどのように展開するのか見る必要があると思う。私は、Devirが、このイカれたアイディアをデベロップしてプレイする価値のあるゲームに仕上げるのに十分な信頼のおける出版社であると信じてるよ。

5 「Sabika

クレジット: David Prieto

昨年、重量級ゲームのデザイナーから発表された「ブーンレイク」、「ゴーレム」、「アーク・ノヴァ 新たなる方舟」等のあらゆる重いユーロゲームにおいて、私のお気に入りは、新人デザイナーが手がけてDevirから出版された美しいゲームである、Germán P. Millánの「美徳」だったかもしれない。彼の次作は、一見すると、3つの結合したロンデルが特徴的のように思える。私が知りたかったことはこれで全部だ。手に入れることにしたね!

このゲームのテーマは、交易ルートを開拓して王のために建物を建設するという古臭くて決まりきったものの寄せ集めだ。けれども、このゲームの見た目とメカニズムは、めちゃくちゃわくわくさせてくれるように思える。このゲームのロンデルは、一見すると、集中的で複雑なデザインのように見えるあらゆる要素を制御するようだ。

4 「Come Together

クレジット: Eilif Svensson

私は音楽テーマに対して弱く、ウッドストック(※1969年に開催されたロックやフォークを中心とした伝説的な野外フェスの1つとされる。)的な音楽フェスに基づいたゲームのように見えると、途端に反応してしまう。プレイヤーは、バンドを雇い、彼らを宣伝し、異なるステージでライブを開き(put on shows)、バスへ撤退する。サイケデリックな雰囲気がアートワークに広がっているし、「The Magnificent」、「Trails of Tucana」、「Santa Maria」やそのほか多くの素晴らしいゲームを手がけたEilif Svenssonを含むデザインチームによって、メカニズムがテーマに見合う内容になっていると信頼できるね。

特に心惹かれるのは、ゲームのワーカー配置において遅延した報酬システムがあるところだ。ある場所における完全な利益は、誰かがそのエリアを具体的に起動させる(activates)まで得られない。そして、アクションの強さはそこに配置したプレイヤーの数によって定まるみたいだ。私たちのポッドギャストの共同ホストの1人は、根はヒッピーミュージシャンで、私たちがこのゲームを一緒に遊べば楽しい時間を過ごせることは間違いないね。

3 「Terra Nova

クレジット: W. Eric Martin

私は完全な偽善者だ。私は、通常、このリストから再販や改訂(reimplementations)を除いて、本当の新作ゲームの選りすぐりををみんなに提供している。こういうわけで、「スカイマイン」がこのリストには挙がってない。しかし、私は屈することにして、"60分で「テラミスティカ」を"というキャッチフレーズを持つこのゲームを含めることにした。

この野心的な試みを成功させようとする新人デザイナーを信じるべきなのだろうか。そもそも、この目標は達成可能なものなのだろうか。わからないよね。けど、期待しているのは間違いないね。どこにもPDFのルールは見当たらない(※現在は、出版社であるCapstone Gamesのサイト上で見られる。)が、画像では単純化されたプレイヤーボードとパワーボールと一緒に、「テラミスティカ」に似たボードを写している。おそらく、このゲームは、ボード上でのプレイに焦点を当てるために、スペシャルアクション、恩寵、町タイルを簡素化しているだろう。それがどう展開していくかをみたいね。私は、「テラミスティカ」の大ファンで、友人がこのゲームが複雑で容赦がなさすぎるという理由で遊んでくれないと悲しくなってしまう。私がもっと多くの人たちと遊べるようになるくらい大ヒットしてくれることを願ってるさ。

2 「Revive

クレジット: Kristian Amundsen Østby

このゲームは、破壊された地球を再建するもう1つのゲーム(※「Tribes of the Wind」が別にある。)で、世界中で噂となっていて早期のレビュアーからも賞賛を得ているようだ。そして、私は、従順にその流れに身を任せている(following the herd)。このゲームは、「Come Together」を発売する才能あるノルウェー人(※Eilif Svenssonのこと)のもう1つのゲームでもあり、プレイヤー固有能力、テックツリー、モジュラーセットアップ、多目的カードなどなど、私のお気に入りのメカニズムの最高のヒット集のように思われる。

キャンペーンがあるけれど、私はほとんど気にかけてない。直接的なネガティブさとは対照的に、ポジティブなテーマとレース風のインタラクションを軸にしたエンジンビルドの雰囲気が好きだ。プレイヤーボードはダブルレイヤーで入り組んでいる。アートワークはユニークで色鮮やかだ。はっきりと見定めることができないけど、明るくてたまらないほど魅力的な個々の要素を超えた何かがある。多分、私にとって荒れた(rough)1年となったからかもしれない。そして、再生というテーマが私の心を揺さぶるわけだ。

1 「Atiwa

クレジット: W. Eric Martin

最後に、多くのコンテンツクリエイターが"フルーツバット(※オオコウモリ)ゲーム"と呼んでいるゲームになる。Uwe Rosenbergが発表した内容の濃いユーロゲームというだけで、このリストに挙げる十分な理由となると思う。しかし、このゲームは、どのようにプレイヤーの小さな生態系を形成させるかについて非常に巧妙な押し引きがあるように思える。一見すると、プレイヤーは、種をまくためにフルーツバットが必要のようだ。しかし、フルーツバット自体は、特にスペースに関する前提条件がある。

Uweのゲームであるから、ワーカーの配置場所があって、動くと成長する要素(things that grow when set in motion, ※ここの訳には自信がない)や、固有能力がある。このゲームのテーマは、Uweのいつもの漁業や農業といったテーマよりも温かみがあるように思えるし、初期のレポートでは非常に高評価となっている。

さいごに

これで終わりだ。みんなが期待しているゲームがどれかコメント欄で教えてほしい。それに、もちろん、BGGの素晴らしいプレビューリストとソーティングシステムにも感謝したい。そのおかげで、みんなや私のような野郎どもが、多くの新作ゲームがよだれを垂らして欲しがることができている。それでは、次回まで。読んでくれてありがとう。

以上

※Anthony Faber氏の記事として、以下のものがある。

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