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季節外れのWHITE ALBUM①~icからccまで~

Fateは文学
CLANNADは人生

と言われるが、私はここに

WHITE ALBUM2は文学

と高らかに宣言したい。でも人生には絶対にしたくない(笑)

本記事はWHITE ALBUM2 Extended Editionの感想を書き連ねたものです。未プレイの方にはネタバレだったり意味不明だったりで百害あって一利なしです。よろしければプレイしてから再度お越しいただけると幸いです(布教)。18歳以上でPC版を購入する方にはダウンロード版ではなく特典ディスク付きのパッケージ版を強くお勧めします。特典コンテンツなしには味わいが半減です。しかもAmazonならダウンロード版より安く買えます。

それと、推奨プレイ順があるので参考にどうぞ(ネタバレなし)。

ここからは感想をつぶやいていくだけという体で、だ・である調でいかせていただきます。

introductory chapter

ジェットコースターが発車してゆっくり頂点に上っていく感覚。頂点に近づくにつれてだんだんゆっくりになっていってもう落ち始めるかと思うけどまだ落ちない、それでも急降下の予感は確かにじわじわと増してくる感覚。「くる…くるぞ……」という感覚。
文化祭あたりまでプレイしながら感じたのはまさにこの感覚だった。

序盤は雪菜がぐいぐい好き好きアピールしてきてふつうにかわいい。逆にいえばicでは雪菜に対しては“ふつう”にかわいい以上の印象はなかった。一方のかずさは途中まで春希のことがどれくらい好きで、どんなところが好きなのかわかりづらかった。

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しかしこのシーンで、いつも強がっているかずさが実はとても弱く、春希を必要としていることが示唆される。春希と雪菜の電話での会話を聞きながら「………」と無言の反応をするかずさ。息遣いだけで微笑、不安、嫉妬が演じ分けられている。


雪菜と付き合うことになってもかずさのことが忘れられない春希。その気持ちはなんとなく共感できてしまう。心の底から本気で異性を好きになれることは、きっとそう多くはない。そしてその気持ちは、たとえ他の異性と付き合うことになっても簡単に拭い去ることはできないのだ。もしそれが簡単にできたとすれば、その時点で初めから本気ではなかったのだから。
だから温泉旅行の帰り、春希は雪菜の身体を記憶に刻み込もうとする。その感触が生々しく残っている間はかずさのことを思い出さずにすむから。男子ならそういうこともあるだろう。そんな理由で求められた雪菜からすればたまったものじゃないと思うけど。

しかし雪菜の告白を受け入れた以上、かずさへの想いは心の中にしまっておくべきだった。あるいは雪菜と話し合って二人の関係の中で消化するべきだった。
それをかずさ本人にぶつけてしまったことから運命は決定的に崩壊していく。ぼやけた答が少しどころかはっきりと見えてしまっては、この恋が動き始めるのを止めることなどできるはずもなかった。

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かずさが初めて感情をむき出しにして春希への想いを明らかにする。

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春希に迫られて余裕を失い、いつもの強がった口調ではなく素の女の子が出てしまうかずさ。
雪菜の敬語といい、こういうちょっとした言葉遣いに心の動きを反映させつつ、しかもそれがプレイヤーの心をくすぐるものになってる丸戸先生すごすぎ問題。

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かずさ………しんどい……


かずさが最後の別れを告げに春希の家のそばまで行ったところを偶然発見され、二人は結ばれる。しかしいざ一つになろうとした瞬間、雪菜からの電話が鳴る。逡巡しながら電話に手を伸ばす春希に、かずさが飛びつく。
思えば、かずさが意識のある春希に自分からキスするのはこのときだけなのだ。
こんなギリギリの土壇場にならないと愛する男を自分の腕で掴み取れないなんて…。そりゃあ、押せ押せの雪菜は脅威の天敵だわな。

「あ、あ…あたし…言えばよかった…
カッコなんか、つけなきゃよかった…」

ほんとに…どうしてカッコなんかつけちゃったんだろうな…。

雪が解け、そして雪が降るまで

かずさの見え方がガラッと変わる。忠犬かずさの大冒険。
強がってるけど心はめっちゃ乙女。かずさかわいいよかずさ。

二人きりの放課後の教室や公園のベンチに緊張するかずさ。
いきなりのプレゼントに期待しまくりのかずさ。
ストレス解消に服やアクセサリーをヤケ買いするかずさ。

…書いた行数をかずさの回数が上回っているのは自覚しているのでそろそろ落ち着くことにする。

「友達がどんどんピアノ教室から脱落していき、徐々に交流がなくなってしま」い、幼少時から孤高の天才だったことがうかがえる。
子供から友達をとってしまえば残るものは多くない。だから母とピアノがかずさの世界のすべてだった。その母から捨てられ、世界すべてとその象徴たるピアノを憎むようになった。やがて憎むことにも疲れ、周囲に無関心になっていった。

そこに無関心を許さない超絶お節介委員長が現れる。無視できないほどの憤りを覚えながらも、理解できないからこそ嫌うのがためらわれるかずさってホント根はいいやつだな。

音楽に対してだけは素直になれるかずさは、音楽を介してギター君こと春希に関心を持ち、強く意識するようになっていく。

そんな彼からの緊張と真心のこもったプレゼントは全力投球の敬遠だった(逆にストライクゾーンど真ん中の直球勝負だったときの反応も非常に気になる)。
思いっきり肩すかしをくらっても土砂降りの中を深夜3時まで探してしまう忠犬のいじらしさよ…。
このとき、かずさは春希との絆に大きな未練があることを認めた。世界はそれを愛と呼ぶんだが、果たして分かっていたんだろうか。

祭りの前~ふたりの二十四時間~

『祭りの後』への布石となるエピソード。
『届かない恋』の歌詞に込められたメッセージを敏感に感じ取った雪菜と、知らぬ存ぜぬを貫き通すかずさの丁々発止のガールズトーク。
中学生の恋vs小学生の恋(笑)
しかし会話の真意がわかってくるにつれて、楽しげな雰囲気の裏に隠された女同士の熾烈なつばぜり合いが姿を現す。
き、君たち友達なんだよね…?(困惑)

春希くんが迎えにきてくれた、駆け落ちみたいだった、手をつないできたんだよ、という雪菜の挑発に嫉妬せず嫌味でいなし、そこはかとない余裕を漂わせるかずさ。
敵情視察よろしくカマ(というには直接的すぎるが)をかけまくる雪菜。
かずさが『届かない恋』を女の歌だと思っている時点で春希の気持ちには気付いていない。お前の恋は届かないよ、なんて好きな人に言われたら死刑宣告だわな…。
それでもこの歌にモデルなどいないと突っぱねるあたり、恋敵に敗北宣言をするほど女のプライドを捨ててはいないということか。

…。

しかしこれでは満ち足りた態度の説明がつかなくないか?かずさが春希の気持ちに気付いていると思って読みなおすとどうなるか。
もう気持ちは分かってしまったのだから雪菜に取られる心配は少なくなった。だから届かない恋をするのはお前の方だ、と思いながら雪菜に歌わせていた。「学園のアイドルが歌うにはイメージが違う」という言葉は似合わないけどざまぁって意味…かずさェ…
乙女なかずさは春希の方から告白してくれるのを待っていた。そうしたら相手は想像以上の鈍感チキン野郎でかずさの気持ちに気付かず、告白してもくれないまま寝落ちしてしまった。この退屈な男め、とからかってキスしたら恋敵にそれを見られて油揚げをかっさらわれてしまった
…って誰がこんな性悪なのに間抜けなヒロイン好きになるか!icで泣けなくなるわ。このセンはなし!

閑話休題。

満ち足りていたのはかずさが生粋の芸術家で、失恋を作品に昇華できたからかもしれない。ic本編で「小木曽と…つきあうのか?」って言ってるし。
『冴えカノ』で霞ヶ丘詩羽が加藤恵に瑠璃を演じさせたように、雪菜に『届かない恋』を歌ってもらうことで自分の想いに区切りをつけようとしていたのではないか。

好きな男の子カミングアウト大会でチキるかずさ(笑)雪菜が6回「嘘つき」と罵るのはお約束。
かずさの側からすれば、負け戦に名乗りを上げるほど勇敢ではなかったのだろう。
勝機を見出した雪菜は「そんなことばかり言ってると取っちゃうぞ?」「勝手にすれば」「いいの?」と言質を取る。ううん、したたか。

それでも正々堂々と宣戦布告した雪菜は、かずさへの春希の想いを乗せて『届かない恋』を歌う決意をする。それができるだけの心の余裕が生まれたのだろう。
かずさはこの時点でまだ何一つ勝てていないから雪菜のことを名前で呼べなかった。学園祭の後、名前で呼び合うようになるのは春希の本当のファーストキスはもらっていたからか。

「……嫌なわけないだろ。楽しくないわけないだろ。嬉しくないわけないだろ。
聞かなきゃわからないのかよ、そんなことまで…っ」
「ホント、あまりにも退屈すぎてさ…からかって、やりたくなるじゃないかよ…」
ふられ、好意にも気付いてもらえず、かずさは負け惜しみと別れのキスをする。
じゃあなんだってんですか、かずさが負けたと思い込んでキスしたせいで雪菜が燃え上がっちゃって本当に春希を取られちゃったっていうんですかい?うひゃあ。かずさ、裏目に出すぎ。

↓↓↓2020/6/18追記↓↓↓

『届かない恋、届いた』に答が全部書いてあった。そのときのかずさの自己認識は孤独ではなかったから歌詞のモデルが自分だとは思わなかったのだ。
だから、ステージ後のかずさはふられたと思っていたわけではないけれど、想いは届かないとは思ったということになる。

↑↑↑追記ここまで↑↑↑

祭りの後~雪菜の三十分~

3人の立ち位置を明らかにして絶妙なバランスを描き出しており、短いながらも物語上とても重要なエピソード。かずさは卑怯だし雪菜は泥棒猫だし春希は優柔不断だった。この時点では誰もが同様に悪く、決して一人のせいで起こった悲劇ではなかったことがわかる。そして誰もが傷つきながらも一人で罪を抱え込み、自己嫌悪に陥っていく。

それにしても雪菜の心理描写が上手すぎる。WHITE ALBUM2はマジ文学。
春希に良く思われ、抱きしめられやすくしようとする計算高さ。
かずさの恋を応援しようとする理性と、どうしてと怨嗟の声をあげる感情。
思い止まらなければと警告する心と、動き出したら止まらない身体。
友達を裏切ってはいけないという純粋な”女の子”と、愛する男を自分のものにしたいという強欲な“女”。
呵責と、歓喜。
これが春希視点のic本編では見えなかった人間臭い女の子、小木曽雪菜の心の内。あの告白シーンの満面の笑みの裏側でこんな葛藤を抱え込みながら演技していたなんて…春希ともども完全に騙されていた。

それにしても「あまりにも黒い勝利の雄叫び」って…庶民的清純派美少女のイメージぶち壊しw

introductory chapter2周目

主にかずさ関連のシーンが追加され、その想いの深さと悲しみがより強く印象付けられていく。

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号泣。
私の感受性では文字だけでは絶対に泣けないけれど、声優さんの演技が魂を吹き込んで心を揺さぶってくる。

露天風呂で背中合わせのときも心の中では泣いていたんじゃないだろうか。こっそりキスしようとしたときと同じようなことを思いながら。

「ホント、勝てない…」

↓↓↓2020/6/10追記↓↓↓

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春希に感謝を伝えたくても、思う通りに言葉が出なくて気持ちが伝わらないもどかしさ。雪菜のようには、できない…。

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言葉で伝えられないならキスで…
溢れる気持ちを抑えきれないかずさ。

しかもこの後、春希と雪菜のいつもより激しいイチャイチャ(これ、いつも家族とかご近所さんに見られてると思うんだけどね)
からのかずさ号泣なんだよな…。

「誰かの願いが叶うころ あの子が泣いてるよ」ってやつだ。

↑↑↑追記ここまで↑↑↑


というわけで春希ともどもかずさに心を持っていかれたintroductory chapterだった。5年間遠く離れた春希を想い続けるという設定にしっかり説得力を持たせるとともに、closing chapterでは出番が減る分、かずさの印象をプレイヤーに強烈に刻み付けるのがこのパートの役割だったのではないだろうか。

しんどい。

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