見出し画像

ゲームマーケット初出展で自作のボードゲーム380個を売った話 - 当日・収支まとめ編

いよいよ当日

ルールを作り、コンポーネントを作り、パッケージを作り、説明書を作り、印刷し、仕入れをし、箱詰めをし、プロモーションし、ブース設計し、チラシや動画を作り、設営し…と長い道のりでしたが、いよいよ当日です。ちなみに、既にお金は100万円以上掛かっています。

実際どれぐらい購入してもらえるかは全く分かりませんでしたが、打てる手は全て打ってのスタートだったので、それなりに自信はありました。何より、自分にしか作れなさそうな作品が完成していたので、これをきちんと伝えたいと思いました。

というわけで、当日の様子と、今までに考えて打ってきた手が実際どうだったか、収支やゲムマ後の反応について紹介します。

開幕

ゲームマーケット2018秋は10:00に開場して一般参加者が入場し、17:00に閉場、これが土曜と日曜の二日間行われるというスケジュールでした。近年では開場前に、ゲームマーケット会場に入るための行列(待機列)がかなり出来るようで、開場と同時にいきなり人がたくさん入ってきます。会場は常にそれなりの数の来場者で満たされている感じになります。

ブースの配置

今回、振り返ってみると、ブースの配置がかなり良かったということを書いておかなければなりません。配置は完全に運営の裁量で決められるため、ラッキーでした。

自分のブースはB23に配置されました。上のマップだとサイズ感が分かりにくいですが、大通りに面していたのです。一般ブースが左下のC〜Kに配置されていたため、ここに行く人はほぼ全員、Bのエリア、もっと言うと自分のブースの前の道を通るレイアウトになっていたのです。

これによって、お客さんの目に触れる機会が増えたのは確実だと思います。

接客

接客は、準備・設営編で書いた、近距離用の武器(チラシ、説明動画、対面での説明)を駆使して行いました。各武器の意図と効用は前のnoteに書いていますのでそちらを見てください。

基本的に、道行く人や、ブースに近づいて来てくれた人に、チラシを配りまくりました。それによって足を止めてくれる人や、より興味を持って、ブースに配置されているものを見てくれる人は多かったように思います。あまりお客さんが引かずに興味を持ってくれるように、チラシは出来るだけ、爽やかアンド軽い感じで渡すようにしてました。

説明を求められた時は、快く応じます。また、今回試してみて分かったのですが、「チラシと長いこと睨めっこしながらブースの前にずっと居る人」「説明書を読んでいる人」は高確率で、詳しい説明を求めています。ただ、無言で去って行く人が多いので、そういう人を見かけたら積極的に「良かったらご説明しましょうか?」と声を掛けていました。大抵の場合、興味を持って説明を聞いてくれます。

説明が刺さっていそうだったり、「おもしろそう」というワードが聞こえた時は、出来るだけ購入すると嬉しいポイント(繰り返し遊べる、長く遊べる、友達とやったら絶対盛り上がる、など)を言って、背中を押していました。押し売りというわけではないのですが、お客さんとしても、作品に自信を持っているところから買いたいでしょうから、魅力を伝えるのを惜しまないということです。

やはり説明を聞いて買ってくれる人は多かったです。自分の作品を自分で説明して買ってもらえるという体験は感慨深いです。一度説明を聞いてブースを離れた後、戻ってきて購入してくれた人が何人か居たのも印象的でした。

ブースに来てから、わりと即決で購入してくれる人も多かったです。購入するかどうかの判断は、見た目や、ユニークさやおもしろさが刺さるかどうかがほとんどだと思います。事前のプロモーションや、ブースの作り、チラシでこの辺を分かりやすくしたのが功を奏したと思います。

動画もそれなりの効果がありましたが、やはりチラシと対面での説明の威力が凄かったので、一歩及ばずという感じでした。

プロモーションの効果

プロモーション編で説明した通り、事前に「あ、これ知ってる」の状態を作ることを目指したわけですが、これは比較的成功したと言えます。ブースに来た人が、既に何かしら知った上で来てくれているパターンが結構ありました。

その中でもやはり「Twitterで動画を見て」とか「動画がすごくて」とか言われることが多かったです(動画はカチカンモンスターズのコンポーネント紹介動画)。分かりやすく効果的なプロモショーンだったと思います。

ほか、Twitterやゲームマーケット公式ブログで「作品を見かけて気になって」という人も結構居ました。作品の情報を事前にきちんと発信して、「気になる」という状態を作っておくことが大事なようです。

ブースに向かって、半ば絶叫に近い声で「ぎゃー!これこれ!!!さがしてたやつ!!!!」みたいなことを言いながら走ってきた人が居たのがとにかく印象的でした。そこまで気にしてくれる人も居るんだ…と思いました。自分の予想を遥かに超えて、プロモーションの効果が分かった瞬間でした。

作品に対する反応

作品に対する、現地やTwitterでの反応は、想像以上でした。自分が意図したおもしろさが、きちんとルールから再現されて、遊んでくれた人に伝わっているというのが、不思議な感覚でもあり、嬉しかったです。

特にカチカンモンスターズは、「会話が生まれやすい」という点が刺さったのではないかと思います。また、繰り返し遊んでくれている人を多く見かけるのも印象的でした。人の価値観のランダム性をゲームの主軸に据える上で、それらのことは意図してルールを作っていった訳ですが、想定以上にうまく機能したようです。

初日にカチカンモンスターズを購入してくださったボドゲカフェの方が、二日目に、「昨晩ホテルでやったらめっちゃ面白くて、絶対よく回るから、付箋すぐ無くなっちゃうと思って」と、付箋のリフィルを大量に買いに来てくれたのが印象的でした。

Twitterでもたくさん感想を頂けて、こんなに貰えるとは思ってもいませんでした。皆さんにたくさん遊んでいただく中で、「付箋に書く内容を縛るのもオススメ」や「付箋に書くことが思い浮かばなくなったらマスターに一個書いて自分で貼ってもらう」など、独自ルールが生まれて広まっていたのも面白い現象でした。

あとパッケージデザイン編で書いた思惑通り、SNSにアップされているカチカンモンスターズのパッケージはかなり目を惹いて印象に残りますね。これはニヤリという感じです。

キリンフォトは、多分そもそも期待値のハードルが低かったと思います。なので、「今までにないプレイ感」と「意外とゲームになってる」という点がウケたのではないかと思います。カチカンモンスターズほどではありませんでしたが、良い反応を多く頂けました。まだ見ぬおもしろさをゲームに落とし込む試みがそれなりにうまくいったと言えます。

予想外だったこと

相当な準備をして臨んだゲームマーケットだったわけですが、予想外だったことがふたつありました。

まずひとつめが、チラシが日曜のお昼に無くなってしまったことです。800枚刷ったので十分だろうと思って持っていったのですが、見積もりが甘かったです。ガンガン配ると普通に無くなってしまいますね。

チラシは最強の武器なので、チラシが切れてしまった後はちょっと苦戦しました。手伝ってくれた人からも、「チラシが切れたら急にどうしたらいいか分からなくなってしまった…。チラシがこんなに大事だとは…。」と言われました。次は2000枚刷ろうと思います。

次に予想外だったのが、キリンの子供への訴求力が凄かったことです。ゲーム内容は全く子供向けではなかったのですが、キリンのグラフィックが子供にもウケるようで、ブースに吸い込まれてくる家族連れが多かったです。これは完全に予想外でした。ある意味、「こういうのが第一印象で子供にウケるやつなのか」と分かった瞬間でもありました。説明を聞いた後、「なんか違ったな」という感じでスーッと帰って行く家族が多かったので、心が痛みました。

これがとにかく自分の心に深く刻み込まれ、ゲムマが終わった後は「キッズ向けのゲームも用意したい」と思っていました。というわけで、この教訓を活かして、次のゲームマーケットに向けて「リスのタルトやさん」という、4才から遊べるワーカープレイスメントを作っています。

マネーフェイカーと言う、また新感覚なゲームも作っているのでよかったらご覧ください。

売れ行き

当日の売れ行きは次のようになりました。

これを見ると、やはり初日の開幕直後が一番売れますね。土曜は15時ぐらい、日曜はお昼の時間帯が、一番人が少なくなります。

集計すると上のようになりました。予約はさておき、予約なしでの販売数が、土曜と日曜でそれほど差がないのが意外でした。感覚的には、半分ぐらいになるかと思っていました。

収支

最終的な原価は次のようになっていました。

一時期、この表と毎日睨めっこしていました。原価率の隣に書いてある数字が、損益分岐点となる販売個数です。これだけで見れば、カチカンモンスターズの分岐点188個に対して売上210個、キリンフォトの分岐点108個に対して173個と、しっかり黒字化ラインを越えることができました。

その他諸々の経費を合わせて、最終的な収支は次のようになりました。

というわけで、トータルで120万近く掛かりましたが、ゲームマーケットが終わった時点では12,000円の赤字で済みました。良かったです。

撤収と後日談

そういうわけでゲームマーケットが終わりました。しかし、撤収するまでがゲームマーケットです。現状復帰し、持ち込んだものは全て持って帰ります。また、余った在庫は、会場に用意されている宅配便受付で全て送り返します。宅配便受付は時間が限られているので、スムーズに受付できるよう、他の作業より優先して在庫の箱詰めや伝票書きをやったほうが無難です。

ゲムマが終わった次の日はなんともなかったのですが、その次の日に、信じられないぐらい全身筋肉痛になり、比喩ではなくベッドから出られなくなりました。恐ろしいです。

感想

総じて、今回ボードゲーム制作とゲームマーケットの出展にチャレンジしてみて良かったと言えます。様々な自分の考えやクリエイティブワークが、どれだけ通用するのか、受け入れられるのか、価値があるのか、色々な面で試すことが出来たと思います。それらの細かいことは今までのnoteに書いてきました。また何より、作品がきちんと売れ、評価が得られたというのが、何よりの経験値です。

BOOTHでの販売

カチカンモンスターズの在庫が90個、キリンフォトの在庫が30個ほど残ったわけですが、これをどうしようか悩んでいました。そのまま次のゲムマに持っていくことも考えましたが、まだ需要がありそうだったので、結局BOOTHで通販し、カチカンモンスターズは増産をかけることにしました。

BOOTHは信じられないぐらい手数料が安いので個人制作者にはありがたいです。また、ヤマトのコンパクトBOXによる匿名配送にも対応しているので、自宅からの発送も楽です。

ゲムマ時点で制作費は回収できていたので、ゲムマ後に通販で在庫を販売することで、全て利益となり、経費を含めて完全に黒字化することができました。


おわり


ここから先は

0字
この記事のみ ¥ 100

参考になったらサポート頂けると嬉しいです!