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初めてのボードゲーム制作とゲームマーケット出展で考えたこと、分かったことまとめ

このnoteは「ゲームマーケット初出展で自作のボードゲーム380個を売った話」の全13ノートの内容をひとつのノートにまとめた、ダイジェスト版です。

人気のノート
ゲームデザイン編(前編)(後編) …そもそもどうやってルールを作るのか、その過程や考え、調整について書いています
コンポーネントデザイン・仕様編(後編) …印刷に掛かる費用の見積もり、原価、販売価格の設定など詳しく書いています
説明書編 …ボードゲームの要、説明書を分かりやすくするにはどうしたらよいか、様々な知見を書いています
プロモーション編 …いかにして、作品を事前に認知してもらうか、効果があった事例を紹介しています
準備・設営編 …ブースをどう設計するか、また、作品の説明をスムーズに行うために用意した武器と戦略について書いています

ボードゲームとは

いわゆる非電源ゲーム、カードやダイスなどを使ってテーブル上で遊ぶゲームです。よく「人生ゲーム」や「オセロ」のことですか?と言われますが、現代ではそれらはどちらかというとクラシックで、モダンなボードゲームが、今もなお数多く作られています。ドイツ発祥のゲームが特に有名で、「カタン」や「カルカソンヌ」が必ずと言っていいほど名前が上がります。

最近では、ボードゲームを遊ぶことに特化したカフェや施設も多く登場してきています。

ゲームマーケットとは

いわゆる「創作ボードゲーム界のコミケ」です。世の中は広いもので、個人でボードゲームを創作する人たちが居るのです。そういう人たちが一同に介して、作ったボードゲームの展示・試遊・販売を行うイベントが、ゲームマーケットです。

写真はゲームマーケット公式サイト「ゲームマーケットとは?」より

作ったもの

今回、ふたつのボードゲーム作品を作り、ゲームマーケット2018秋に出展しました。実際に販売を行い、380個を売り上げました。

カチカンモンスターズは、「イケてる↔︎ダサい」「おもしろい↔︎つまらない」といった、2軸で交差するマトリックスを使って、人の価値観を探り合うコミュニケーション系のゲーム。意外と知らない他人の価値観、会話が弾みます。詳しくはこちら

キリンフォトは、スマホを使ってキリンを撮影して遊ぶ新感覚ゲーム。条件を満たす写真が撮れるかどうか、ギリギリを狙って競い合う、写真撮影+チキンレース系のゲーム。写真を撮る瞬間、思わず手が震えます。詳しくはこちら

ボードゲーム制作の流れ

ボードゲームは次のような流れで作っていきます。工程も多く、特に印刷には時間が掛かるので、イベント合わせで作る場合は、余裕を持ったスケジュールで進めていく必要があります。

1. 着想

着想は人によって様々なパターンがあります。「テーマから作る」「ルール(メカニクス)から作る」「日常のおもしろさから作る」など。自分は「日常のおもしろさから作る」パターンを試しました。日々「おもしろいと思ったこと」のメモを書き溜めて、それがゲームにならないか考えていきました。

ゲームデザイン編(前編)

2. テストプレイ

着想を得たら、何でもいいので、それを遊べる状態にして、テストプレイを繰り返します。この、テストプレイがボードゲーム制作の基本です。この時点でルールは完全に出来ていなくても大丈夫です。想定していた「おもしろさ」が生まれるかどうかを検証していきます。思ったのと違った部分はすぐに捨てて新しいアイデアを試し、おもしろかった部分は増強していくようにして、コアのルールを固めていきます。

以下はカチカンモンスターズのコアのおもしろさ「2軸のマトリックスに独断と偏見で、渡されたワードをマッピングしたらおもしろいか」を検証してる時の写真。

ゲームデザイン編(前編)(後編)

3. 調整&ルール完成

コアのルールが固まったら、「どういうゲームにしたいか」をよく考え、それに近づいていくよう、枝葉のルールや、得点などの数値を調整していきます。例えば、どういう得点システムだったら納得感があるか、や、もう一回やりたい!と思えるようなちょうど良いプレイ時間はどのぐらいか、などを考えていきます。

ゲームデザイン編(後編)

4. コンポーネントやパッケージの仕様を決める

コンポーネントとは、「そのゲームを遊ぶために箱の中に入っているもの」です。まずは、出来たルールを遊んでもらうためには、箱の中に何が入っている必要があるかを考えていきます。例えば、カードやタイルやペンなど。その形状、材質、大きさなどを決めていきます。

パッケージについても同様です。特に、サイズをどうするかが重要です。

コンポーネントデザイン・仕様編(前編)(後編)パッケージデザイン編

5. 印刷所を選定して見積もりを取る

仕様が大体決まったら、早めに見積もりを取った方が無難です。特にゲームマーケット前にはボードゲームの印刷が出来る印刷所は非常に混雑します。また、入稿締め切りがゲームマーケットの1.5〜2ヶ月前に設定されることも珍しくないので、2.5〜3ヶ月前を目安に動き始めておいた方が無難です。

同時に、見積もりを取ることでおおよそ掛かる制作費が分かるので、原価や販売価格、生産数も検討しておいた方が無難です。

コンポーネントデザイン・仕様編(後編)

6. 入稿データを作る

印刷を発注したら、ひたすらコンポーネントの入稿データを作っていきます。遊びやすさや、分かりやすさを考えながら、デザインしていく必要があります。カードのデータを作るのは結構大変です。

コンポーネントデザイン・グラフィック編(前編)(後編)

7. パッケージを作る

コンポーネント同様、パッケージも入稿データを作っていきます。パッケージは、お客さんがまず目にする部分でもあるので、意外に重要です。興味を惹くか、ゲームの魅力がきちんと説明されているか、必要な情報が掲載されているか、長く手元に置いておきたくなるかなど、色々と気をつけるべき点があります。

パッケージデザイン編

8. 説明書を作る

実はボードゲーム制作では説明書が一番大事と言っても過言ではありません。作者の手から離れた場所で、きちんとルールが再生されなければならないからです。そのために、分かりやすく曖昧さのない説明書を心がける必要があります。構成や言い回しなど、気をつけるべき点が色々あります。

説明書編

9. 仕入れをする

印刷物以外のコンポーネント(ペンなど)がある場合は、それを仕入れる必要があります。100円ショップを駆使する人が多いようです。

印刷・仕入れ・箱詰め編

10. 箱詰め

印刷には、入稿から約1.5〜2ヶ月ぐらい掛かります。印刷が終わると、大量のダンボールと共に、印刷されたコンポーネントが送られてきます。全てのコンポーネントと説明書を、1セットずつ、箱に詰めていきます。

印刷・仕入れ・箱詰め編

11. 完成

長い道のりでしたが、ようやく完成です!リアルなモノが出来上がるのはなかなかの感動です。

ゲームマーケット出展の流れ

ゲームマーケット出展に際しては以下のようなステップがあります。これらの締切に合わせて、制作の方も進めていくとスムーズです。

1. 出展申し込み

ゲームマーケット公式サイトから、出展を申し込みます。申し込みの締切は、おおよそ開催の4ヶ月前です。制作を本格的にスタートさせるのにも良い時期です。

申し込みに際して、サークル名や、出展プランについても考えておく必要があります。

序章準備・設営編

2. カタログ原稿の提出

申し込みをしてまずやってくるのが、ゲームマーケットのカタログの原稿の提出締切です。開催の約2.5ヶ月前に提出しなければなりません。また、提出必須です。

可能な限り、カタログに具体的なゲーム内容を掲載出来るよう制作を進めておいたほうが、来場者へのアピールになります。

コンポーネントデザイン・グラフィック編(前編)

3. プロモーション

ゲームマーケットで発表される新作は、一回の開催あたり500作品を超えてきているので、時間が予算が限られているであろう参加者の人たちに手に取ってもらうには、事前のプロモーションが大事です。

会場に来た時点で、「あ、あれ知ってる」「あれ見たことある」という状態を作っておくのが大事だと思い、プロモーションを行いました。

プロモーション編

4. ブース設計

いかにしてブースに足を止めてもらうか、接客をどうやって行っていくか、事前に考えておくことはとても大事です。ブースの戦略を、「遠距離」と「近距離」に分けて、どう見えるか、お客さんにどうコミュニケーションをとっていきたいかを考えました。

特に、近距離では「チラシ」「説明動画」「対面での説明」と、相互に補完し合う三つの武器を用意することで、備えました。

準備・設営編

5. 当日

いよいよ当日です。様々な準備をしてきましたが、果たしてそれがどうだったのか、作品をおもしろいと思ってもらえるか、分かる瞬間です。色々と印象深い出来事がありました。以下のノートにまとめてあるのでぜひご覧ください。

当日・収支まとめ編

お金ってどれぐらい掛かるの?どれぐらい売れるの?

お金や売上に関することは以下のノートにまとめてあります。

見積もり・原価・販売価格をどう決めるか・生産数をどうするか→コンポーネントデザイン・仕様編(後編)
予約数→プロモーション編
売上・売れ行き・経費・最終的な収支→当日・収支まとめ編

主に掛かる費用は、制作費・出展料・交通宿泊費・ブースの什器諸々、です。この辺を踏まえて、原価や販売価格や生産数を決めるのが良いと思います。

今回、自分は、色々なチャレンジのため、企業ブースで参加、かつトータル500個を生産しましたが、これはかなり規模が大きい方です。一般ブースで参加、在庫は100個前後が平均的な出展者だと思われます。

まとめ

ボードゲームを作り、ゲームマーケットに出展すると、ひとつの製品の着想〜販売までの全行程をコンパクトに体験できます。これはなかなか稀有な体験で、色々な気付きがありました。ゲームマーケットの場で、自分の作品を自分で説明して、買ってもらうのは、なかなかの感動があります。そうして手元を離れていった作品が、買ってくださった方々の元で、ゲームとして再現され、こちらが想定したおもしろさを体験してくれるというのも、不思議な感覚です。リアルなモノが手元に残るのも嬉しいですね。

次回作

次のゲームマーケットに向けてまた2作品制作しています。よかったらご覧ください。


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