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Juvenile Novel 『誕生日が待ち遠しい!』

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子どもの時間

子どもの時間

以前、児童文学というかジュブナイルノベルというか、
呼称は何でもいいのだが、子どもたちが主人公の小説を書いた。
シュールではないが、放ったらかしはもったいないので、
これからアップします。
ただしこれまた長いので『Buffering-errors in the youth』に続いて連載ものになります。
長い読みものはnoteに似つかわしくないかもしれませんが、
読んで頂けるとうれしいです。
タイト

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連載小説『誕生日が待ち遠しい!』[1-2]

連載小説『誕生日が待ち遠しい!』[1-2]

# 1

 いい子にしていようと、していまいと誕生日はやってくる。
 誕生日が嫌いな人だろうと、みんなから誕生日を忘れられてしまっている人だろうと、うそつきだろうと、正直者だろうと、いたずら好きだろうと、寄り道ばかりしている子だろうと、教室のすみでぼんやりしてばかりの子だろうと、学校の先生だろうと、成績がいい子だろうと、悪い子だろうと、お父さんだろうと、お母さんだろうと、おじいちゃんだろうと、おば

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連載小説『誕生日が待ち遠しい!』[3-5]

連載小説『誕生日が待ち遠しい!』[3-5]

# 1-2はこちら

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# 3

 ホームルーム終了のチャイムが夏休みのはじまりを告げた。子どもたちは気もそぞろにあいさつを済ますと、ランドセルや手提げかばんをパンパンにふくらませて、教室を出ていく。
 階段をおりるリツ子の横を黒いランドセルが追い抜いていく。つつーっとすべるようにおどり場まで落ち、ランドセルのフタがパカンと開いた。ノートやふでばこ、体操着に通知表、つい

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連載小説『誕生日が待ち遠しい!』[6-7]

連載小説『誕生日が待ち遠しい!』[6-7]

# 1-2はこちら      # 3-5はこちら

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# 6

 途中でマサミと別れたリツ子はひとりぼっちになった。またセミの鳴き声に囲まれていた。やっと通い慣れてきた通学路がいつもとはちがって見えた。
 転校したてのころは、通学するとき心細かった。しかし通い慣れるうち心細さはなくなり、この道の両はしには自分の家と学校があると確信できるようになっていた。なのになぜか今、

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連載小説『誕生日が待ち遠しい!』[8-9]

連載小説『誕生日が待ち遠しい!』[8-9]

# 1-2はこちら    # 3-5はこちら    # 6-7はこちら

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# 8

 金田のケータイの表示には、「三上ノボル」と表示された。
「もしもし。三上くん、なに?」と金田は電話にでた。
 しかし、返ってきたのは、三上の声ではなく、女の子の声だった。
「金田くん?」
「え? だれ? 三上くんじゃ……」
 金田はあわててもう一度ケータイの表示を見た。やっぱり「三上

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タランティーノとウェス・アンダーソンと私。

『誕生日が待ち遠しい!』を投稿し終わった。
最後まで読んで頂けた方、誠にありがとうございます。
まだ、読んでいない人は、お時間があるときにでも目を通していただけるとうれしいです。

『誕生日が待ち遠しい!』は数年前に書いたものです。
それを久方ぶりに読み直し、手直して投稿したわけだが、
創作の経緯を思い出した。
「何を表現したくて書いたのか?」
それについて書こう。

まず、子どもを主人公にするに

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