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「そして人生は続く……」──漫画家あすなひろしと小沢健二のことなど

「あすなひろし」という名をご存知ですか?
漫画家さんです。
ついこの間まで、知りませんでした。

知ったきっかけは、ぼくの作品『Buffering-errors in the youth』に対してのコメントだ。
きむらしんいちさんよりこんなコメントを頂いた。

てな経緯で、あすなひろしという名を知り、マンガを数冊購入したわけだ。
ネットでちょろっと調べてみたところ、
2001年にお亡くなりなっていた。
Wikipediaによると、
「代表作といえるのが1976年「少年チャンピオン」で発表した『青い空を白い雲がかけてった』。連載は断続的の5年間に及んだ。手塚治虫の『BLACK JACK』や水島新司の『ドカベン』などとともに同誌の黄金期の一翼を担った」とある。


購入したのはこれら。

『青い空を白い雲がかけてった』や『いつも春のよう』を読んで、驚いた。
確かに似ている。
もちろん、作品のクオリティについては脇に置いておいての話だ。
ぼくが表現したかったことが、高次元で作品化されていると言うべきか。

笑いと叙情、ギャグとリリシズム。
他愛のない日常に中にふと現れる詩情、決してメモリアルにはならない刹那的なものへの感性。
その感じが自分と似てるなと思った。

同時に、小沢健二のことも思い出した。

「他愛のない日常に中にふと現れる詩情、決してメモリアルにはならない刹那的なものへの感性」
それを、たとえば小沢健二は次のようにうたう。
「左にカーブを曲がると光る海が見えてくる
ぼくは思う この瞬間は続くと いつまでも」《さよならなんて云えないよ》
そう、ときに刹那的なもの、一過性のもの、過ぎ去ってしまう瞬間が永遠へと昇華していくと感じられるときがある。

もちろん、瞬間は瞬間である。過ぎ去るものは過ぎ去るのである。

だから、小沢健二は続けてうたう。
「本当は分かってる 2度と戻らない美しい日にいると
そして静かに心は離れてゆくと」 

同じくあすなひろしのマンガにはそんな切なさがある。
あすなひろしのマンガから想起されるフレーズは「そして人生は続く」だ。
どんな出来事があろうとも、無常にも「そして人生は続く」と。

しかし、あすなひろしも小沢健二も
描きたいのはその無常さや諦念ではおそらくない。
むしろ無常さへの抵抗ではないか。
刹那、瞬間が矛盾にも永遠性を帯びることがあるのだ、という抵抗である。
「そして人生は続く」のあとに「されど……」と付け加えずにはいられない、そんな「強がり」である。

ぼくもそんな「強がり」の系譜の末席にでも連なりたいと思う。

この記事もあっという間にTLの中に流れ、埋もれていく。
それでもなお、書きたいと思う。
そして人生は続く、TLも流れる……されど、さよならなんて云えないよ!と強がってみる。


{付記}
あすなひろしのマンガは、構図や線がすばらしい。大胆に余白を残したコマ、ベタッと黒が支配するコマもある。そのシャープなコントラストには身震いする。
なんて言ってはみたものの、ぼくはそれほどマンガに詳しくないし、ましてや描線やタッチについて語ることはむずかしい。
しかしそこは、多くのイラストレイターが集まるnoteである。
あすなひろしが好きって方もいらっしゃるかもしれない。そんな方にはぜひともあすなひろし氏の絵についての評を書いて欲しい。読んでみたい。もし書かれましたら、このノートにコメントをつけてください。読みにいきますので。

また、あすなひろしの短篇集にはSFや戦争ものなどもあります。『林檎も匂わない』は多彩なジャンルが集められていて、これはこれで面白い。おススメです。

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