私は震災を乗り越えたのか その4

自分の情けなさ、弱さ加減に辟易しながらも、日々の生活を送っていましたが、その後、体調を崩し、簡単なものではあったのですが、手術をするに至り、仕事を休職してしばらく療養生活を送ることになりました。ちょうどその時期にあのヒノキアスナロが神戸に持ってこられることを知ったのです。

メディアに近い位置で長く仕事をしてきた経験から、プレスリリースをチェックすることが私の習慣になっていました。それは職業病のようで、療養期間中でも変わりありませんでした。2017年10月4日、一番最初の「世界一のクリスマスツリー」に関するプレスリリースが出ましたが、その日のうちにそれを目にして、妙なイベントだなと直感で感じました。本当に直感で(のちにそれは「鎮魂ビジネス」という、とてもしっくりする言葉で、ひとことで言い表されました)。

プレスリリース内の「『めざせ!世界一のクリスマスツリープロジェクト』は、神戸市の賛同もあり、神戸開港150年記念事業の関連事業として行います。阪神・淡路大震災の鎮魂の想いから始まり、毎年300万人以上が来場する神戸ルミナリエと同時期に開催することで、復興した都市として、神戸から東日本大震災や熊本地震などの被災地への鎮魂、そして復興と再生の象徴として、日本のみならず世界へ、未来に向けた希望のメッセージを送ります」という表記に、非常に強い違和感を感じたのです。

神戸って本当に復興したの? 復興って一体何? 壊れた建物の後に新しい建物がたって普通に生活できるようになったら復興? 被災した人の心、気持ちの復興は? 復興したなんて誰が決めるの、それを。「復興した都市として神戸から東日本大震災や熊本地震などの被災地への鎮魂」? 上から目線じゃない? 神戸もこうなったのだからあなたがたも頑張れとでも言いたいの? 失礼では? 等々、様々な感情が巡りました。そして非常に不快な気持ちが起こってきました。

今思うと、阪神淡路大震災での自分の経験を、その時負った傷を乗り越えていなかったからこそ、自分の弱さ加減、ヘタレ加減を腹立たしく思っていたからこそ、そう感じたのだと思います。そして違和感はその後にプレスリリースが追加で出されるたびに更に大きくなっていったのでした。

11月6日のプレスリリースの西畠清順氏の言葉にはこうあります。

「この木を見つけてから、今日まで足掛け4年。構想を考えて、世界を驚かすような夢のあるようなプロジェクトをしたい」。

鎮魂と夢は同時に成立するの? 私にはそうは思えない。これは、阪神淡路大震災を完全に「ダシ」にしている。この人は自身の自己顕示欲を満足させるために「被災地としての神戸」を利用しようとしている。プレスリリースのこの一文を目にしてついにそう確信したのでした。

その後、西畠清順氏周りのことを調べていく中で、私の確信はますます強いものになり、そのうちに「ほぼ日」がプロジェクトを応援することが明らかになり、「ほぼ日」への批判も高まり、SNS上で更に疑念の声は大きくなって行きました。神戸で何が起ころうとしているか、更に広く知らしめないといけない。療養期間中で時間があったことも手伝ってか、「私がやらなければ誰がやる」という気持ちに駆られ、私はTwitterアカウント、世界一のクリスマスツリー(@bekobe150)を立ち上げたのでした(それからどのような結論に足したのかは、「2017年年末の「世界一のクリスマスツリー」について」でも書いた通りです)。

結局、「私がやらなければ誰が・・・」と思った割には、何もできませんでした。イベントは開催されてしまいましたし、自然分解されることがないオーナメントはいい加減な装着方法だったために風に飛ばされ、神戸の海に沈んで、被災地の子供たちが書いた願いもいくつかは海にも沈んでしまいました。いまだに西畠氏も糸井重里氏も何の説明責任も果たしていませんし、被害者面をしたままだとも思います。私はとても無力でした。本当に無力でした。

でも、声を上げずにはいられなかった。何もせずにはいられなかった。95年当時何もできなかったこと、2011年にも何もできなかったことへの償いの気持ちもありました(全く償えていないと思いますが)。自己満足と言われればそれまでかもしれません。でも何もせずにはいられませんでした。結局、何もできなかったと反省をしているのですが・・・

被災地となってから20年以上経った神戸で起こった「世界一のクリスマスツリー」。被災地であるということが利用されるようなことが、他の激甚災害の被災地で行われることがないように、今回声を上げ、ある程度ニュースになったことで( #銀座ソニーパークださい 事件が起こり、そのことで「世界一のクリスマスツリー」の件を知ったという方も一定数いらっしゃるようですし、声を上げたことに関しては間違っていなかったと思っています)、少しでも抑止力となるように祈っています。

多くの方に助けていただいたと思います。励ましてもいただきました。その節は本当にありがとうございました。長々と書いた文章をここまで読んでいただいてありがとうございました。

#世界一のクリスマスツリー #阪神淡路大震災 #鎮魂ビジネス

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