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#7 2.5日ぐらいでトルコ人と18回セックスした話

#6までは「なぜ」こんな風に私が変わってしまったのか、ということへの原因というか理由をまとめたに過ぎない。

最初に登録してみたのは「tinder」だった。知らない人のために解説すると自分から何キロ圏内に出会いを求めている人間がいるかをチェックできる機能がついたアプリだ。そして、いいなと思ったら右にスワイプ、ないわ、と思ったら左にスワイプ。お互いに「いいな」と思ったらチャットができる仕組みになっている。当時はあまり登録している人も(日本人は)おらず、外国人が主に使っているという印象だった。要するに出会い系、一夜の関係を求める人がスマホの中に溢れている。

もともと外人には抵抗がないタイプの私だったので、こんなに面白いものがあったのか!というレベルにハマり倒した。だって、普通に生きてたら絶対に出会わなかったであろうと思われる人を見た目だけで「アリ」「ナシ」だの好き勝手言えるわけなのだから。そしてかなりの高確率で「アリ」を選ぶとチャットに繋がる。それは私が他よりイケてるとかではなく、単純に登録している女性の方が男性の数より少ないからということもあるだろう。時には女子会でみんなでスワイプすることもあった。

あまりさだかではないけど、おそらく最初にチャットに繋がったのが神奈川に住んでるトルコ人だった。トルコ人ってちょっとエキゾチックで素敵、とか思っていたのだけど冷静になって振り返ってみると、全然好みのタイプでもないし、とりあえずコミュニケーションとってみたという感じ。名前の頭文字はU。変な名前、と思ったのが最初の印象だった。イタリアンレストランでシェフをしていると言っていて、とにかく私を絶賛、褒めまくってくれるので単純に気分が良かった。

ちょっと小旅行気分と好奇心で神奈川まで行ってみたら、駅で待っていたUは持っていた荷物(どっかのスーパーのビニール袋w)を床に落としたままで走って飛びついてきた。
「なになになに!!」
と驚きつつも、こんなにちぎれんばかりに子犬のように尻尾を振っている様子で私に会えたことを喜んでいる男は可愛い、と思ってしまった。
「荷物もあるし、家に行こう」
と流暢な日本語で話すトルコ人は胡散臭さの極み。でも、目の色は綺麗だなと思った。グリーンがかったグレーみたいな色で、こんな色の目を見たことがない。

神奈川のすごく都会でもないけど、田舎でもない場所で、案内された先にあった家は小さなアパート。控えめに言ってもかなり貧乏くさい。でも別に彼と結婚するわけじゃなし、貧乏かどうかは気になるポイントではない。それよりも何よりも重要なのは私のことをどれぐらい欲しているか。

汚いスニーカーやサンダルが散乱した玄関に私のセルジオロッシのパンプスがひどく浮いた存在に見えて、シュールだったことを思い出す。すぐさまセックスが始まるのかと思ったら、私の荷物だけを大切そうにベッドの脇に置いて、また出かける準備を始めた。
「スーパーに行くから一緒にいこう!」
そう言って嬉しそうに、はにかんだ笑顔で手を差し出す様子は同棲を始めて間もない初々しいカップルのよう。

「何が食べたい?食べ物で何がすき?」
とスーパーで聞きながらカートを押すUはきっと悪い人ではないのだろう、と感じた。普通に現実世界で友達として出会ったらいいやつ!って感じなんだろう。いや、これも現実世界なのだけれどもなんだかリアリティがないな、とスーパーで流れる楽しげな音楽を聴きながら食材を見つめていた。

「海老とアボカドが好き」
と私が言ったので、どうもこの日のメニューはアヒージョと鶏肉とアボカドにヨーグルトソースをかけたものに決定したらしい。アパートに戻る道の途中で、Uは道に咲いていた朝顔をそっと摘んで私の髪に飾って、満足そうに微笑んで見せてきた。
そういうことを自然にできる男って日本では重宝されるでしょうね。とその時はうっとり見つめ返してしまっていたけど、道端でそんなことしてるやつらは普通にキモい。

お世辞にも清潔感があるとは言えないキッチンではあったけど、さすがにプロのシェフをやっているというだけあって料理の腕は確かなようで手早く綺麗に盛り付けられたものが私の前に並び、床に座って待っていた私の前にあった小さなテーブルにキャンドルが灯された。彼は貧乏だけどロマンチックだった。おそらく、私が人生で使った中でも一番狭いのではないかと思われるシャワールームにもアロマキャンドルを焚いてくれたが、むしろちょっと邪魔だし危ない。髪を乾かす間もないまま長い長いキスをされて目を瞑っていると次第に安全な箱のなかにいるような感覚になり、体の力が抜けてリラックスしていくのを感じることができた。

Uのセックスはとにかく回数が多い。終わって少ししたらまた始まるのでほとんど寝ないまま、セックスして、少し寝て、触って、セックスして、の繰り返しが延々と続くので、長年のセックスレス、Jのクイックリーセックスに不満を持っていたことに気付いてしまった私は今までの欲求不満を取り戻すかのように何度もUに要求したし、Uが私を欲しがるように仕向けて楽しんだ。何回したんだろう?と途中からカウントをとりだして、結局2日半の間に18回していたということが判明。すごく上手、って訳ではないけど回数で満足度をカバーする感じなのと、丁寧に扱ってくれているな、って思えるのが嬉しかった。もちろんお粗末なJのセックスとは比べ物にはならない。終わった後に背骨から肩甲骨のあたりを指でツーーーッとなぞられながら首筋にキスされるのは鳥肌が立つほど気持ち良かったし。

Uとしたことによって、Jのことを少し切なく思い出したのも事実だった。素敵な店にディナーに連れていってくれたり、ドライブしたりした大人のデートは良かった。自分がいい女になった気分だったけど、如何せん彼のセックスは本当にしょーもなかったのだもの。一方、Uと一緒に過ごしている時の私はセックスを覚えたばかりの高校生みたいだった。前戯も長くてたくさん濡らしてくれるから回数を重ねてもアソコが痛むこともなく。みんなそれぞれ、いいところがあるんだけど、完璧な人もいないのだろう。でも、一つでも多く好みのポイントを持ってる人はどこかにいるはず、と欲が出てきた。

ベストセックスパートナー探しの旅がこうして始まった。


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