下着ユニバで暴走する正義、誹謗中傷の問題

こんにちは。来殿ベルです。

先週、下着にも見える服装でユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)で撮影を行ったインスタグラマーの女性たちが、激しい誹謗中傷に晒されています。

この騒動では複数の女性インスタグラマーがUSJで、下着姿にも見えるような露出の激しいコスプレ姿で写真を撮影・投稿したことがSNS上で拡散され、物議を醸していた。  
なつぴさんは2022年10月20日、騒動について「ユニバの下着女性への過剰な叩き、その根底には必ず『顔が良くて幸せそうなこの女たちをどうにか不幸にしたい』の気持ちが少なからずあること私はわかってるよ。人間は他人の不幸すき 幸せきらい」と持論を投稿した。

下着ユニバ過剰叩きは「顔が良くて幸せそうなこの女たちを不幸にしたい」心情 東大卒アイドル持論に賛否両論(J-CAST News)

賛否両論があるのは良いと思いますし、USJには「入場お断り」や「今後は出禁にする」といった権利も主張できるでしょう。

しかし、彼女らの今回の行為について、公然わいせつ罪や軽犯罪法違反を適用し、有罪判決を下すことは非常に難しいと考えざるを得ません。手嶋海嶺氏がnoteで詳しく解説しています。

僭越ながら私が要約しますと(あくまで私の要約ですので齟齬が生じている可能性があります。厳密性を求める場合は手嶋氏のnoteをご覧ください)、

  • 原則として、公然わいせつ罪は、不特定多数が見る公共の場において「性器の露出または性行為があった場合」に適用される。本件では該当しない。

  • 公然わいせつ罪は、性器の露出または性行為があった場合であっても、半数近くが不起訴処分になる。本件では露出や行為がないため、万が一逮捕に至っても不起訴処分の可能性が高いと推測される。

  • ほぼ下着同然の姿で活動しているお笑い芸人(小島よしお氏、とにかく明るい安村氏など)が野外活動およびその様子を収録した動画の地上波放送ができている。すなわち、社会通念上、その程度の露出が許されている実態が現に存在すると考えられる。

刑法犯という話であれば、「公然性」を満たす公共の場であれば、USJというテーマパーク内であるか、駅前であるか、地上波放送であるか、SNSであるかは問題ではありません。なお、Twitterの鍵アカウントでも公然性の要件を満たす場合があります。

一つ事例を紹介します。

2016年3月に結成されたロックアイドルグループ「○○」のメンバーとして活動していた原告が、同じ「○○」のメンバーとして活動し、2019年6月末に「○○」を脱退した被告に対し、同年7月2日に、被告がTwitter上の自己のアカウントにおいて、①「あ、新宿のレズ風俗やめちゃったんだっけ?あれ」などと記載したツイートを投稿し、さらに、原告の顔写真と共に、②「秋葉原の店舗型リフレでこの写真見せて上手く聞き出してくれませんかね~」などと記載したツイートを投稿したことに対し、名誉を毀損されたとして、損害賠償を求めて提訴しました。

原告は、本件各ツイートは、原告が性風俗店で働いていたことは一度もないにもかかわらず、原告が性風俗店で働いたことがある事実又は原告が現在も性風俗店で働いている事実を摘示するものであり、一般読者の普通の読み方を基準とすれば、原告の社会的評価を低下させるものであり、本件各ツイートが投稿された被告のアカウントには、500人程度のフォロワーが存在しており、不特定多数の者が閲覧可能な状態であった、と主張しました。

これに対し、被告は、本件各ツイートが投稿された被告のアカウントは、鍵付きアカウントであり、被告の承認した者(仲の良い友達)しか見られないものであり、被告としては、本件各ツイートにより、仲の良い友達に愚痴をこぼしただけである、と主張しました。

Twitterの鍵付きアカウントでの誹謗中傷は名誉毀損にあたるか?2つの判例を解説

これに対し、裁判所はこのように判示しました。

被告は、本件各ツイートが投稿された被告のアカウントは、いわゆる鍵付きのアカウントであり、被告の承認した者(仲の良い友達)しか見られないと主張する。かかる被告の主張は、公然性を欠くため、本件各ツイートによって原告の社会的評価は低下しないと主張するものと理解される。しかしながら、本件各ツイート時点において、被告の承認を受けている者(本件各ツイートを閲読できる者)は複数いたものと認められることに加え、承認するか否かは被告の任意の判断に委ねられており、本件各ツイート時点で被告の承認を受けていなくても、その後に承認を受けることにより、本件各ツイートを閲読できるようになること、被告の承認を受けた者は、本件各ツイートのデータを複製等することによって、容易に他者へ拡散させることが可能であることに鑑みると、本件各ツイートが不特定多数の者に伝播する可能性があったというべきである。したがって、被告の上記主張は、本件各ツイートが原告の社会的評価を著しく低下させるとの上記認定を左右するものではない。

東京地方裁判所2020年6月19日判決

鍵アカウントだからというのは必ずしも通用しません。

話を戻します。

手嶋氏は、司法が非常に気まぐれな判決を下すという問題意識を強く持っていらっしゃるため、「それでも分からない」旨で記事をまとめていらっしゃいますが、私は件のインスタグラマーたちを「刑法犯のおそれがある人たち」として扱うことは、「ほとんど確実に無理」と言っていいように思います。

どちらかというと、「刑法犯のおそれがある人だ」「露出狂だ」「風俗嬢みたいなものだ」と発言することの方で、彼女らに対する名誉毀損罪・侮辱罪が成立するおそれが高いと懸念されます。

なお、名誉毀損罪・侮辱罪は、これまでの裁判例から、「(表現として)断言まではしなかった」「個人的な感想を言っただけ」「比喩表現として言った」(「~なんじゃないか?」「たぶん~でしょ」「~みたいなものに感じる」「~のように見える」等)」というケースでも成立することがあります。

表現の強さも多少は考慮はされますが、不起訴処分や無罪判決を約束してはくれません。

もちろん、私は裁判官ではありませんので、個々のケースについて「これは名誉毀損罪・侮辱罪になる」という判断は下せませんし、今後下すつもりもありません。またこれらは親告罪ですから、訴訟を起こされなければ犯罪が成立しません。

ただし、本件関係で発言されている方は、十分に気を付けて頂きたいと思います。私は誹謗中傷には強く反対していますし、Twitterの通報機能は使っています。「何か道徳的・法的に悪いことをしたかもしれない人」に対してであっても、それは誹謗中傷をしていいという意味ではありません。

ネット炎上が起きると決まって「誹謗中傷許可証」をもらえたかのような振る舞いをする人が出ますが、そのような許可証は実在しません。

――という注意喚起で、この記事を終わろうと思っていたのですが。

「インスタグラマーの人たちは、批判されているだけで誹謗中傷されてはいない」という歴史修正がごく一部ですがあるようです。ですので、私が問題だと感じてTwitter機能で通報したものを数例だけ提示しておきます。


左は「露出狂」と侮辱していて、また「公然わいせつ罪」と断定しています。つまり、いま現在で容疑もかかっていない人に犯罪者のレッテルを貼り、彼女らの顔写真とともに不特定多数に発信したと言えると思いました。

仮にこれが公然わいせつ罪の「犯行の様子」を映した写真であるなら、それを二次拡散する行為はわいせつ物頒布等の罪に問われる可能性があります(私は元々わいせつ行為に該当しないとは思いますが)。

言っていることとやっていることが無茶苦茶ですね。

右は「整形丸出しの写真」とシンプルに中傷していますね。

左は「パパ活やってるイメージしかない」と謂れのない中傷、右も「露出狂、ランパブ売女の営業活動、変質者」と同様に誹謗中傷しています。私としては問題があるものと考え、Twitterの通報機能を使用しました。

こうした人たちは、騒動になった彼女らに対し、公然わいせつ罪や軽犯罪法違反に加え、USJのガイドライン違反だとよく指摘しています。しかし、Twitterにもガイドラインと利用規約が存在することをお忘れではないでしょうか?

Twitterの決まりに違反しているように私には感じられましたので、私の自己判断とその責任において、通報致しました。

念のため、ご注意いただきたいのですが、これはこうしたツイートに通報を殺到させるように呼びかけている訳ではありません。それは皆様が個別にご判断ください。「私が問題があると感じたので、私が通報した」以上の内容ではありません。

今後、私自身が誹謗中傷には気を付けていくとともに、ネットが健全な空間になることを切に望みます。

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