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不寛容社会で病む日本人


私が鉄道の現場で乗務員をしていたのは、もう30年も前のことですが、自分が遭遇した全ての事故現場の様子を昨日のことのように覚えています。

私が社会人になって初めて遭遇した人身事故は4月2日。新学期が始まったばかりの高校生の女の子でした。今でも思い出すと涙が出ます。

厳しい現場で乗務員や駅の方は人命救助最優先、周辺の列車防護、定時運転回復への努力など、日頃の訓練を踏まえて全力で「今、やらなければならないこと」に注力しています。車両の方も入庫して来た事故車両を修理して一日も早く本線に戻すべく徹夜で作業しています。

にもかかわらず、駅で鉄道員に「いつまで待たせるんだ」「タクシー代出せ」などと詰め寄る輩が少なからずいます。私は日本は大きく2つの病を抱えていると感じています。

一つは年間3万人もの人が自ら命を絶つ選択をしなければならない「不寛容社会」。
大人は金銭と健康が最大の理由だそうです。10代、20代の若者の死因の第1位は自殺です。

私は現場にいた頃、自ら命を絶つ人を嫌と言うほど目の当たりにして来ました。なぜ、電車に身を投げる選択をしなければならないのか、同時、まだ若いサラリーマンだった私には理解できませんでしたが、今、会社を作って20年。いかに社会が、日本が不寛容で、絶対に失敗を許容せず、同調しない人間を許さない社会かを日々痛感しています。真面目な人ほど自分を追い込んでしまいます。

2つ目の日本の病理は「無関心」。電車がラッシュ時に長時間止まると不快な思いをしますし、実害もあるでしょう。それでも人一人が亡くなり、他の方も怪我をされている状況で駅係員や乗務員に暴言を吐いてしまう不寛容社会、日本。それでも当時は暴言を吐く人に私は言い返していましたが、今はそれも許されない。鉄道員のメンタルもいっぱいいっぱいなのです。鉄道員も生身の人間です。

日本人は本当に生真面目な集団なのですが、裏を返せば不寛容の極みです。私が不寛容社会を変えて行きたいのは、20代の頃、散々目の当たりにした「命が消費されて消えていく」現場を見るのがきつかったからです。

鉄道員の方には、もっとリスペクトの気持ちを向けて欲しいし(大変な仕事なんです)、日本が不寛容社会から抜け出すためには、今、あなたが許せない何かを、一つ手放して欲しいのです。日本を、良い国にしませんか。未来の子供たちが苦しまなくていいように。子供たちや、働き盛りの世代が生きるのが苦しい社会は、絶対におかしい。未来の子供たちに、このままバトンを渡しますか?

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